気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
69 / 140
幼少期

69 フィッシャー商会

しおりを挟む
 ローズマリー嬢がゲルハルディ領へ来てから、一か月以上が経ったけど、ようやくエルメライヒ公爵領へと帰って行ったよ。
 クルトとのあれやこれやがあった後は、特に問題も起こさず、行けるところには行って、行けないところには素直に従っていた。
 こんな簡単な交流でラスボス悪役令嬢がまともな令嬢になるとは思わないが、ローズマリー嬢はラスボス悪役令嬢とは思えないほど理性的だったな。

 と、ローズマリー嬢のことはこれ以上考えてもしょうがないからいいか。
 問題はローズマリー嬢の滞在途中から、レナの様子がおかしくなっていった点だ。
 ローズマリー嬢が滞在中はいつものように二人きりで過ごすということが少なくなっていたから、そのせいかとも思ったが、なにやら考え込むことが増えていったんだよな。

「レナ、何か悩みであるのか?」

「マックス様……悩みというか……考えていることが」

「考えている? レナが何を考えて悩んでいるのかはわからないけど、俺でよかったら相談してほしいな」

「マックス様……ええと……」

「マックス様、お2人で良い雰囲気を作っているところ申し訳ありませんが、報告が」

「……ヨーゼフ、本当に悪いぞ」

 マジでな! マジでいい雰囲気だったのに、執事のヨーゼフが割って入ったことでそんな空気は雲散霧消したよ。

「申し訳ありません。空気を読んでいる暇もないくらいの重大事が起きましたので」

「はぁ……で、何が起きた?」

「アンドレ商会がフィッシャー商会のお嬢様をお連れになったのです」

「? トーマス叔父さんが? あ、それともユリア叔母さんか? フィッシャー商会ってゲルハルディ領にある王都向けの商会だろ?」

「お連れになったのはトーマス様です。フィッシャー商会に関してはマックス様の仰る通りで」

 フィッシャー商会は俺にとっても、ゲーム内のマックスにとっても関係の深い商会だ。
 なぜなら、ゲームではレナと同じサブヒロインの1人であるアイリーン・フィッシャーの生家だからだ。
 この世界に転生して、サブヒロインを救うと決めた俺だが、正直に言えばアイリーン・フィッシャーは既に救っていると思っている。

 フィッシャー商会は王都に出たマックスとゲルハルディをつなぐ商会で、マックスからローズマリー、そしてゲーム内の主人公と親交を深めていく。
 マックスとローズマリーが婚約破棄されゲルハルディ領に向かった後も、フィッシャー商会の跡取り娘のアイリーンは主人公サイドのサブヒロインとして活躍するってわけだ。

 でもさ、そもそも現実ではマックスはゲルハルディ領に残ったわけだし、フィッシャー商会がエルメライヒ公爵家と繋がりを持つことはない。
 しかも、主人公もエルメライヒ公爵家にはいなくて、ミネッティ伯爵家にいる……となれば、アイリーン・フィッシャーが主人公とつながることはない。
 と、思ってたんだけど、こっちに来るか? うーん、話を聞いてみないと思惑がわからないな。

「ヨーゼフ、トーマス叔父さんから事情は聴いてるか?」

「いいえ、トーマス様も急に商会の方に押しかけられたようで、困惑されていました」

「はぁ……トーマス叔父さんも苦労性だな。とはいえ、最近ではアポなし突撃が流行っているのか?」

「そのような事実はございませんが……いかがいたしますか?」

「会うしかないだろうな。ま、釘は刺しておくから、安心しておけ。……レナ、どうやら仕事が入ってしまったようだ」

「大丈夫です、マックス様」

 はあ、レナと別れがたい……いや、本当に。
 ローズマリー嬢が居た時には本当に2人きりになることはなくて、ようやく……本当にようやく2人きりになれたところだったというのに。

「ヨーゼフ、まずはトーマス叔父さんを執務室に通してくれ。フィッシャー商会に関しては騎士を護衛という名の監視につけて応接室に待たせておくように」

「かしこまりました」

 まずは事情をトーマス叔父さんから聞かないと始まらないからな。
 執務室にいた家令にはフィッシャー商会に関する調査書をまとめるように指示して、トーマス叔父さんを待つ。
 この執務室は次期領主専用に作られたもので、母上が使っている執務室とは別なのだが、ここにもそれ相応の資料がそろっている。
 領内の商会に関してはもちろん、農家や露店に関しても資料を集めているから、フィッシャー商会に関しても通り一遍の調査書はそろっているはずだ。

「マックス坊ちゃん、今日は急な訪問になってしまい申し訳ありません」

 部屋に入ってきたトーマス叔父さんは謝罪から入ったが、おそらく急な訪問になったのはトーマス叔父さんのせいではないだろう。

「大丈夫だよ。何か事情があるんでしょ?」

 とりあえず、トーマス叔父さんを落ち着かせて話を聞かないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...