気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
40 / 140
幼少期

40 マックスの評価(国王視点)

しおりを挟む
 クラウスの息子、マックスは我たちを置いてさっさと部屋に戻ってしまった。
 曰く、「これからは大人の時間、夜を知らない子供な自分はこれで失礼します」とのことだったが、これだけ話せる人間を子供として扱うなど土台無理な話よ。

「クックック、本当に面白かったな、お前の息子は」

「大変失礼いたしました」

「いやいや、よい。確かに拙い点はあったが、あの年ならば上々。というより、満点以上であろう」

「ですね。陛下への受け答え、手土産を用意していた点、公と私の使い分け、どれをとっても貴族学園入学前の年齢とは思えませんでしたな」

「ふむ。我が思うにおそらくマックスは転生者なのだろう」

「「転生者?」」

「ふむ、其方らが知らんのも無理はないな。王家に伝わることで、この世界にはこことは違った世界の記憶を持って生まれるものがいるらしいのだ」

「聞いたことがございませんな」

「私も寡聞にして」

 宰相とクラウスがそう答えるが、そもそも自分に前世の記憶があるなどと言い出しても奇異の眼で見られるだけ、誰だって隠すだろうよ。

「5代前の国王がそうだったらしく、手記を残して居ったよ。前世ではただの勤め人だったそうだが、気づいたら国王教育を受けていて大変だったと」

「5代前というと、貴族学園の設立者ですな」

「うむ、学園という制度もここではない世界で実際に経験したものを下地にしたそうだ」

「なるほど」

「ん、どうした? クラウス」

 宰相は我の説明に納得しているが、クラウスの方は何やら考え込んでしまっている。

「……陛下。私は、マックスにどう向き合えばよいのでしょう?」

「ふむ、我も転生者を見たのは初めてだが、何も特別なことをする必要はあるまい。良いことをしたら褒め、悪いことをしたら叱る。正しい道を進めるように尽力し、悪い道に進もうとすれば正せば良いだけよ」

「……そのようなことで良いのですか?」

「なに、前世の記憶があるといっても普通の子供と変わらんよ。……ま、このような菓子を手土産にしたり、ダンジョンを攻略したりはするだろうがな」

 確かに今以外に生きた記憶があれば、他の人間よりもあらゆる点で有利なことには違いはあるまい。
 だが、世界が違えばルールも違う……決して有利なだけでは終わらんのは先祖の手記でわかっている。

「確かに、マックスは年の割に優れているとは思っていたのです」

「別に転生者だから優れているわけではなかろう。優れているのはマックスが努力した証だ。それは褒めてやらねばならんだろう」

 そう、転生して記憶を保持しているからと言って何の努力もなしに、なし得ることなど何一つないのだ。
 体の動かし方、知識の吸収、ルールの定義、覚えることや確かめることは山のようにあり、それは記憶を持たないその他の子供と何ら変わりはない。

「……そう……ですな。確かにここ以外の記憶を持っているからと言って、マックスが努力しなかったわけではありません。それは、父親である私が確かに確認しています」

「うむ、努力も必要なら、試行錯誤も必要。いくら前世の記憶があろうと、人間として破綻しておれば人は付いてこんし、法律や暗黙の了解など学ぶことはいくらでもあろう」

「ですね。確かに少し特別に考えすぎていたのかもしれません。私はマックスがゲルハルディ伯爵を名乗ってもおかしくないように、きちんと教育することにしましょう」

「うむ。ま、今の時点でもそれなりに見どころがあるがな」

「そうですか?」

 クラウスが不思議そうに見てくるが、先ほどまでの会話でもこちらを不快にさせないようにしようという気づかいは感じられた。

「うむ。マックスはな、我が国王であることや、我の容姿について、特に褒めることはせなんだ。褒めたのは酒のコレクターだということくらいか?」

「確かにそうです、それが?」

「国王であることは褒めることではなかろう……ま、血筋を褒めてくる輩は多いのが現実だがな。それに、皆が褒める我の容姿も我自身は特に気遣っているわけではない」

 成りあがった者や血筋以外に何も持たないものほど、遺伝で受け継いだものを褒めたがる。
 だが、努力して自分の力で手に入れたものを褒められた方が人はうれしいものだ。

「確かにそうですな。私も宰相という地位についていますが、それなりに努力してなったもの。それを父親が宰相だったから、などと言われれば業腹ものです」

「うむ、父を尊敬する気持ちはあれど、父の功績のおかげでそうなっていると言われるのは複雑なものだ。その辺の機微を分かっていて、あえて褒めなかったのであろう」

「……そこまで、考えていますかね?」

「考えておるか、おらんかは本人にしかわからんことよ。嘘もつけるしな。重要なのは国王である我の不興を買わなかったということよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...