雪を溶かすように

春野ひつじ

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第一章

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 急に選ばれたこと、自分の命が残りわずかであることに驚き悲しむ僕に、凱は自分と一緒にどこか誰も知らない国へ逃げよう、と提案してくれた。正直に言うと、本当は彼と一緒に行きたかった。でも、何故か僕に冷たい王宮の人々の中で、唯一優しく接してくれた凱に迷惑をかけたくなかった。もし僕が逃げたら、兄が行かなければならないかもしれない。もし僕と一緒に逃げたら、凱は獣人国を出て行くことになる。今の暮らしを気に入っている彼にそんなことを頼むのは申し訳なさすぎた。だから、僕は覚悟を決め、人間国へとやってきた。最初は予想通り辛い生活だったけど、今は悠や葉がそばにいてくれるし、新という友達もできた。僕は穏やかに微笑む。

「そうですか。あと残り一ヶ月半の命ですが、精一杯生きるつもりです。幸い今は第一王子と楽しく過ごせています」

「先ほどもあなたの楽しそうな顔を見ることができてよかったです。私が言ったところで変わらないとは思いますが、どうか長生きしてください」

「ありがとうございます。あと、素敵な商品ですね。どれを買うかとても悩みました」

おじいさんは、ハハッ、と愉快そうに笑う。

「それはそれは、嬉しい限りでございます。どなたかに手紙を書かれるのですか?」

「凱に手紙を出そうと思っています。僕がいなくなって賑やかさが減ったと思うので、このレターセットにしました」

「凱様もきっと喜ばれることでしょう」
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