雪を溶かすように

春野ひつじ

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第二章

4 side那

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 薫はあまりの刺激に気絶してしまったらしい。瞳を閉じたその顔をじっと見る。苦しいのか、息が荒い。赤く染まった頬、汗ばんでしっとりした肌、全てが扇情的だ。兄が最近目をかけていると言う獣人国の王子。この王子のために王位継承権まで譲るとは想定外だったが、私には都合が良い。これからのことを考えて、私はニヤリと笑う。ベッドに繋いでいた金属製の鎖を外して、余りをさらに薫の手に巻きつける。まだ目覚めはしないだろうが、念のため。そして指をパチンと鳴らすと、待機していた私の従者たちが音もなく現れる。

「私の部屋まで運んでください。出来るだけ早く、誰にも見つからないように」

 彼らは礼をもって了承の意を示す。あとのことは優秀な彼らに任せて、私は自分の部屋へ一足先に向かうことにした。



 部屋につき、薫を拘束していた重い鎖を外す。たぶんもう抵抗はできないだろうし、この部屋なら大丈夫だと判断したからだ。薫はまだ気絶したままだが、時折吐息を漏らす。その赤く染まった頬をペチペチと叩くと、ぼんやりとした顔で瞳を開ける。

「起きてください」

 まだ状況が飲み込めていないようだ。しかし、私の顔を見て思い出したらしい。

「ここはどこだ?」

 警戒していることがありありと伝わってくる。

「私の部屋ですよ。そろそろ彼らがくる頃ですかね」

「彼ら……?」

 予想通り、荒っぽくドンドンドンとドアを強く叩く音が聞こえる。

「那!!いるんだろ!薫を知らないか?」

 薫はほっとした様子で、パッと表情を明るくする。

「悠だ!」

 その嬉しそうな表情にイライラして、私は耳元で囁く。

「兄に、お前のことなんてもう嫌いだ、と言ってください」

 こいつは何を言っているんだという目でこちらを見つめる。聞かなくても言うわけがないということはわかる。

「さもないと、もう一段階発情を強めますよ?」

 さらにもう少し脅しをかけるように、首元のチョーカーに手を添える。今でさえかなりきついはず。これよりも強くされては、と思ったのか、薫は怯えている。さっきからずっと叩かれているドアへ行き、ゆっくりと開ける。

「こんにちは兄上。そんなに焦らずとも、薫は部屋の中にいますよ」

 部屋の中の薫を見つけ、駆け寄ろうとする兄を押しとどめる。
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