押し付けられた仕事、してもいいものでしょうか

章槻雅希

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 15歳になり、学院へと入学いたしました。我が国では貴族子女は皆王城に隣接する学院で15歳から18歳まで学ぶことが義務付けられております。

 他国の学院では身分にとらわれず自由に学ぶため、学院内では皆平等とされるところもあるそうですが、我が国では違います。学院の外では身分差はございますし、学院は社交界デビュー前のプレ社交界という意味合いもございますから、身分に応じた振舞いを求められます。

 また、クラス分けは成績順となっており、通常は上位貴族ほど成績が良く、下位貴族ほど下の成績となります。薄々気づいてはおりましたが、アシュトン殿下はお馬鹿さんでいらっしゃいました。最下位クラスにご在籍なのですもの。

 学院は身分差があると申しましたが、学業成績に関しては平等でございます。普通は爵位が上がるほど家庭教育の質も上がりますので、成績順はほぼ爵位順になります。少々出来がよろしくない方でも爵位から予想されるクラスの一つ下くらいです。

 なのに、王族で王太子であるアシュトン殿下が最下位クラス……。王宮の教育係は何をしていたのでしょう。ああ、アシュトン殿下の癇癪を抑えられずに勉学が進まなかったのですね、きっと。なんだかんだと国王陛下も王妃殿下も一粒種のアシュトン殿下にはお甘いですし。

 わたくしは爵位相当のクラスに入りました。周りは全て同じ公爵家か侯爵家。アシュトン殿下をお支えする側近となられるはずの方々でした。因みに各クラスは10名ほどです。貴族だけの学院ですから、一学年100人に満たないくらいの在籍数ですわね。

 アシュトン殿下が最下位クラスと知った皆様は頭を抱えていらっしゃいました。勉学の出来=為政者の資質ではございませんけれど、中位クラスならまだしも、下位クラスですらなく最下位クラスでございますからね。側近候補の皆様としては頭の痛いところでしょう。取り敢えず、クラスでは次期王妃として側近候補の皆様との交流及び連携を図ることとなりました。

 学院のクラスも含め、嫌な予感はしておりましたの。そして案の定、それは的中するのでした。







 15歳の準成人となりましたので、アシュトン殿下には公務が割り振られることとなりました。学院が休みの日に式典に来賓として参加なさったり、王都周辺の貴族領を視察なさったり、その報告書の作成もございます。実務的な報告書は同行していた文官たちが作成しますから、アシュトン殿下の報告書は将来の王としてどう感じたかのレポートというところでしょうか。

 最初の視察を終えられたアシュトン殿下は何故かわたくしにその報告書を書くように仰いました。え、無理ですわ。わたくし、その視察には同行しておりませんもの。そう理由を述べてお断りいたしましたが、アシュトン殿下は『使えないヤツだな』とご立腹。

 いやいや、同行していない婚約者に書かせようとするのがそもそもの間違いでしょうに。勿論、このことは王妃殿下とお父様に報告いたしましたわ。

 そうしたら何故かわたくしも視察に同行するように命じられました。まだ婚約者に過ぎませんのに……。次期王太子妃としてと言われても、万が一にも婚約解消になったらどうするのでしょうね。

 お父様にご相談して、妃確定ではない者が同行するのはおかしいと奏上していただき、無事に回避出来ました。現王妃殿下も婚約者時代に視察同行などなさってませんから、すんなりいきましたわ。

 アシュトン殿下が書いた報告書は1行しかないものでした。仕方ありませんので、わたくしと側近候補のドリスコル公爵令息ギデオン様が殿下から印象を聞き取り、それらしく修飾した文章で下書きしたものを殿下に清書していただきました。

 それすらも面倒臭がっていらっしゃいましたが、国王陛下からレポートの出来を誉められたらしく、大層ご機嫌でした。取り敢えず、視察の報告書はわたくしとギデオン様が聞き取りして下書きするということで慣れていただくことにしました。徐々に殿下がご自分で作成なさる部分を増やしていく予定です。飽くまでもわたくしたちはお手伝いであり、アシュトン殿下に慣れていただくための暫定的措置でございました。
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