雪を溶かすように

春野ひつじ

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第二章

54 side悠

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「彬!お久しぶりです」

 水晶の中の彬はペコリとお辞儀をする。そして、手元にあった紙にサラサラと、お久しぶりです那兄上、書いた。

 彬は、生まれつき話すことができない。しかし、好奇心旺盛で、獣人国に行く前は色々な場所に出かけて、その土地の特徴なんかを調べていた。多分その時にセヒナの花のことを知ったのだろう。

 そこで、俺は隣で水晶を覗き込んでいる凱が口をパクパクと動かすのに気づく。

「……桂(けい)じゃねーか」

「おお!凱!久しぶり」

 こちらも知り合いのようだ。凱が紹介してくれる。

「獣人国第五王子の桂だ」

 そして、お互いの自己紹介が終わった後、葉が簡潔にこれまであった出来事を説明する。葉は話すのが上手いから、すぐに彬たちも理解したようだ。

「なんだと!薫がそんな目にあっていたなんて……」

 青ざめた顔をする桂とは対照的に、彬は考え込むような仕草をする。しばらくそうしていた後、考えがまとまった様子で、紙に再びサラサラと文字を書く。

「多分、セヒナの花は人間国と獣人国の境目に生えているものだと思います。しかし、非常に希少な植物なので、見つけるのは難しいでしょう」

「難しくてもいい!詳しくはどのあたりなんだ?」

 難しいと言われたが、手がかりがあったことが嬉しい。

「ユフという街の中にある山に生息しています」

 俺はメモをとり、頷きながら聞く。

「特徴は?色とか形とか」

「そうですね……夜になると花が咲き、ほんのり光り輝きます。花の色は紫で、形は花弁が幾重にも重なった形です」

「本当にありがとう。今から探しに行ってくる」

「いえ、くれぐれもお気をつけください。幸運を祈っております」

 隣にいた桂という男性も凱に向けて言う。

「おい、必ず薫を助けろよ」

「言われなくてもわかってる」

 そして、再び那が呪文を唱えて、水晶は元のように、透明に戻った。
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