気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
115 / 140
閑話

115 マティアス殿下との話し合い

しおりを挟む
「やあやあ、連絡が遅れたようで悪いね」

「いえ、第一王子殿下が来訪してくださるなど光栄なことです」

「ああ、いいよ。そういうのは。私はまだ王位を継いだわけでもないし、ここへは辺境の実態を知るための遊学だからね。もっと気楽に接してくれよ」

「そういうわけにも」

「いいって。ゲルハルディはくしゃ……卿も父上と話すときは気楽にしてるらしいじゃん。私としても支えてくれるだろう辺境伯とは仲良くしたいんだよね」

「……はあ。わかりました。取り繕わせてはもらいますが、口調自体は堅苦しくない程度にしますよ」

「うんうん、それでいい」

 陛下も相当の変人だけど、やっぱり陛下の子供だけに第一王子殿下も変人だな。

「ま、私はそれでいいですけど、妻や妹たちは容赦してくださいよ」

「おおっ、私よりも年下なのに妻がいるとか新鮮だなぁ」

「からかわないでください」

「いやいや、本心だよ。……そうだね、直接的に触れ合うのは領主であるマックスだし、他はいいかな。……あ、父上もゲルハルディ卿のことをクラウスと呼んでいるし、私も君のことはマックスと呼ばせてもらうね」

「いいですよ、殿下」

「ああ、こっちはマティアスで良いよ。いやぁ、父上と母上以外に名前で呼ばれる機会なんてないからなぁ」

 呼べってことか? おいおい、そりゃ新入社員が社長のことを名前で呼び捨てるようなもんだぞ?
 ……はあ、期待してるような目でチラチラ見てくるし。

「わかりましたよ、マティアス殿下」

「殿下もいらないよ」

「王族に対する敬称は必要です。それも次期国王筆頭ともなれば」

「う~ん、それもそうか」

 はあ、到着早々に第一王子……マティアス殿下はやりたい放題だな。
 ちなみにマティアス殿下は1人で来たわけではなく、お付きの護衛やら記録係の文官やらも一緒に来ている。
 護衛は2人だけをゲルハルディ邸、他は騎士団の訓練施設に放り込んで、文官は少ないのでゲルハルディ邸で面倒を見ることになった。
 伯爵から辺境伯になったゲルハルディ家だが、屋敷を改築したわけじゃないから大人数を泊められるだけのキャパシティがないんだ。

「マティアス殿下はしばらく逗留するようですが、見学したい場所などはありますか?」

「ああ、そういうのはこっちで勝手にやるから大丈夫だよ。ゲルハルディ家として見せたくないところがあるなら、文官に伝えといてくれ」

「良いのですか?」

「ああ。取り繕った姿じゃなくて、辺境の実態を知るのが目的の遊学だからね。父上や貴族議会も私が何に興味を持ってどう感じたのかを知りたいんだろうし」

 まあ、それもそうか。これから国を背負っていくマティアス殿下が、何に興味を持ってどう感じたのかというのは中央ならずとも気になるところだ。
 国民に負担をかけるような暴君になるなら国王派である辺境伯たちが教育に乗り出すが、それ以外は割と自由というか国王の裁量に任される部分が多いからな。

「では、1つ注意を。マティアス殿下が訓練に興味がないのなら、騎士団訓練所……というか父上にはあまり近づかないように」

「ゲルハルディ卿かい?」

「領主を引退してから、以前にも増して訓練に身を入れているので不用意に近づくと訓練に巻き込まれますよ」

「それは怖い。北東辺境伯や北西辺境伯では軍事演習に参加させられるって脅されているからね。ここではまったりしたいし、なるべく近づかないようにするよ」

 ゲルハルディ領は海、南辺境伯領は砂漠、西辺境伯領は大河によって敵国と物理的に距離がある。
 それでも南辺境伯領や西辺境伯領は攻め込まれていたわけだが。
 これらと違って、北東辺境伯領や北西辺境伯領は敵国との間に遮るものがないから、戦争が身近なんだよな。

「あとは自由にしてもらって構いませんよ……ああ、バルディ領なんかの友好領に行く場合には声をかけてください」

「うむ、ヴァイセンベルク王国で唯一、交易港のある領だからね。バルディ領には顔を出そうと思ってたんだ。その時には声をかけるよ。ま、しばらくはゲルハルディ領で旅の疲れを落とすけどね」

「では、そのように」

「ああ、そういえば父上から伝言があったな」

「陛下から?」

「少し先の話になるけれど、貴族学園入学の際にはマックスと辺境伯夫人には夫婦であることは隠してほしいとのことだ」

「? 別に言いふらそうとも思ってなかったですけど」

「どうも、貴族名鑑を確認していない貴族が多いようでね。そのあぶり出しに使いたいらしい」

 ヴァイセンベルク王国では毎年のように貴族名鑑が王宮から発行され、各貴族はそれで各貴族家の構成を覚える。
 同派閥ならともかく、他派閥の婚姻事情を知る機会などないから貴族名鑑は大事なんだが……それを確認しない貴族がいる?

「別にこちらは構いませんけど、そんな貴族が本当にいるんですか?」

「にわかには信じがたいけどね。貴族学園にも、次期領主なのに次男というだけで嘲っていたりする人間もいたしねぇ」

 次期領主=嫡男という考え自体は正しいが、病気や怪我、資質などの問題で次男などが継ぐことも普通にあり得るからな。
 確かに普通に考えれば貴族学園に通っている人間が領主……それも陞爵して辺境伯になっているとは思わないし、あぶり出しには使えるか。
 貴族名鑑をきちんと確認すればわかることだが、前世でもそうだったが重要書類などに目を通さず誤魔化す輩はいるからな。

「一応レナ……妻と話し合ってから答えますね」

「うん。返事は父上宛てで良いからさ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す

金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。 「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」 魅了魔法? なんだそれは? その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。 R15は死のシーンがあるための保険です。 独自の異世界の物語です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...