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王宮の毒花と森の片隅のお花屋さん
術者と協力者4
しおりを挟むレオニダスがもう一枚の書類を取り出し、ゼーレの前に差し出した。
「こちらが、今朝オルガ嬢に協力してもらって作ったリストです。呪いの痕跡、彼女の言う“臭い”を感じた人物をまとめたものです」
その紙を見た瞬間、ゼーレは目を見開いた。手が止まり、呼吸が一瞬だけ止まった。
「これは……ほとんどがドレイヴァン侯爵家と繋がりのある者たちではないか」
「だろ? 術中百そうってやつさ。エリオット殿下が命を落とせば、次はアルデバラン殿下。で、その二人が消えたら…皇帝の座はエメリナ妃の息子、イオナス殿下だ。今、彼には公爵位を授ける話も出てる。つまり、王族を抜けるその前に決着をつけたいってわけだ」
ルーカスが肩肘をつきながら呟く。言葉とは裏腹に、その瞳は鋭かった。
レオニダスは深く息を吐きながら、ぽつりとこぼした。
「……オルガ嬢がいなければ、ここまで辿り着くことはできなかった。エリオット殿下も、最悪の場合は命を落としていたかもしれません。そして、次はアルデバラン殿下だった」
「だが」――とルーカスが続ける。
「“臭い”のする連中がドレイヴァン侯爵家に関わりがあるってだけじゃ、決め手にはならない。そんな理屈で捕まえようものなら、こっちが不敬罪で処罰される」
冗談めかしてそう言いながら、ルーカスは目線を外した。空気が、重く沈む。
ゼーレはしばらく無言のまま、頭を抱えた。
「……どうしたものかのう。本当に、厄介な相手じゃ…」
その独り言は、誰にも届かないほどに小さく、疲弊していた。
そんな様子のゼーレを見たレオニダスは急に何かを思い出したように青い葉っぱを取り出した。
「オルガ殿から、魔法師団長へとのことです。」
と、見覚えのある青い草を手渡した。
ゼーレがその葉っぱを受け取ると、ルーカスが軽口を叩いた。
「オルガ嬢がさ、『魔法のじじい、後数日で魔力枯渇してぽっくり行きそうだから、食い止めなきゃ』って真剣な顔して言ってたよ。」
ゼーレはルーカスにジト目を送りながら、その葉っぱをじっくりと観察した。それは青色の魔力草で、魔力回復の効果がある。
「まさか、オルガ嬢がそんなことまで気にしていたとは…」
ゼーレは息を吐き、葉っぱを口に含んだ。すると、急に疲れが軽くなり、少しだけだが力が戻ったように感じた。
「ありがたい……まだ、やすやすとぽっくりはいけんからな」
そしてルーカスがニヤニヤしながら言った。
「俺たちにもたんまり例の実をもらったから、まずはアルデバラン殿下にお裾分けだな。その後は、騎士団を徹底的にしごいて、どこまで回復できるか実験するのが楽しみだわ。」
騎士団員たちがそのセリフを聞いたら青ざめるだろうが、ゼーレはそれを苦笑いで受け流しながら、口の中の魔力草がゆっくりと効果を発揮していくのを感じていた。
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