捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ

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18 やってきました!シカール領

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 やってきました、ラット帝国!
 というわけで、道中は特段のトラブルもなくロイクが拠点にしているシカール領の街にまで来られたわ。
 唯一あった問題はロイクの外見に惹かれた女性たちが、鉄道でも国境でもわらわらと寄ってきたことと、私に対して地味だの釣り合ってないだのと、陰口を言ってきたことくらいだ。

「ようこそ、マリー。冒険者とダンジョンが特産のシカール領へ」

「ダンジョンはともかく冒険者が特産なの?」

「下は一桁から上は六十代まで揃っているからな。しかもシカール領で育ったA級冒険者までいるときた」

「それって、ロイクのことでしょ?」

「はっはっは、バレたか」

 ルグラン領からシカール領までは鉄道を駆使してきたけれど、それでも二週間はかかっているからロイクとは、かなり気安い関係になっている。
 まあ時間があったからというよりも、ロイクが人の内側に潜り込むのがうまいのよね。その点を指摘したら、ロイクは冒険者としての資質だって言っていたけれど。
 考えてみれば冒険者の仕事はダンジョン探索や魔物討伐だけでなく、依頼人や荷物の護衛もあるから人と仲良くする術も持っているということね。

「だけど、確かに活気があるわね。冒険者が多いから?」

「ああ。冒険者がダンジョンから持ち帰った品が多いから、それを目当てに人が増えるんだ。もちろん、マリーの仕事であるポーションも大人気だぞ」

「ふふ。仕事がたくさんあるのは、ありがたいわね」

 道中でも聞いたけれど、シカール領には薬師はたくさんいるけれど、ほとんどが初級ポーションか低級ポーションを作るので精一杯らしい。
 ルグラン領とは違って素材は潤沢にあるけれど、技術を持った人間が少ないらしいのよね。
 だからこそ、ロイクとしても中級ポーションや上級ポーションを作れる私は是が非でもシカール領に連れてきたかったみたい。

「とりあえずは商業ギルドと冒険者ギルドに顔を出して……宿はどうする?」

「宿か……本当は今すぐにでも物件を借りて薬屋を開業したいのだけど、それはムリなのよね?」

「デカい街だから空き家の一軒や二軒はあるだろうけど、すぐに使える保証はないなぁ。長く使うことになるんだから、慎重に判断したほうが良いだろ?」

「……長く使うとは限らないけどね」

「またまた。俺の体はマリーのポーションがないと生きていけないっていうのに」

 ロイクは軽い口調でそう言うけど、これはシカール領に来るまでに何度も聞いた言葉だ。
 道中でケガをしたロイクに私が作った中級ポーションを使わせたところ、古傷までもが回復したのだ。
 中級ポーションは外傷なら骨折や欠損してない部位の修復程度で、古傷のように既に無くなっている部位を修復する力はない。

 だけど、稀にこういうことがあるらしい。ポーション作成者の魔力と、服用者の魔力の相性が抜群だと、普通のポーションよりも効果が発揮されるのよ。
 私とロイクがまさにソレで、ロイクに限定すると私の中級ポーションは上級、下手をしたら幻の特級ポーションまで効力が跳ね上がる。
 それを知ってからのロイクはシカール領の素晴らしさや、私のポーションの素晴らしさを延々と語っていたけれど、正直悪い気はしなかった。

 だって、ペルヴィス家でもルグラン領でも私を求める人はいなかったし、どちらかというビジネスライクな関係な人ばかりだった。
 唯一、ビジネス関係なく仲良くなったのはミシェルだけど、ミシェルは同性だし、男の人にここまで傍に居て欲しいって熱烈にアプローチされたのは初めてだったの!
 最初はポーションのことばっかりだったけど、旅が進むにつれて気配り上手だとか、笑った顔が癒しだとか、個人的な部分にまで言及してくるんだもの。

「……良いから。早く商業ギルドと冒険者ギルドに案内して」

 だからこそ、最近はロイクにこういうことを言われると、顔が赤くなってぶっきらぼうな物言いになってしまう。

「はいはい。まずは商業ギルドだな。中級ポーションを作れる優秀な薬師だって伝えないと。それに、物件の手配も商業ギルドの管轄だからな」

「優秀とか、言わなくてもいいよ」

「いやいや大事大事。シカール領では能力によって待遇が変わるから、出来ることはきちんと出来るって明言しておかないと損をするぞ。それによって、紹介される物件も変わるからな」

「うーん、そうか」

 冒険者は実力至上主義だから、冒険者の多いシカール領では能力が大事ってのは理解できる話かな。
 自分から優秀ですよ、こんなことができますよって言うのは恥ずかしいけど、できるだけ条件のいい物件を借りたいのは本当だし、我慢するしかないか。
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