異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
51 / 55

第五十一話……反ゼノン王連合の結成

しおりを挟む
――三週間前。

 一隻の小型宇宙船が惑星コローナ後に降り立った。
 その船の船籍は星間ギルド。
 それはゲルマー星系のみならず、その他星系とも取引する超国家的商団体であった。


「ようこそいらっしゃいました!」

 宇宙港で惑星コローナ政府関係者が出迎える相手は、星間ギルドの理事であった。


「どうぞこちらへ、首長のブリュンヒルデがお待ちしております」

「うむ」

 理事は宇宙港から車に乗り、惑星コローナの政府の建物へと案内された。


「ようこそ、ハンス理事。お会いできてうれしいですわ!」

「あはは、ブリュンヒルデお嬢様も大きくなられましたな」

 この理事、実はブリュンヒルデと面識がある。
 それはブリュンヒルデがまだ小さな一人の王族であった頃の話であるが……。

 コローナ政府は、理事を最恵国の待遇の晩餐会でもてなした。
 その後、秘密裏に重要案件での会議が行われたのであった。



☆★☆★☆

「えっ!? 私に王になれと!?」

「ええ。さらに言えば、これは惑星間ギルドだけの要望ではございません。惑星ベネティクタや惑星エーレントラウト、それに付随する宇宙コロニーの首長全ての要請であります」

 理事の話の要諦はこうであった。

 惑星間ギルドは、各惑星間の交易で主な利益を上げている。
 しかし、ゲルマー王国が放った宇宙海獣サーペントにより、急激な貿易額の低迷に陥っていた。

 それは、惑星間ギルドだけでなく、ギルドからの多大な租税を資金源とする各惑星などの政府をも困らせていたのだ。
 もはや、ギルドにとってゲルマー王国は瓦解してほしい存在であった。

 その反王国の盟主として、ゲルマー王国の攻撃をいち早く跳ね除け、独立を早々と独立を勝ち得た惑星コローナの首長に白羽の矢が立ったのだった。

「……しかし、ゼノン王に勝つにも、あのサーペントが邪魔なのです」

 ブリュンヒルデは暗い顔をしてみせる。
 彼女は根っからの王族だ。
 政治的交渉や判断にも優れるものを持っていた。


「お嬢様、誰もただでは星系の王座にはつけませんよ。誰も成し得ない大きな功績を為してこそ、新たな王朝を築ける始祖になれるのです」

「……」

 ブリュンヒルデもハンス理事も、お互いの利益の為の考えを巡らせる。

 ゲルマー星系内では、ゼノン王に続く戦力を持つのはこの惑星コローナ。
 その戦力すべてを注ぎ込めば、宇宙海獣サーペントを倒せるかもしれない。
 これは両者の共通の認識であった。

 さらに言えば、サーペントを倒した後には惑星コローナの戦力も瓦解するだろう。
 そうなれば、惑星コローナの優位性は崩壊し、反王国の実際の盟主は惑星間ギルドになるであろうと……。

 ……ここまでの計画性があってのギルドの申し出であろう、彼女はそう判断した。
 彼女は平和を望んでいた。

 だが、その平和を責任もって構築するには、自らが率先して先頭に立たねばならない。
 なぜなら、戦争は惑星間ギルドにとっても甘い汁。
 彼等はサーペントだけが無くなり、さらに戦争が継続した方が儲かるのだ。

 よって、絶対に主導権を惑星間ギルドになぞに渡してはならないと思っていた。
 だからと言って、ここで自ら盟主の座を断るのも悪手であった。


 ……長いの沈黙の後。
 彼女は重い口をようやく開いた。

「わかりました。お望み通りサーペントを駆除いたしましょう。ですが、王座の約束ゆめゆめお忘れなきよう……」

「わかりました。今後とも惑星間ギルドは、反ゼノン連盟を応援させていただきます」

 惑星間ギルドの理事のハンスは恭しく返礼した。


 ハンス理事はこう思っていた。

 彼女の力の根源は晴信という男の存在。
 だが、彼は慈善事業の為にほぼすべての財産を使い切った。

 ここで、惑星コローナの戦力をサーペントにぶつければ、そのダメージは再起出来ないものとなろう……。
 その後の宇宙戦力は、反ゼノン連盟側はゼノン王を滅ぼすほどの力はない。
 そこで両者を巧く戦わせ、惑星間ギルドに多大なる利益を上げさせて貰うことにする。

 その利益を発言力に変えて、彼は次の理事長選挙に勝利する予定だった。


 ハンス理事は口元に笑みを隠しながら、惑星コローナの地を後にした。
 晴信というオトコにもはや力はない、その点だけを間違えて……。

 お互いの思惑はともかくとして、こうして【反ゼノン王連合】は結成されたのだった。



☆★☆★☆

「お嬢様、わが軍にサーペントを倒す力なぞありませんぞ! 万が一倒したとしてもその時、我が軍は壊滅しておりましょう」

 会議が終わった後、老臣のザムエルはブリュンヒルデにそう助言した。

「だからと言って、ゲルマー星系の正式な王座につけるチャンスをみすみす逃すわけにはいかないわ!」

「……では、どうなさいます!?」

「晴信様にお願いするのよ!」

「は? かの方の船タテナシは我が軍の支配下にありますが?」

「……いえ、彼はきっともっと強い船を作れるはずよ!」

 これはブリュンヒルデの想像というより、願望に近かった。
 もちろん、彼等はケツアルコアトルの存在を知らない。
 さらに言えば、ケツアルコアトル自体も、晴信が完全に作ったものではないのであるが……。


 ……きっと、晴信様ならなんとかしてくれるに違いない。

 そんな思い込みに似た願望を胸に秘めながら、彼女は超光速通信室に向かった。
 通信相手は、そう、晴信であった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお
SF
 いまから二百年の未来。  前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。  その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。  折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。  火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...