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異世界の環境改革
人間と魔石
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「魔石、全部取ってきたぞ」
「みなさーん、お待たせしましたーっ!」
勢いよく扉が開く。
ずしりと重そうな袋を肩に担ぎ、平然と入ってきたのはエネル。
その後ろから、両手をぱんっと叩きながら笑顔で飛び込んできたのはピリカだった。
二人とも、もちろんノックなどという文明的行動は取らない。
「おい領主。保管してある魔石はどこだ」
エネルがいつもの調子で淡々と告げる。
「案内しろ。それも全部出せ」
声は低く冷ややか。
その迫力に、領主デラルドの肩が小さく跳ねた、
が——
「えっ、あっ、あのっ!」
ピリカがその横から、勢いよく一歩前へ出る。
「エネル様、わ、私が行きますっ! デラルド様と一緒に!二人で!!責任を持って回収してきますから!ね?ねっ、デラルド様!」
キラキラした瞳で迫られ、デラルドは完全に混乱している。
「え、ええと……そ、それは助かりますが……」
「ですよねっ! では、行ってまいります!」
ピリカは返事も聞かずにデラルドの腕を掴むと、軽やかに振り返って笑った。
「エネル様はここでゆっくり休んでいてくださいね。ご心配なく魔石ひとつ残らず持ってきますから!」
その背後で、エネルは呆れたように眉をひそめる。
「……いや、だからお前が一番信用ならん」
しかしピリカはまったく聞いていない。
腕を組まれたデラルドは半ば引きずられるように、ずるずると扉の外へ連行されていった。ピリカの足取りは妙に軽やかでしかも頬が少し赤い。
エミリはそんな二人の背中を見送りながら、小さく笑みを漏らした。
——ほんの数ヶ月前まで、ピリカは「夢の恋人以外は受け付けません!」と豪語していたのに。
今やすっかり現実的で、しかも積極的だ。
(人も、魔族も……変わるんだな)
外見は少女でも、年齢で言えばピリカはデラルドよりもずっと年上。今ごろ執務室の外では、きっと彼女が上手く主導権を握っているに違いない。
その想像に、エミリは口元を緩めた。
「で——」
ふいに、柔らかなエルヴィンの声がエミリの思考を引き戻した。アレイスが紅茶を置き、こちらに視線を向けている。
「どうしたんだ? いきなり魔石を回収し出すなんて。父上が独立の件で騎士を大量に投入してきたところだったから、正直、君たちが来てくれて助かったが……」
「え……あ、えっと……」
不意を突かれたように、エミリの言葉が途切れる。
魔石と魔族の関係、それを人間側に話していいのか、まだ決心がついていなかった。
彼らは敵ではない。
けれど、知られた瞬間、再び争いの火種になるかもしれない。
胸の奥がざわめく。
エミリは視線を落とし、彼女には珍しくその先の言葉が出てこない。
そんなエミリをちらりと横目で見て、エネルが小さく息を吐いた。
「魔石は魔素の塊だ。それを無理に引き出して魔術を使えば、世界の魔素の流れが乱れる。」
短く、しかし落ち着いた声で言う。
「放っておけば、俺らが危うい」
「魔素が不安定……」
ディランが小さく呟いた。
その声には動揺ではなく、確信に似た響きがあった。
「なるほど。確かに、魔力のない私たちが魔石をつかって魔力の元になる魔素を使ってしまったら、魔素は少なくなるな」
エネルが静かに頷く。
室内に、重い沈黙が落ちた。
静かに話に耳を傾けていたエルヴィンが息を詰め、そしてゆっくりと吐き出す。
「そういうことか。つまり、人間側で魔術を使わせるのを制限しなければならない、ということだな。だが、それを止めるには——」
エルヴィンの視線が、近くの長椅子に座るディランへと向けられる。ディランは苦虫を噛み潰したような表情で、代わりに言葉を継いだ。
「——国王アルマスを止めなければならない。この国で最も強い魔術師であり、魔石研究の中心人物だ。」
その言葉に、場の空気が一気に重くなる。
紅茶の香りだけが、やけに静かに漂っていた。
「みなさーん、お待たせしましたーっ!」
勢いよく扉が開く。
ずしりと重そうな袋を肩に担ぎ、平然と入ってきたのはエネル。
その後ろから、両手をぱんっと叩きながら笑顔で飛び込んできたのはピリカだった。
二人とも、もちろんノックなどという文明的行動は取らない。
「おい領主。保管してある魔石はどこだ」
エネルがいつもの調子で淡々と告げる。
「案内しろ。それも全部出せ」
声は低く冷ややか。
その迫力に、領主デラルドの肩が小さく跳ねた、
が——
「えっ、あっ、あのっ!」
ピリカがその横から、勢いよく一歩前へ出る。
「エネル様、わ、私が行きますっ! デラルド様と一緒に!二人で!!責任を持って回収してきますから!ね?ねっ、デラルド様!」
キラキラした瞳で迫られ、デラルドは完全に混乱している。
「え、ええと……そ、それは助かりますが……」
「ですよねっ! では、行ってまいります!」
ピリカは返事も聞かずにデラルドの腕を掴むと、軽やかに振り返って笑った。
「エネル様はここでゆっくり休んでいてくださいね。ご心配なく魔石ひとつ残らず持ってきますから!」
その背後で、エネルは呆れたように眉をひそめる。
「……いや、だからお前が一番信用ならん」
しかしピリカはまったく聞いていない。
腕を組まれたデラルドは半ば引きずられるように、ずるずると扉の外へ連行されていった。ピリカの足取りは妙に軽やかでしかも頬が少し赤い。
エミリはそんな二人の背中を見送りながら、小さく笑みを漏らした。
——ほんの数ヶ月前まで、ピリカは「夢の恋人以外は受け付けません!」と豪語していたのに。
今やすっかり現実的で、しかも積極的だ。
(人も、魔族も……変わるんだな)
外見は少女でも、年齢で言えばピリカはデラルドよりもずっと年上。今ごろ執務室の外では、きっと彼女が上手く主導権を握っているに違いない。
その想像に、エミリは口元を緩めた。
「で——」
ふいに、柔らかなエルヴィンの声がエミリの思考を引き戻した。アレイスが紅茶を置き、こちらに視線を向けている。
「どうしたんだ? いきなり魔石を回収し出すなんて。父上が独立の件で騎士を大量に投入してきたところだったから、正直、君たちが来てくれて助かったが……」
「え……あ、えっと……」
不意を突かれたように、エミリの言葉が途切れる。
魔石と魔族の関係、それを人間側に話していいのか、まだ決心がついていなかった。
彼らは敵ではない。
けれど、知られた瞬間、再び争いの火種になるかもしれない。
胸の奥がざわめく。
エミリは視線を落とし、彼女には珍しくその先の言葉が出てこない。
そんなエミリをちらりと横目で見て、エネルが小さく息を吐いた。
「魔石は魔素の塊だ。それを無理に引き出して魔術を使えば、世界の魔素の流れが乱れる。」
短く、しかし落ち着いた声で言う。
「放っておけば、俺らが危うい」
「魔素が不安定……」
ディランが小さく呟いた。
その声には動揺ではなく、確信に似た響きがあった。
「なるほど。確かに、魔力のない私たちが魔石をつかって魔力の元になる魔素を使ってしまったら、魔素は少なくなるな」
エネルが静かに頷く。
室内に、重い沈黙が落ちた。
静かに話に耳を傾けていたエルヴィンが息を詰め、そしてゆっくりと吐き出す。
「そういうことか。つまり、人間側で魔術を使わせるのを制限しなければならない、ということだな。だが、それを止めるには——」
エルヴィンの視線が、近くの長椅子に座るディランへと向けられる。ディランは苦虫を噛み潰したような表情で、代わりに言葉を継いだ。
「——国王アルマスを止めなければならない。この国で最も強い魔術師であり、魔石研究の中心人物だ。」
その言葉に、場の空気が一気に重くなる。
紅茶の香りだけが、やけに静かに漂っていた。
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