雪を溶かすように

春野ひつじ

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第一章

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 挨拶をした後に、悠という王子は、

「弟が大変失礼なことをした。すまなかった。」

と勢いよく謝ってきた。まさか謝られるとは思っていなかった。

「いえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました。」

「今、弟との交渉中でまだそのチョーカーは外せないが、必ず外させると約束する。」

悠の言い方から、チョーカーは那にしか外せないようにできているようだ。声色が真剣だったし、僕を閉じ込めていたのは悠ではなく那だから、

「はい。」

と答えた。すると悠はホッとした顔をした。そして、

「薫と呼んでいいか?」

と聞いてきた。

「はい。」

とフレンドリーな人だなと思いつつ答えると、自分のことも悠と呼ぶことと、敬語を止めることをお願いされた。

「わかった。」

と言うと、悠は嬉しそうに笑いながら、また来る、と言って部屋を出て行った。 



 悠が部屋を出た後、ちょっとガタイのいい男性が入ってきた。しっかりとした彼の筋肉と、自分の薄っぺらい体を見比べて、ちょっと残念な気持ちになった。

「はじめまして。ようと言います。今日から薫様のお世話をいたします。よろしくお願いします。」

彼はそう言うと、丁寧にお辞儀をした。本日二回目のはじめまして、だ。

「はじめまして。薫です。よろしく」

濃い茶色の髪に、暖と同じ琥珀色の瞳。暖は細めで体型は違ったがどことなく顔立ちが似ているかもしれない、と思っていると、

「先ほどまでいた暖は、私の兄です。」

と教えてくれた。

「なるほど。確かに目元が似てるね。」

葉は少し照れくさそうに笑った。

「ところで薫様、体調はいかがですか?」

「えっと、まだ体が重い感じがするかな。」

「食欲の方は?」

「そんなに。温かい紅茶が飲みたい。」

「今淹れてまいります。」

そう言って葉は一旦部屋を出て行った。獣人は鼻がいいから、葉から微かな獣人の匂いがすることに気づいた。たぶん身近に親しい獣人がいるのだろう。もしかしたら、悠が気を利かせて僕のためにしたことかもしれない。人間には、最近期待を裏切られたのに、ついそんなことを考えてしまう。今まで自分より下に見ていた獣人が今では対等になったと言うことは、人間にとっては面白くないはずなのに。自分の中で期待したいという思いと、したくないという思いが混ざっていて驚いた。悠の人を惹きつけるようなどこか懐かしいような人柄がそうさせているのかもしれない。そんなことを考えていると、トントンとノックの音がした後に、葉が美味しそうな紅茶とお粥を持って入ってきた。
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