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幼少期
68 お嬢様とバルディ男爵令嬢のお茶会(侍女視点)
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私の名前はロッテ・フォン・ヴァーグ。ヴァーグ子爵家の次女で、現在はローズマリーお嬢様の専属侍女を仰せつかっております。
ヴァーグ家は代々王家にお仕えする家系で、4代前の王弟殿下が臣籍降下してエルメライヒ公爵家を創設したさいにお供として一緒に市井におりました。
当時のエルメライヒ公爵は領地の一部を任せて伯爵へと昇爵すると言ってくださったのですが、書類仕事ならともかく領地を治めるなど不可能なので僭越ながら辞退させていただいたそうです。
当時の当主であった曾祖父様は家族に対して昇爵を断ってすまないと言っていたそうですが、苦労が増えるだけなので断っていただいてよかったというのが正直な感想ですね。
私がお仕えするローズマリーお嬢様は公爵令嬢でありながら、下の身分の者にも気を使えるとても素晴らしいお方なのですが、やはりまだまだ子供ですので感情の起伏が激しいのです。
こちらの諫言をきちんと聞いてくださるときもあれば、今回のゲルハルディ領への来訪のように全く聞き入れてくださらないこともあり、新参の侍女は我儘だと憤っている子もいます。
私にとってはお嬢様が我儘を言う姿もかわいいところなので、全く気持ちがわかりませんがこのまま成長されればお嬢様自身が困るということもわかっています。
ですが、初めてお会いしたゲルハルディ伯爵令息がなんと、爵位が上のお嬢様に対して冷静に諫言なさってくださったのです。
正直に申せば、ゲルハルディ伯爵令息には何のメリットもないことで、お嬢様に対してそこまでしてもらえるとは思っていなかったので驚きました。
本人にお礼を言えば、ローズマリーお嬢様が傍若無人になると自分にもデメリットがあるから、と言っていましたが、何のことなのでしょう?
「ねえレナ、レナとマックスは婚約しているのでしょう? どちらから告白したの?」
「ええと……マックス様からです」
「マックスが? 確かに甘々な雰囲気は出していたけれど、想像がつかないわね」
私の目の前ではローズマリーお嬢様と、ゲルハルディ伯爵令息の婚約者であるバルディ男爵令嬢がお茶をしています。
お嬢様の興味は2人のなれそめのようですが、貴族同士の婚約ですのにゲルハルディ伯爵令息から告白したのですね。
「ローズマリー様は知っているでしょうから、お話ししますけれどミネッティ伯爵令嬢に無礼なことをされたので……」
「ああ、聞いているわ。婚約の打診に向かったマックスに対して酷いことを言ったって。……でも、それがレナとの婚約に関係あるの?」
「……大人たちの思惑に振り回されるのは勘弁って言っていましたよ」
バルディ男爵令嬢の様子が少し変わりましたが、何かローズマリーお嬢様には言えない事情があるのでしょうか?
大人たちの思惑……ローズマリーお嬢様には話せないことと合わせると派閥に関することでしょうかね。
ローズマリーお嬢様はあまり気にしていませんが、エルメライヒ公爵家は王家派でゲルハルディ伯爵家は国王派ですから、話せないこともあるのでしょう。
「ふーん、でもレナが婚約者になってマックスもよかったんじゃない? 私もあったことはないけれどミネッティ伯爵令嬢は評判が悪いし」
「そうなのですっ! あの時もマックス様に対して無礼な! ……そう、本当に無礼なことを言ったのですよ!」
「レナが声を荒げるなんてよっぽどだったのね」
「……でも、私にも心配はあるのです」
「そうなの?」
「はい、本当に私がマックス様のお隣に立っていて良いのかと……」
「私の眼から見てもお似合いだし、2人の婚約は国王様も認めているのでしょう?」
「そうなのですが、マックス様はとにかくいろいろとなさっているので。……領主夫人としての教育は順調です。ですが、商売のことや戦闘などでは私は役に立たないでしょう」
そういえば、ゲルハルディ伯爵令息はダンジョンを攻略したという話でしたね。
商売……はわかりませんが、次期伯爵ともなれば領内の発展のために様々な分野に精通していてもおかしくはありません。
「ん~、ねえ、ロッテ。レナが困っているようだけど、どうにかならない?」
「僭越ながら、バルディ男爵令嬢様がどうしようもないのなら、第二夫人や協力者を募るしかないかと」
「第二夫人? レナ以外に誰かを娶るということ?」
「現在の国王陛下には王妃殿下しかいませんが、先代やその前は側妃を娶るのが普通でした。貴族もそれに倣って、第二夫人、第三夫人を娶る方も多かったのです」
「ふ~ん。でもそれって不誠実じゃない?」
「価値観の違いですね。貴族は家を存続させるのが大正義。子供を作るためにも、足りない手を補うためにも一夫一妻ではなく多夫多妻で血をつなげるのが昔の価値観です」
まあ、お嬢様のように生まれた時から一夫一妻が浸透していたら、この価値観に納得がいかないのは当然でしょうね。
公爵様も奥様一筋で、第二夫人を娶ろうなどとは考えたことすらなかったでしょうし。
「……第二夫人」
「バルディ男爵令嬢様がどのような判断をするのかはわかりませんが、ゲルハルディ伯爵令息様とよくよく話し合うのがよろしいかと」
「はい。ヴァーグ子爵令嬢様、ご助言ありがとうございます」
「む~、マックスはレナ以外は娶らないと思うけどね」
お嬢様はまだ納得いっていないのか、むくれていますけれど、それを決めるのもゲルハルディ伯爵令息ですからね。
婚約者同士、禍根のないようによくよく話し合うしかないでしょう。
ヴァーグ家は代々王家にお仕えする家系で、4代前の王弟殿下が臣籍降下してエルメライヒ公爵家を創設したさいにお供として一緒に市井におりました。
当時のエルメライヒ公爵は領地の一部を任せて伯爵へと昇爵すると言ってくださったのですが、書類仕事ならともかく領地を治めるなど不可能なので僭越ながら辞退させていただいたそうです。
当時の当主であった曾祖父様は家族に対して昇爵を断ってすまないと言っていたそうですが、苦労が増えるだけなので断っていただいてよかったというのが正直な感想ですね。
私がお仕えするローズマリーお嬢様は公爵令嬢でありながら、下の身分の者にも気を使えるとても素晴らしいお方なのですが、やはりまだまだ子供ですので感情の起伏が激しいのです。
こちらの諫言をきちんと聞いてくださるときもあれば、今回のゲルハルディ領への来訪のように全く聞き入れてくださらないこともあり、新参の侍女は我儘だと憤っている子もいます。
私にとってはお嬢様が我儘を言う姿もかわいいところなので、全く気持ちがわかりませんがこのまま成長されればお嬢様自身が困るということもわかっています。
ですが、初めてお会いしたゲルハルディ伯爵令息がなんと、爵位が上のお嬢様に対して冷静に諫言なさってくださったのです。
正直に申せば、ゲルハルディ伯爵令息には何のメリットもないことで、お嬢様に対してそこまでしてもらえるとは思っていなかったので驚きました。
本人にお礼を言えば、ローズマリーお嬢様が傍若無人になると自分にもデメリットがあるから、と言っていましたが、何のことなのでしょう?
「ねえレナ、レナとマックスは婚約しているのでしょう? どちらから告白したの?」
「ええと……マックス様からです」
「マックスが? 確かに甘々な雰囲気は出していたけれど、想像がつかないわね」
私の目の前ではローズマリーお嬢様と、ゲルハルディ伯爵令息の婚約者であるバルディ男爵令嬢がお茶をしています。
お嬢様の興味は2人のなれそめのようですが、貴族同士の婚約ですのにゲルハルディ伯爵令息から告白したのですね。
「ローズマリー様は知っているでしょうから、お話ししますけれどミネッティ伯爵令嬢に無礼なことをされたので……」
「ああ、聞いているわ。婚約の打診に向かったマックスに対して酷いことを言ったって。……でも、それがレナとの婚約に関係あるの?」
「……大人たちの思惑に振り回されるのは勘弁って言っていましたよ」
バルディ男爵令嬢の様子が少し変わりましたが、何かローズマリーお嬢様には言えない事情があるのでしょうか?
大人たちの思惑……ローズマリーお嬢様には話せないことと合わせると派閥に関することでしょうかね。
ローズマリーお嬢様はあまり気にしていませんが、エルメライヒ公爵家は王家派でゲルハルディ伯爵家は国王派ですから、話せないこともあるのでしょう。
「ふーん、でもレナが婚約者になってマックスもよかったんじゃない? 私もあったことはないけれどミネッティ伯爵令嬢は評判が悪いし」
「そうなのですっ! あの時もマックス様に対して無礼な! ……そう、本当に無礼なことを言ったのですよ!」
「レナが声を荒げるなんてよっぽどだったのね」
「……でも、私にも心配はあるのです」
「そうなの?」
「はい、本当に私がマックス様のお隣に立っていて良いのかと……」
「私の眼から見てもお似合いだし、2人の婚約は国王様も認めているのでしょう?」
「そうなのですが、マックス様はとにかくいろいろとなさっているので。……領主夫人としての教育は順調です。ですが、商売のことや戦闘などでは私は役に立たないでしょう」
そういえば、ゲルハルディ伯爵令息はダンジョンを攻略したという話でしたね。
商売……はわかりませんが、次期伯爵ともなれば領内の発展のために様々な分野に精通していてもおかしくはありません。
「ん~、ねえ、ロッテ。レナが困っているようだけど、どうにかならない?」
「僭越ながら、バルディ男爵令嬢様がどうしようもないのなら、第二夫人や協力者を募るしかないかと」
「第二夫人? レナ以外に誰かを娶るということ?」
「現在の国王陛下には王妃殿下しかいませんが、先代やその前は側妃を娶るのが普通でした。貴族もそれに倣って、第二夫人、第三夫人を娶る方も多かったのです」
「ふ~ん。でもそれって不誠実じゃない?」
「価値観の違いですね。貴族は家を存続させるのが大正義。子供を作るためにも、足りない手を補うためにも一夫一妻ではなく多夫多妻で血をつなげるのが昔の価値観です」
まあ、お嬢様のように生まれた時から一夫一妻が浸透していたら、この価値観に納得がいかないのは当然でしょうね。
公爵様も奥様一筋で、第二夫人を娶ろうなどとは考えたことすらなかったでしょうし。
「……第二夫人」
「バルディ男爵令嬢様がどのような判断をするのかはわかりませんが、ゲルハルディ伯爵令息様とよくよく話し合うのがよろしいかと」
「はい。ヴァーグ子爵令嬢様、ご助言ありがとうございます」
「む~、マックスはレナ以外は娶らないと思うけどね」
お嬢様はまだ納得いっていないのか、むくれていますけれど、それを決めるのもゲルハルディ伯爵令息ですからね。
婚約者同士、禍根のないようによくよく話し合うしかないでしょう。
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