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幼少期
88 王都からの視察とレナとの話し合い
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「本当に今回の戦果はゲルハルディ伯爵令息が?」
「私だけではありません。バルディ領の勇敢な騎士、兵士、そして義勇兵のおかげです」
「ですが、指揮を執っていたのはゲルハルディ伯爵令息……ですよね?」
「ええ、ええ、おっしゃる通りです。私は陸上で領民の支えとなっていましたので、海上戦はマックス様の戦果です」
王都から視察がやってきたのだが、めちゃくちゃ疑われている。
ま、8歳の子供が他領の騎士団を指揮して他国からの侵略を防いだと言われても、普通の感覚の人間ならまず信じないわな。
少なくとも、俺はそんなこと聞かされても、まず疑ってかかるわ。
だから、俺としてはどれだけ疑われても構わないのだが、疑われるたびにアントンやクルトをはじめとしてバルディ領やゲルハルディ領の人間の空気が悪くなるんだよなぁ。
彼らからしたら、その目で活躍を見ているし、なにより自分たちを救ってくれた恩人を疑われるのは気分が悪いんだろう。
「こちらのことはどれだけ疑ってもらっても構いませんが、陛下がお待ちなのでは?」
「む……それはそうなのですが、やはりにわかには信じがたく……」
この視察は陛下が直接指揮して派遣しているので、即座の調査、即座の報告が求められている。
だからこそ、俺もアントンも積極的に協力しているし、なんだったら第三国である交易国の人間も調査には積極的だ。
「こちらとしては、どれだけ調べて頂いても構いませんので、心ゆくまで調査していただきましょう」
「…………そうさせていただきましょう」
視察にやってきた王都の文官は護衛の騎士を伴いつつ、今度は領民に聞き込みをするようだ。
「あれが王都の人間ですか……感じ悪いですね」
「そうでしょう、そうでしょう。私も王都に行かなければならない時があるんですけど、憂鬱なんですよね」
「クルトもアントンも、あまり言ってやるな。向こうも仕事なんだし、8歳の子供が戦争で勝ったと聞いて安易に信じる方が怖いだろう」
「ですが、マックス様が戦果を挙げられたのは事実です!」
「そうですよ。我が領民の誰に聞いてもそう答えているというのに、信じようともしないとは!」
2人は憤っているけど、今回やってきた文官は王都の貴族の中では話の通じるほうだ。
陛下が派遣したのだから当然だが、国王派の人間だし、これが王家派の貴族だったらまともに調査もしなかっただろうしな。
「それよりも、レナがどこにいるかわかるか?」
「レナでしたら、執務室で家内の手伝いをしていますよ」
ああ、そういえばアントンの奥さんの手伝いをすると言っていたか。
「マックス様、護衛はいりますか?」
「いや、レナと二人きりで話したいからいい。屋敷の外には出ないから、出入り口だけ固めておいてくれ」
「はっ!」
本当は次期領主としては、護衛を離すべきではないんだが、王都から来た人間も街に出たし問題ないだろう。
「レナ、話があるんだが、少しいいかい?」
「マックス様……伯母様、よろしいですか?」
「ええ、レナのおかげで助かりましたし、少し休憩にしましょう」
「ありがとうございます……レナ、中庭で話そうか」
「はい」
レナと連れ立って中庭に出たが、そこかしこから視線を感じる……ま、護衛はいらないと言っても、流石に人の目なしとはいかないか。
「レナ……俺はおそらく今回の騒動の件で爵位授与が早まる」
「おめでとうございます!」
「あんまり、おめでたくもないんだよなぁ。……ゲルハルディ伯爵を受け継ぐはずだったが、今回のことでゲルハルディ辺境伯となるかもしれない」
「辺境伯?」
「王国の危機に際し、外敵を退けたものを辺境伯とする」
「貴族法にある一文ですね」
「俺の魔法で無力化が簡単だったから気にもしなかったが、今回の一件はこれにあたるかもしれないとアントンに言われた」
「陞爵するのなら、やはりおめでたいのでは?」
「それだけで考えるとな。……レナは貴族の婚姻に関する条件は覚えているか?」
「婚姻者の上下が望ましい……ですよね?」
「そうだ、伯爵位なら同格の子爵、1つ下の男爵、士爵、1つ上の辺境伯、侯爵だな。……で、辺境伯となると、男爵令嬢であるレナとは望ましくないとされてしまうんだ」
辺境伯は同格の侯爵、1つ下の伯爵、子爵、1つ上の公爵、王家が対象となるからだな。
「……あっ!?」
「だから、陞爵すると考えてこれからを考えなければならない。1つ目はレナと一度婚約解消し、バルディ家が伯爵位になってから再婚約することだ」
「順当ですね」
「だが、この方法は王家や公爵などから横やりが入りやすい」
「……辺境に嫁ぐ王家や中央貴族が居るのですか?」
「具体的には第三王女やローズマリー嬢だな。第三王女は第一王女、第二王女と違って婚約者がいない。ローズマリー嬢は辺境伯の誰かに嫁がせるとエルメライヒ公爵が公言しているからな」
「……」
「これを回避するためには、俺が辺境伯になる前にレナと結婚するしかない」
「……」
「レナ……こんなことで、こういうことを言うのは最低だとわかっているが、俺と結婚してくれるか?」
本当に、こんな状況になったから結婚してくれだなんて、最低だとわかっているが、それでも俺がレナと結婚するにはこのタイミングしかないんだ。
「……マックス様、私はマックス様の婚約者なんですよ。……そんなの、もちろんです以外の答えはないですよ」
「……いいのか?」
「逆になんでだめだと思っているのかがわかりませんけど。……婚約者なのですから、いずれは結婚するでしょう? それが少し早まっただけです」
あー、なんというか、うだうだ考えていた俺がすごく意気地なしに思えるな。
「私だけではありません。バルディ領の勇敢な騎士、兵士、そして義勇兵のおかげです」
「ですが、指揮を執っていたのはゲルハルディ伯爵令息……ですよね?」
「ええ、ええ、おっしゃる通りです。私は陸上で領民の支えとなっていましたので、海上戦はマックス様の戦果です」
王都から視察がやってきたのだが、めちゃくちゃ疑われている。
ま、8歳の子供が他領の騎士団を指揮して他国からの侵略を防いだと言われても、普通の感覚の人間ならまず信じないわな。
少なくとも、俺はそんなこと聞かされても、まず疑ってかかるわ。
だから、俺としてはどれだけ疑われても構わないのだが、疑われるたびにアントンやクルトをはじめとしてバルディ領やゲルハルディ領の人間の空気が悪くなるんだよなぁ。
彼らからしたら、その目で活躍を見ているし、なにより自分たちを救ってくれた恩人を疑われるのは気分が悪いんだろう。
「こちらのことはどれだけ疑ってもらっても構いませんが、陛下がお待ちなのでは?」
「む……それはそうなのですが、やはりにわかには信じがたく……」
この視察は陛下が直接指揮して派遣しているので、即座の調査、即座の報告が求められている。
だからこそ、俺もアントンも積極的に協力しているし、なんだったら第三国である交易国の人間も調査には積極的だ。
「こちらとしては、どれだけ調べて頂いても構いませんので、心ゆくまで調査していただきましょう」
「…………そうさせていただきましょう」
視察にやってきた王都の文官は護衛の騎士を伴いつつ、今度は領民に聞き込みをするようだ。
「あれが王都の人間ですか……感じ悪いですね」
「そうでしょう、そうでしょう。私も王都に行かなければならない時があるんですけど、憂鬱なんですよね」
「クルトもアントンも、あまり言ってやるな。向こうも仕事なんだし、8歳の子供が戦争で勝ったと聞いて安易に信じる方が怖いだろう」
「ですが、マックス様が戦果を挙げられたのは事実です!」
「そうですよ。我が領民の誰に聞いてもそう答えているというのに、信じようともしないとは!」
2人は憤っているけど、今回やってきた文官は王都の貴族の中では話の通じるほうだ。
陛下が派遣したのだから当然だが、国王派の人間だし、これが王家派の貴族だったらまともに調査もしなかっただろうしな。
「それよりも、レナがどこにいるかわかるか?」
「レナでしたら、執務室で家内の手伝いをしていますよ」
ああ、そういえばアントンの奥さんの手伝いをすると言っていたか。
「マックス様、護衛はいりますか?」
「いや、レナと二人きりで話したいからいい。屋敷の外には出ないから、出入り口だけ固めておいてくれ」
「はっ!」
本当は次期領主としては、護衛を離すべきではないんだが、王都から来た人間も街に出たし問題ないだろう。
「レナ、話があるんだが、少しいいかい?」
「マックス様……伯母様、よろしいですか?」
「ええ、レナのおかげで助かりましたし、少し休憩にしましょう」
「ありがとうございます……レナ、中庭で話そうか」
「はい」
レナと連れ立って中庭に出たが、そこかしこから視線を感じる……ま、護衛はいらないと言っても、流石に人の目なしとはいかないか。
「レナ……俺はおそらく今回の騒動の件で爵位授与が早まる」
「おめでとうございます!」
「あんまり、おめでたくもないんだよなぁ。……ゲルハルディ伯爵を受け継ぐはずだったが、今回のことでゲルハルディ辺境伯となるかもしれない」
「辺境伯?」
「王国の危機に際し、外敵を退けたものを辺境伯とする」
「貴族法にある一文ですね」
「俺の魔法で無力化が簡単だったから気にもしなかったが、今回の一件はこれにあたるかもしれないとアントンに言われた」
「陞爵するのなら、やはりおめでたいのでは?」
「それだけで考えるとな。……レナは貴族の婚姻に関する条件は覚えているか?」
「婚姻者の上下が望ましい……ですよね?」
「そうだ、伯爵位なら同格の子爵、1つ下の男爵、士爵、1つ上の辺境伯、侯爵だな。……で、辺境伯となると、男爵令嬢であるレナとは望ましくないとされてしまうんだ」
辺境伯は同格の侯爵、1つ下の伯爵、子爵、1つ上の公爵、王家が対象となるからだな。
「……あっ!?」
「だから、陞爵すると考えてこれからを考えなければならない。1つ目はレナと一度婚約解消し、バルディ家が伯爵位になってから再婚約することだ」
「順当ですね」
「だが、この方法は王家や公爵などから横やりが入りやすい」
「……辺境に嫁ぐ王家や中央貴族が居るのですか?」
「具体的には第三王女やローズマリー嬢だな。第三王女は第一王女、第二王女と違って婚約者がいない。ローズマリー嬢は辺境伯の誰かに嫁がせるとエルメライヒ公爵が公言しているからな」
「……」
「これを回避するためには、俺が辺境伯になる前にレナと結婚するしかない」
「……」
「レナ……こんなことで、こういうことを言うのは最低だとわかっているが、俺と結婚してくれるか?」
本当に、こんな状況になったから結婚してくれだなんて、最低だとわかっているが、それでも俺がレナと結婚するにはこのタイミングしかないんだ。
「……マックス様、私はマックス様の婚約者なんですよ。……そんなの、もちろんです以外の答えはないですよ」
「……いいのか?」
「逆になんでだめだと思っているのかがわかりませんけど。……婚約者なのですから、いずれは結婚するでしょう? それが少し早まっただけです」
あー、なんというか、うだうだ考えていた俺がすごく意気地なしに思えるな。
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