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第四十一話……積乱雲の中の悪魔
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惑星コローナは感想する砂漠が支配する地表であったが、大気中に含まれる酸素濃度は高く、多くの生物達が巨大化していた。
とんぼは60cmを越え、蝶も1mを超えるまでに成長した。
そのような惑星に根をおろした晴信。
ドレッドノートの窓から乾燥した大地を眺める。
「……ふぅ」
ブリュンヒルデとの一夜は彼を変えた。
今までは客としてこの世界にいたのだが、この世界の同じ仲間たちに溶け込んだと実感したのだ。
この先、子をなしては完全にこの世界の民だ。
晴信は今まで、こんなものは夢で明日は醒めるであろうと思ったのだが、そんなことは逃げ口上以外のなにものでもないと実感するに至ったのだった。
「ドレッドノート発進用意!」
「了解!」
サーペントの影響で大きな宇宙戦艦が使えない。
そんな状況で、最大の兵器はドレッドノートのような気圏戦闘艦であった。
ドレッドノートは海面を蹴り、薄暮の地平線へと旅立つ。
その姿は、まるで悲恋に苛まれる女神のように悲しく美しかったと伝わる。
☆★☆★☆
――ゲルマー王国軍。
コローナ占領部隊総司令官バッハボルテ大将。
彼は10万の地上軍を率いて惑星コローナの地に降り立っていた。
サーペントのお陰で、宇宙空間で地上軍を運ぶ輸送船が迎撃されなかったのだ。
惑星地上軍のエキスパートとしての彼の職歴が十分に役に立つ戦場であった。
「偵察車両を出せ!」
「工作部隊はあの山の峰に要塞を築け!」
「了解!」
バッハボルテ大将率いる10万名の惑星地上軍に対し、コローナ臨時政府軍側の地上軍は僅か3万名に満たない。
バッハボルテにとっての勝利は確約されたようなものだったが、彼は用心して偵察を重視し、拠点には要塞を建築するといった堅実ぶりであった。
「閣下! 要塞を築くための超硬質セメントが足りません!」
「うむ、本国へ至急運ぶように伝えろ!」
「はっ!」
このようにバッハボルテは堅実な用兵に勤めたのだが、そのことが本国の主星アレクサンドラの吏員にとっては浪費癖のある将軍として映った。
兵士の人命を尊ぶ姿は、後方の政治家たちにコストパフォーマンスの劣る戦線指揮官と映ったのだ。
その政治家を監視するのは、よりコスト意識の高い納税者なのだが……。
まさに、前線の兵士の命は鴻毛の如しなのである。
そのため、惑星コローナの地上軍司令官はボック大将に変わられることとなった。
「要塞は簡易で構わぬ! 地上軍は前進を旨とせよ!」
こうしてゲルマー王国軍は、素早い攻勢を優位に展開することとなったのだった。
☆★☆★☆
そのころ晴信は、コローナ第四地上部隊の上空を守る任についていた。
コローナにも気圏戦闘機はあったのだが、ほかの戦線に投入されており、ここの地上部隊を守る任についているのはドレッドノートしかいなかった。
「敵爆撃機接近! 高度我が艦より500m上空!」
「護衛の気圏戦闘機の数は!?」
「ありません!」
……敵は素早い攻撃に移ってきた。
それはコローナ臨時政府軍のすべての指揮官が感じたことだった。
だが、敵は晴信のドレッドノートの存在を知らない。
「エリー、砲戦用意だ! 各砲塔の仰角上げろ!」
「了解!」
「ディー、急上昇だ!」
「了解!」
晴信の命にしたがい、ドレッドノートは急上昇。
熱波漂う折からの積乱雲を、エンジンを頼みに強引に縦に抜けた。
これはドレッドノードの出力と、類まれなる晴信の操艦の腕が成し得たものであった……。
「左舷に敵爆撃機! 機数2!」
「第一第二砲塔斉射!」
「了解!」
本来、機銃に対する防御を考えられていた爆撃機に対し、36cm口径の実体弾が無慈悲に襲う。
機体は跡形もなくバラバラに四散していった。
「続いて右舷3機!」
「3番4番砲塔斉射!」
「了解!」
ドレッドノートの砲塔は対装甲部隊用のレールガンだ。
徹甲弾ではなく榴弾で爆撃機を仕留めにかかる。
榴弾だといっても、その威力からして、爆撃機の薄っぺらい防御力が発揮できる相手ではなかったのだ。
この時、攻撃機加わったゲルマー王国軍の爆撃機は36機。
しかし、そのすべてが、折からの積乱雲のよって墜落したと伝わった。
「進路変更! 再び艦を積乱雲に隠せ!」
「はっ!」
晴信は素早く戦闘の終わったドレッドノートを積乱雲の中に隠す。
ゲルマー王国軍としても無知ではない。
……しかし、空飛ぶ要塞が、まさか積乱雲の中に隠れているとは思いもしなかったのである……。
☆★☆★☆
――その時を遡ること、6000年前。
人間が全ての種族を支配していた頃。
他種族と人間の結婚は禁止されていた。
それは人間文明そのものが、人間という貴種によってなされるものとされ、その血の混ざったものは存在してはいけないとの法があったのだ。
……それを掻い潜るものには相次ぐ断種が為された。
それくらい当時の人間の有力者たちは、人間純血に拘ったのである。
……そして、長い時が経ち。
その人間だけがこの世界からいなくなった。
人間のDNAを引き継ぐものがいない世界となっていたのだ。
……だた、飯富晴信という例外をのこして。
世界は更なる混沌を欲しようとしていたのだった……。
とんぼは60cmを越え、蝶も1mを超えるまでに成長した。
そのような惑星に根をおろした晴信。
ドレッドノートの窓から乾燥した大地を眺める。
「……ふぅ」
ブリュンヒルデとの一夜は彼を変えた。
今までは客としてこの世界にいたのだが、この世界の同じ仲間たちに溶け込んだと実感したのだ。
この先、子をなしては完全にこの世界の民だ。
晴信は今まで、こんなものは夢で明日は醒めるであろうと思ったのだが、そんなことは逃げ口上以外のなにものでもないと実感するに至ったのだった。
「ドレッドノート発進用意!」
「了解!」
サーペントの影響で大きな宇宙戦艦が使えない。
そんな状況で、最大の兵器はドレッドノートのような気圏戦闘艦であった。
ドレッドノートは海面を蹴り、薄暮の地平線へと旅立つ。
その姿は、まるで悲恋に苛まれる女神のように悲しく美しかったと伝わる。
☆★☆★☆
――ゲルマー王国軍。
コローナ占領部隊総司令官バッハボルテ大将。
彼は10万の地上軍を率いて惑星コローナの地に降り立っていた。
サーペントのお陰で、宇宙空間で地上軍を運ぶ輸送船が迎撃されなかったのだ。
惑星地上軍のエキスパートとしての彼の職歴が十分に役に立つ戦場であった。
「偵察車両を出せ!」
「工作部隊はあの山の峰に要塞を築け!」
「了解!」
バッハボルテ大将率いる10万名の惑星地上軍に対し、コローナ臨時政府軍側の地上軍は僅か3万名に満たない。
バッハボルテにとっての勝利は確約されたようなものだったが、彼は用心して偵察を重視し、拠点には要塞を建築するといった堅実ぶりであった。
「閣下! 要塞を築くための超硬質セメントが足りません!」
「うむ、本国へ至急運ぶように伝えろ!」
「はっ!」
このようにバッハボルテは堅実な用兵に勤めたのだが、そのことが本国の主星アレクサンドラの吏員にとっては浪費癖のある将軍として映った。
兵士の人命を尊ぶ姿は、後方の政治家たちにコストパフォーマンスの劣る戦線指揮官と映ったのだ。
その政治家を監視するのは、よりコスト意識の高い納税者なのだが……。
まさに、前線の兵士の命は鴻毛の如しなのである。
そのため、惑星コローナの地上軍司令官はボック大将に変わられることとなった。
「要塞は簡易で構わぬ! 地上軍は前進を旨とせよ!」
こうしてゲルマー王国軍は、素早い攻勢を優位に展開することとなったのだった。
☆★☆★☆
そのころ晴信は、コローナ第四地上部隊の上空を守る任についていた。
コローナにも気圏戦闘機はあったのだが、ほかの戦線に投入されており、ここの地上部隊を守る任についているのはドレッドノートしかいなかった。
「敵爆撃機接近! 高度我が艦より500m上空!」
「護衛の気圏戦闘機の数は!?」
「ありません!」
……敵は素早い攻撃に移ってきた。
それはコローナ臨時政府軍のすべての指揮官が感じたことだった。
だが、敵は晴信のドレッドノートの存在を知らない。
「エリー、砲戦用意だ! 各砲塔の仰角上げろ!」
「了解!」
「ディー、急上昇だ!」
「了解!」
晴信の命にしたがい、ドレッドノートは急上昇。
熱波漂う折からの積乱雲を、エンジンを頼みに強引に縦に抜けた。
これはドレッドノードの出力と、類まれなる晴信の操艦の腕が成し得たものであった……。
「左舷に敵爆撃機! 機数2!」
「第一第二砲塔斉射!」
「了解!」
本来、機銃に対する防御を考えられていた爆撃機に対し、36cm口径の実体弾が無慈悲に襲う。
機体は跡形もなくバラバラに四散していった。
「続いて右舷3機!」
「3番4番砲塔斉射!」
「了解!」
ドレッドノートの砲塔は対装甲部隊用のレールガンだ。
徹甲弾ではなく榴弾で爆撃機を仕留めにかかる。
榴弾だといっても、その威力からして、爆撃機の薄っぺらい防御力が発揮できる相手ではなかったのだ。
この時、攻撃機加わったゲルマー王国軍の爆撃機は36機。
しかし、そのすべてが、折からの積乱雲のよって墜落したと伝わった。
「進路変更! 再び艦を積乱雲に隠せ!」
「はっ!」
晴信は素早く戦闘の終わったドレッドノートを積乱雲の中に隠す。
ゲルマー王国軍としても無知ではない。
……しかし、空飛ぶ要塞が、まさか積乱雲の中に隠れているとは思いもしなかったのである……。
☆★☆★☆
――その時を遡ること、6000年前。
人間が全ての種族を支配していた頃。
他種族と人間の結婚は禁止されていた。
それは人間文明そのものが、人間という貴種によってなされるものとされ、その血の混ざったものは存在してはいけないとの法があったのだ。
……それを掻い潜るものには相次ぐ断種が為された。
それくらい当時の人間の有力者たちは、人間純血に拘ったのである。
……そして、長い時が経ち。
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