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〖第30話〗
しおりを挟む「まさか。歩き。俺、ケチだしビンボーだもん。裏道つかえば十分かからないよ」
真波にだいふくとおはぎが身体を擦り寄せみゃあみゃあ甘える。
「うわあ、可愛いな。和菓子はこの子達だね。まるくてちょいポチャで、ふわふわ。すごく別嬪さんだ」
確かに去勢したから、別嬪なのかな? そう思いおはぎとだいふくから真波に視線を移すと、目を細めて彼は二匹をみている。
「ごめんな、チュルーとか持ってないんだ。家の子達は好きだったんだけれど」
真波が取り出したのは小分けの鰹節パック。タコパの鰹節だった。
「俺の分の鰹節あげるよ。ほら、うまいだろ、うまいよな。俺も好きだよ鰹節」
真波は猫の扱いになれていた。目尻を下げて二匹を撫でながら、昔、真波は雑種だったがタキシード猫と三毛猫を飼っていたと言っていた。
何故かどちらも女の子なのに蟹蔵と海老衛門と言う名前だったとも言っていた。妹がつけたと言う。
「二匹とも、五歳まで生きられなかった。たて続けにあと追うように二匹とも逝って、あの時は泣いて泣いて、家族皆で泣いたなあ。泣きながら『いっぱい泣いてあげるとタマシイが喜ぶ』って、何処かで聞いたことをぼんやり思ってさ、でも、だからって泣いて『あげる』のは嫌で、色々考えちゃって蟹蔵や海老衛門のために純粋に悲しめない自分がすごく嫌で、二匹の為じゃなくて自分のために泣いてた。やな小学生だね。だいふく、おはぎ、長生きしろよ。美雨さんを悲しませるな」
初めて家に来る男の人で、おはぎとだいふくにここまで親身になってくれるなんていなかった。そして、今までこの部屋に来た人の中で、一番二匹は真波を歓迎モードで接している。
そして、私もそう。柔らかな雰囲気の彼は、私の心に寛げる灯りをつける。けれど孤独に光を灯すと、傷痕も鮮明に現す。
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