異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

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第五十話……ドワーフの王

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「……ふう、さて次に移ろう」

「了解!」

 晴信とディーは準惑星ディーハウスに移っていた。
 ちなみに、この星の設備は全く売却しておらず健在である。

 晴信は傷病者の病院施設を惑星コローナの都市部近郊に建造。
 そこの責任者にカンスケをあてた。

 さらに、惑星コローナの工場を売却した費用で、晴信は多数の医療用マイコンを買い集めていた。
 そのマイコンを材料に、この準惑星の工場で高性能な義手や義足へと加工。

 それを惑星コローナの病院へと輸送。
 戦傷に傷ついたドワーフたちの社会復帰へ向けて、強力にサポートしたのだった。



☆★☆★☆

「この度のこと、本当にお礼の言いようがありません」

「いえいえ」

 晴信が惑星コローナへと視察した際。
 ドワーフの長老に御礼を言われ、大いに歓待された。
 そこには若いドワーフたちも集い、喧騒としていた。

「俺たちもう働けるぞ! 良い職場ないものか?」

 ドワーフの若い元兵士たちに詰め寄られる晴信。

「まぁまぁ、焦りなさんな」

「いや、長老。俺たち早く働きたいんだ!」

 元気になったドワーフたちは勤労意欲が旺盛。
 もともと、その種族の真面目さが認められ、優秀な外国人兵士のような存在で光を浴びていたが、元はと言うと鉱山労働者に特化した種族だった。


「晴信様、彼等若い者に働く場所をくれてやるわけにはいきませんかな?」

「……ふむう」

 晴信は悩んだ。
 準惑星ディーハウスで、鉱石の採鉱に励んでもらってもいいのだが、その存在の秘匿性が損なわれるのではないかと危惧していたのだ。

「あの星は広いから、工場の裏側に住んでもらったら?」

 ディーがそう晴信に助言した。
 準惑星ディーは直径が三千キロ以上ある。
 ちなみに晴信の工場は、その地表に占める大きさはほんのわずかであった。

 そう考えると、工場の秘匿性を維持したまま、ドワーフたちの居住区を作れるのではないか……。
 晴信はそう判断。
 傷の治ったドワーフたちの惑星ディーへの移住政策がスタートしたのだった。



☆★☆★☆

 惑星コローナ政府から10万トン級の大型輸送艦を借りてきて、ドワーフたちを準惑星ディーへと運ぶ。
 そこは工場がある地からかなり離れており、石ころが転がる荒野であった。
 さらに言えば、この天体には大気もなかった。
 ゲルマー王国にありながら、現地の獣人たちにこの天体が放置されていたのはそれなりの理由があったのだ。

「よし、テントを張るぞ!」

「簡易コロニーを持ってこい!」

 輸送艦からクレーンなどの建機を運び出す。
 惑星コローナの病院には1万名ものドワーフたちが残ったが、逆を言えば、この地に2万名もの
ドワーフが移住してきたのであった。

 ドワーフたちの勤労意欲は凄まじく、僅か二十日でドーム状の居住区が完成。
 さらに十日で地下へと行動が掘られ、移住から1か月で資源鉱山が開業したのであった。



☆★☆★☆

――二か月後。
 ドワーフたちの生活は安定した。

 ドワーフの長老は晴信の工場へとやって来ていた。

「晴信様、この施設はすさまじいですな。全く見たことが無い!」

「……ええ、内緒でお願いしますね」

 ドワーフたちが採鉱した鉱石を使って、晴信は再び宇宙船を造っていた。
 造った良質な宇宙船は、惑星コローナの企業へと売却される予定であった。
 つまり、再びの金策である。


「晴信様、お願いがあるのです」

「なんでしょう?」

 ドワーフの長老は晴信に向き直り、襟を正した。

「貴方は我がドワーフという民族を、私財をなげうって助けて下さった。それに加えて安住の地もくださった。我々はそれに大変に感謝しているのです」

「……あはは」

 晴信は照れ笑いをする。
 地球にいたころ、晴信は人助けをしたいと思っていたが、特に力なく強い意思もなく、実行することができないでいたのだ。
 ドワーフ民族の復興は、晴信のちょっとした夢でもあった。

「……でな、晴信様に我が民族の王になってほしいのだ」

「……ぇ!?」

 ゲルマー王国は封建主義であり、様々な民族の首長の集まりであった。
 長老の言うことは、そういう面においては現実に即した言葉であった。
 だが、封建主義とは上のものが絶対的な力を持つということである。

「私は、獣人でもドワーフでもありませんよ。勤まるわけがないと思いますが……」

 晴信は断った。
 ゲルマー王国の主民族である獣人でもなければ、ドワーフでもないのが理由だった。
 晴信の姿は、この世界の誰もが忘れ去ってしまった人間の姿なのである。

「御姿など、なんでもいいではありませんか? 貴方はわが民族を助けて下さった。それは誰にもできなかったこと。王に相応しいのは晴信様をおいてほかにいないのです」

「う、うん……」

 晴信はこういうことに優柔不断である。
 あまり責任ある立場になりたくないというのがあったのだ。


「この老人の経っての頼みじゃ、この通り……」

 晴信はついに長老に拝まれてしまう。
 流石にこうなると晴信は承諾を決意した。

「わかりました。でも、あまり自信がありませんよ」

「いえいえ、晴信様は立派な王になられます。私もめいっぱい補佐させていただきますゆえ」

 長老は眼に涙を浮かべた。
 長い歴史の中。
 ドワーフたちは少数民族そして立場が弱かった。
 そんな少数民族であるドワーフたちに、温かい手を差し伸べてくれた晴信はそれだけ大きな存在であったのだった。


――その晩。

「晴信、通信だよ!」

「誰から?」
「ブリュンヒルデさんだよ」

 ディーにそう言われ、晴信は通信室へと向かった。
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