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呪いの皇子と森の片隅のお花屋さん
新たな問題発生
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城の廊下を抜け、分厚い扉の前で足を止めると、先導していた侍女が深々と頭を下げた。
「皇太子様と魔法師団長がお待ちです」
「“お待ち”って顔じゃなさそうだな」
マッシモが小声でつぶやいた通り、扉の向こうからはぴりぴりとした気配が漏れている。ルーカスがため息をひとつ吐き、扉を押し開けた。
部屋の中は、重苦しい空気で満たされていた。
険しい顔をした皇太子アルデバランが部屋の中心にある長机に寄りかかっており、額にうっすらと浮かぶ疲労の色が、ただ事ではないことを物語っている。
長机の前にあるソファーにぐったりと腰掛ける中年の男、魔法師団長ゼーレ。
ゼーレは目の下に隈を作り、部屋に入ってきたオルガたちを見やった。
「……ようやく来たか。もう、どうにもならんところだったぞ」
「こんにちは、えーと、えーと……偏屈魔法じじい!」
ゼーレがぴくりと眉を跳ねさせた。
「名前くらい覚えろ、このガキ……!」
「ごめんごめん。でも偏屈なのは合ってるでしょ?」
「わしの事をそこまで知らんじゃろ!」
マッシモとルーカスが小さく吹き出し、レオニダスが呆れたように視線を外す。
「それより……顔色悪すぎ。魔力、枯渇してる?」
「今朝、皇子殿下の間に何者かが侵入した。封印を破って入り、呪いの魔法を重ねて行ったんだ」
「そんな……」
「中の結界を張り直し、呪詛の痕跡を洗い出して……我ながらよく倒れずに済んだと思う。だが、もう限界だ」
ゼーレがわずかに震える指で額を押さえたその瞬間。
オルガはポケットから取り出した小さな青い草を、すっと差し出した。
「はい、これ」
「……なんだこれは?」
「魔力草。私が作ったやつ。食べたら魔力少し戻るよ。おいしいハーブの味するよ!」
「こんなもので――」
と否定しかけたゼーレの鼻が、かすかにひくついた。
青葉の香りの中に、かすかに漂う純粋な精気。
ただの草ではない、と本能的に理解したゼーレは、黙ってそれを受け取り、口に含む。
「……っ、これは……」
瞬間、彼の肩がわずかに揺れ、眼の奥に光が戻る。
「少しどころか…ほとんど回復してる…まさかこれほどとは」
「ね?うちの草はすごいの」
オルガはにっこりと笑った。
「皇太子様と魔法師団長がお待ちです」
「“お待ち”って顔じゃなさそうだな」
マッシモが小声でつぶやいた通り、扉の向こうからはぴりぴりとした気配が漏れている。ルーカスがため息をひとつ吐き、扉を押し開けた。
部屋の中は、重苦しい空気で満たされていた。
険しい顔をした皇太子アルデバランが部屋の中心にある長机に寄りかかっており、額にうっすらと浮かぶ疲労の色が、ただ事ではないことを物語っている。
長机の前にあるソファーにぐったりと腰掛ける中年の男、魔法師団長ゼーレ。
ゼーレは目の下に隈を作り、部屋に入ってきたオルガたちを見やった。
「……ようやく来たか。もう、どうにもならんところだったぞ」
「こんにちは、えーと、えーと……偏屈魔法じじい!」
ゼーレがぴくりと眉を跳ねさせた。
「名前くらい覚えろ、このガキ……!」
「ごめんごめん。でも偏屈なのは合ってるでしょ?」
「わしの事をそこまで知らんじゃろ!」
マッシモとルーカスが小さく吹き出し、レオニダスが呆れたように視線を外す。
「それより……顔色悪すぎ。魔力、枯渇してる?」
「今朝、皇子殿下の間に何者かが侵入した。封印を破って入り、呪いの魔法を重ねて行ったんだ」
「そんな……」
「中の結界を張り直し、呪詛の痕跡を洗い出して……我ながらよく倒れずに済んだと思う。だが、もう限界だ」
ゼーレがわずかに震える指で額を押さえたその瞬間。
オルガはポケットから取り出した小さな青い草を、すっと差し出した。
「はい、これ」
「……なんだこれは?」
「魔力草。私が作ったやつ。食べたら魔力少し戻るよ。おいしいハーブの味するよ!」
「こんなもので――」
と否定しかけたゼーレの鼻が、かすかにひくついた。
青葉の香りの中に、かすかに漂う純粋な精気。
ただの草ではない、と本能的に理解したゼーレは、黙ってそれを受け取り、口に含む。
「……っ、これは……」
瞬間、彼の肩がわずかに揺れ、眼の奥に光が戻る。
「少しどころか…ほとんど回復してる…まさかこれほどとは」
「ね?うちの草はすごいの」
オルガはにっこりと笑った。
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