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第四十二話……気圏戦闘艦アリーマー出現!
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――赤茶けた大地。
惑星コローナの大地は酸化鉄を多く含む荒れ地であった。
そのため作物はあまり育たず、多くの人口を養うことは出来なかった。
その赤茶けた大峡谷の谷間を、土煙をあげながらドレッドノートが這うように高速で飛行していた。
「高度を地上から15mに固定。艦底をこするなよ!」
「了解!」
晴信は操艦の一部を副官のエリーに移し、分業を図る。
それは高度な操艦を可能にする一つの答えでもあった。
「……現在時速200ノット!」
「もっと速度をあげろ!」
「了解」
時速数百キロを超える飛行物体の操縦者からすれば、地上から15mの距離は操縦者にとってわずか15cmにも思えた。
操艦する晴信の背中にも嫌な汗が流れる。
……そもそも、なぜドレッドノートはこのような無理な操艦をしているのか。
その答えは大きく狂暴な追跡者にあった。
「艦長! 敵気圏戦闘艦を振り切りました!」
「……よし、適当なとこで旋回。攻勢に移るぞ!」
ドレッドノートを追いかけてきたのは、ゲルマー王国軍の誇る気圏戦闘艦アリーマーであった。
古の超文明の産物であり、ドレッドノートとさほど大きさが変わらない巨大な飛行戦闘艦であった。
――二時間前。
いつものようにドレッドノートが積乱雲の中で、敵の爆撃隊を待ち構えていると、この敵気圏戦闘艦に急襲されたのだ。
敵は太陽の方向から4機の気圏戦闘機を伴って現れ、ドレッドノートのセンサー群の眼から逃れ近づいてきた。
そうして、背後から数条のレーザー砲と数発の実体弾をドレッドノートに叩きこんだのだ。
ドレッドノートは致命傷を免れたものの中破。
左舷からどす黒い煙を噴いていた。
つまり、敵艦から逃げるために超低空飛行を強いられていたのだ。
――ドッグファイト。
相手の後ろの位置をとるために、激しい旋回飛行を擁する。
「敵艦見えました。左舷後方26-Bの位置です!」
「回り込むぞ! 前方の雨雲に突っ込め!」
「了解!」
ドレットノートは敵のレーダー機器から逃れるために、尚も地上すれすれを高速で飛行。
時には高度を上げて雲の中に逃げ込んだ。
地表では激しい土煙があがり、雲の中では雹の塊が激しく甲板を打ち付けた。
「左舷方向へターンだ! エンジン全開!」
「了解!」
激しい横への遠心力が、晴信たちの筋組織と骨格を軋ませる。
「敵ミサイル接近!」
「急速上昇!」
今度は足元側に遠心力が働き、晴信の血液は足元側へと偏る。
それは脳と網膜の血圧を下げ、一時的に視界が真っ暗になるほどであった。
「1、2、3……」
晴信はゆっくりと数字を数え、意識を保とうとし、貧血気味になる脳を自ら鼓舞した。
副官のエリーや他のクルーも苦悶の表情を浮かべ、平気なのはディーくらいであった。
「敵を前方に捕えました!」
何度かの急反転。
何度かの急上昇の後。
ドレッドドノートは敵気圏戦闘艦の後ろ側を前方に捉えた。
敵の後ろ側を追い回す我慢比べは、ついに晴信たちに軍配が上がったのであった。
「艦首レーザー砲用意!」
「了解!」
晴信が射撃スコープに敵艦を捉えようとしても、今度は敵が急旋回や急上昇して逃れようと暴れる。
激しい旋回に旋回機銃では狙いが付けられず、またミサイルも横Gに負けてあらぬ方向へと飛んでいった。
……が、ドレッドノートの旋回砲塔も奮闘。
「今だ、斉射開始!」
敵の気圏戦闘機4機だけは何とか撃墜に成功した。
爆散した航空機の残骸が、煙の尾を引いて地上に激突していく。
残るは大物だけだ。
晴信は心を奮い立たせる。
二時間後を経過しても、未だに二艦の決着はつかない。
お互いが前後の位置を入れ替えながらに、激しい攻防が続く。
普段の戦闘は、晴信の作った艦が敵に圧倒した力を誇ったが、今回は相手が古の人間たちが作った新鋭艦であったため、艦自体の性能の優劣の差はほぼなかったのだ……。
「くそっ! いい加減に諦めてくれ!」
願うように晴信が口にした瞬間。
敵艦が地面に激しく接触。
左側の主翼と舷側を大破させながらに地表を滑っていく。
「しめた!」
もはや敵艦は操艦できる状態ではない。
その二秒後。
ドレッドノートの艦首レーザー砲が咆え、青白い光の束が敵艦を無残に切り裂いたのであった。
結局、二艦の運命を分けたのは、操艦者の僅かな腕の差であった。
☆★☆★☆
「ディー、ブラックジャックを用意して」
「なにをするの?」
「あの気圏戦闘艦を捕獲するんだ。あんなに性能がいい艦は、廃棄するのはもったいないからね」
「了解!」
ドレッドノートは敵艦アリーマーの残骸の近くへ着陸。
晴信が乗るゴーレム機を地上におろした。
『降伏するなら命はとらない!』
晴信はゴーレムの拡声器を使って、敵艦の乗組員の投降を促した。
ゲルマー王国側の乗組員たちは負傷者が多く、敵対する行動を示したものは皆無であった。
『降伏する! その代わり負傷者の手当てを願いたい!』
相手も拡声器で応じた。
『了解した!』
晴信たちはコローナ臨時政府軍の地上部隊に連絡。
敵負傷者の手当てと収容を手配した。
……そして。
この敵艦アリーマーを接収。
惑星ディーハウスへドレッドノートで牽引し持ち帰った。
この後。
晴信は急ピッチでアリーマーの修理を敢行。
昼夜を分かたずディーと働き、見事二週間でとりあえず飛べるように修理したのであった。
惑星コローナの大地は酸化鉄を多く含む荒れ地であった。
そのため作物はあまり育たず、多くの人口を養うことは出来なかった。
その赤茶けた大峡谷の谷間を、土煙をあげながらドレッドノートが這うように高速で飛行していた。
「高度を地上から15mに固定。艦底をこするなよ!」
「了解!」
晴信は操艦の一部を副官のエリーに移し、分業を図る。
それは高度な操艦を可能にする一つの答えでもあった。
「……現在時速200ノット!」
「もっと速度をあげろ!」
「了解」
時速数百キロを超える飛行物体の操縦者からすれば、地上から15mの距離は操縦者にとってわずか15cmにも思えた。
操艦する晴信の背中にも嫌な汗が流れる。
……そもそも、なぜドレッドノートはこのような無理な操艦をしているのか。
その答えは大きく狂暴な追跡者にあった。
「艦長! 敵気圏戦闘艦を振り切りました!」
「……よし、適当なとこで旋回。攻勢に移るぞ!」
ドレッドノートを追いかけてきたのは、ゲルマー王国軍の誇る気圏戦闘艦アリーマーであった。
古の超文明の産物であり、ドレッドノートとさほど大きさが変わらない巨大な飛行戦闘艦であった。
――二時間前。
いつものようにドレッドノートが積乱雲の中で、敵の爆撃隊を待ち構えていると、この敵気圏戦闘艦に急襲されたのだ。
敵は太陽の方向から4機の気圏戦闘機を伴って現れ、ドレッドノートのセンサー群の眼から逃れ近づいてきた。
そうして、背後から数条のレーザー砲と数発の実体弾をドレッドノートに叩きこんだのだ。
ドレッドノートは致命傷を免れたものの中破。
左舷からどす黒い煙を噴いていた。
つまり、敵艦から逃げるために超低空飛行を強いられていたのだ。
――ドッグファイト。
相手の後ろの位置をとるために、激しい旋回飛行を擁する。
「敵艦見えました。左舷後方26-Bの位置です!」
「回り込むぞ! 前方の雨雲に突っ込め!」
「了解!」
ドレットノートは敵のレーダー機器から逃れるために、尚も地上すれすれを高速で飛行。
時には高度を上げて雲の中に逃げ込んだ。
地表では激しい土煙があがり、雲の中では雹の塊が激しく甲板を打ち付けた。
「左舷方向へターンだ! エンジン全開!」
「了解!」
激しい横への遠心力が、晴信たちの筋組織と骨格を軋ませる。
「敵ミサイル接近!」
「急速上昇!」
今度は足元側に遠心力が働き、晴信の血液は足元側へと偏る。
それは脳と網膜の血圧を下げ、一時的に視界が真っ暗になるほどであった。
「1、2、3……」
晴信はゆっくりと数字を数え、意識を保とうとし、貧血気味になる脳を自ら鼓舞した。
副官のエリーや他のクルーも苦悶の表情を浮かべ、平気なのはディーくらいであった。
「敵を前方に捕えました!」
何度かの急反転。
何度かの急上昇の後。
ドレッドドノートは敵気圏戦闘艦の後ろ側を前方に捉えた。
敵の後ろ側を追い回す我慢比べは、ついに晴信たちに軍配が上がったのであった。
「艦首レーザー砲用意!」
「了解!」
晴信が射撃スコープに敵艦を捉えようとしても、今度は敵が急旋回や急上昇して逃れようと暴れる。
激しい旋回に旋回機銃では狙いが付けられず、またミサイルも横Gに負けてあらぬ方向へと飛んでいった。
……が、ドレッドノートの旋回砲塔も奮闘。
「今だ、斉射開始!」
敵の気圏戦闘機4機だけは何とか撃墜に成功した。
爆散した航空機の残骸が、煙の尾を引いて地上に激突していく。
残るは大物だけだ。
晴信は心を奮い立たせる。
二時間後を経過しても、未だに二艦の決着はつかない。
お互いが前後の位置を入れ替えながらに、激しい攻防が続く。
普段の戦闘は、晴信の作った艦が敵に圧倒した力を誇ったが、今回は相手が古の人間たちが作った新鋭艦であったため、艦自体の性能の優劣の差はほぼなかったのだ……。
「くそっ! いい加減に諦めてくれ!」
願うように晴信が口にした瞬間。
敵艦が地面に激しく接触。
左側の主翼と舷側を大破させながらに地表を滑っていく。
「しめた!」
もはや敵艦は操艦できる状態ではない。
その二秒後。
ドレッドノートの艦首レーザー砲が咆え、青白い光の束が敵艦を無残に切り裂いたのであった。
結局、二艦の運命を分けたのは、操艦者の僅かな腕の差であった。
☆★☆★☆
「ディー、ブラックジャックを用意して」
「なにをするの?」
「あの気圏戦闘艦を捕獲するんだ。あんなに性能がいい艦は、廃棄するのはもったいないからね」
「了解!」
ドレッドノートは敵艦アリーマーの残骸の近くへ着陸。
晴信が乗るゴーレム機を地上におろした。
『降伏するなら命はとらない!』
晴信はゴーレムの拡声器を使って、敵艦の乗組員の投降を促した。
ゲルマー王国側の乗組員たちは負傷者が多く、敵対する行動を示したものは皆無であった。
『降伏する! その代わり負傷者の手当てを願いたい!』
相手も拡声器で応じた。
『了解した!』
晴信たちはコローナ臨時政府軍の地上部隊に連絡。
敵負傷者の手当てと収容を手配した。
……そして。
この敵艦アリーマーを接収。
惑星ディーハウスへドレッドノートで牽引し持ち帰った。
この後。
晴信は急ピッチでアリーマーの修理を敢行。
昼夜を分かたずディーと働き、見事二週間でとりあえず飛べるように修理したのであった。
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