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閑話
115 マティアス殿下との話し合い
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「やあやあ、連絡が遅れたようで悪いね」
「いえ、第一王子殿下が来訪してくださるなど光栄なことです」
「ああ、いいよ。そういうのは。私はまだ王位を継いだわけでもないし、ここへは辺境の実態を知るための遊学だからね。もっと気楽に接してくれよ」
「そういうわけにも」
「いいって。ゲルハルディはくしゃ……卿も父上と話すときは気楽にしてるらしいじゃん。私としても支えてくれるだろう辺境伯とは仲良くしたいんだよね」
「……はあ。わかりました。取り繕わせてはもらいますが、口調自体は堅苦しくない程度にしますよ」
「うんうん、それでいい」
陛下も相当の変人だけど、やっぱり陛下の子供だけに第一王子殿下も変人だな。
「ま、私はそれでいいですけど、妻や妹たちは容赦してくださいよ」
「おおっ、私よりも年下なのに妻がいるとか新鮮だなぁ」
「からかわないでください」
「いやいや、本心だよ。……そうだね、直接的に触れ合うのは領主であるマックスだし、他はいいかな。……あ、父上もゲルハルディ卿のことをクラウスと呼んでいるし、私も君のことはマックスと呼ばせてもらうね」
「いいですよ、殿下」
「ああ、こっちはマティアスで良いよ。いやぁ、父上と母上以外に名前で呼ばれる機会なんてないからなぁ」
呼べってことか? おいおい、そりゃ新入社員が社長のことを名前で呼び捨てるようなもんだぞ?
……はあ、期待してるような目でチラチラ見てくるし。
「わかりましたよ、マティアス殿下」
「殿下もいらないよ」
「王族に対する敬称は必要です。それも次期国王筆頭ともなれば」
「う~ん、それもそうか」
はあ、到着早々に第一王子……マティアス殿下はやりたい放題だな。
ちなみにマティアス殿下は1人で来たわけではなく、お付きの護衛やら記録係の文官やらも一緒に来ている。
護衛は2人だけをゲルハルディ邸、他は騎士団の訓練施設に放り込んで、文官は少ないのでゲルハルディ邸で面倒を見ることになった。
伯爵から辺境伯になったゲルハルディ家だが、屋敷を改築したわけじゃないから大人数を泊められるだけのキャパシティがないんだ。
「マティアス殿下はしばらく逗留するようですが、見学したい場所などはありますか?」
「ああ、そういうのはこっちで勝手にやるから大丈夫だよ。ゲルハルディ家として見せたくないところがあるなら、文官に伝えといてくれ」
「良いのですか?」
「ああ。取り繕った姿じゃなくて、辺境の実態を知るのが目的の遊学だからね。父上や貴族議会も私が何に興味を持ってどう感じたのかを知りたいんだろうし」
まあ、それもそうか。これから国を背負っていくマティアス殿下が、何に興味を持ってどう感じたのかというのは中央ならずとも気になるところだ。
国民に負担をかけるような暴君になるなら国王派である辺境伯たちが教育に乗り出すが、それ以外は割と自由というか国王の裁量に任される部分が多いからな。
「では、1つ注意を。マティアス殿下が訓練に興味がないのなら、騎士団訓練所……というか父上にはあまり近づかないように」
「ゲルハルディ卿かい?」
「領主を引退してから、以前にも増して訓練に身を入れているので不用意に近づくと訓練に巻き込まれますよ」
「それは怖い。北東辺境伯や北西辺境伯では軍事演習に参加させられるって脅されているからね。ここではまったりしたいし、なるべく近づかないようにするよ」
ゲルハルディ領は海、南辺境伯領は砂漠、西辺境伯領は大河によって敵国と物理的に距離がある。
それでも南辺境伯領や西辺境伯領は攻め込まれていたわけだが。
これらと違って、北東辺境伯領や北西辺境伯領は敵国との間に遮るものがないから、戦争が身近なんだよな。
「あとは自由にしてもらって構いませんよ……ああ、バルディ領なんかの友好領に行く場合には声をかけてください」
「うむ、ヴァイセンベルク王国で唯一、交易港のある領だからね。バルディ領には顔を出そうと思ってたんだ。その時には声をかけるよ。ま、しばらくはゲルハルディ領で旅の疲れを落とすけどね」
「では、そのように」
「ああ、そういえば父上から伝言があったな」
「陛下から?」
「少し先の話になるけれど、貴族学園入学の際にはマックスと辺境伯夫人には夫婦であることは隠してほしいとのことだ」
「? 別に言いふらそうとも思ってなかったですけど」
「どうも、貴族名鑑を確認していない貴族が多いようでね。そのあぶり出しに使いたいらしい」
ヴァイセンベルク王国では毎年のように貴族名鑑が王宮から発行され、各貴族はそれで各貴族家の構成を覚える。
同派閥ならともかく、他派閥の婚姻事情を知る機会などないから貴族名鑑は大事なんだが……それを確認しない貴族がいる?
「別にこちらは構いませんけど、そんな貴族が本当にいるんですか?」
「にわかには信じがたいけどね。貴族学園にも、次期領主なのに次男というだけで嘲っていたりする人間もいたしねぇ」
次期領主=嫡男という考え自体は正しいが、病気や怪我、資質などの問題で次男などが継ぐことも普通にあり得るからな。
確かに普通に考えれば貴族学園に通っている人間が領主……それも陞爵して辺境伯になっているとは思わないし、あぶり出しには使えるか。
貴族名鑑をきちんと確認すればわかることだが、前世でもそうだったが重要書類などに目を通さず誤魔化す輩はいるからな。
「一応レナ……妻と話し合ってから答えますね」
「うん。返事は父上宛てで良いからさ」
「いえ、第一王子殿下が来訪してくださるなど光栄なことです」
「ああ、いいよ。そういうのは。私はまだ王位を継いだわけでもないし、ここへは辺境の実態を知るための遊学だからね。もっと気楽に接してくれよ」
「そういうわけにも」
「いいって。ゲルハルディはくしゃ……卿も父上と話すときは気楽にしてるらしいじゃん。私としても支えてくれるだろう辺境伯とは仲良くしたいんだよね」
「……はあ。わかりました。取り繕わせてはもらいますが、口調自体は堅苦しくない程度にしますよ」
「うんうん、それでいい」
陛下も相当の変人だけど、やっぱり陛下の子供だけに第一王子殿下も変人だな。
「ま、私はそれでいいですけど、妻や妹たちは容赦してくださいよ」
「おおっ、私よりも年下なのに妻がいるとか新鮮だなぁ」
「からかわないでください」
「いやいや、本心だよ。……そうだね、直接的に触れ合うのは領主であるマックスだし、他はいいかな。……あ、父上もゲルハルディ卿のことをクラウスと呼んでいるし、私も君のことはマックスと呼ばせてもらうね」
「いいですよ、殿下」
「ああ、こっちはマティアスで良いよ。いやぁ、父上と母上以外に名前で呼ばれる機会なんてないからなぁ」
呼べってことか? おいおい、そりゃ新入社員が社長のことを名前で呼び捨てるようなもんだぞ?
……はあ、期待してるような目でチラチラ見てくるし。
「わかりましたよ、マティアス殿下」
「殿下もいらないよ」
「王族に対する敬称は必要です。それも次期国王筆頭ともなれば」
「う~ん、それもそうか」
はあ、到着早々に第一王子……マティアス殿下はやりたい放題だな。
ちなみにマティアス殿下は1人で来たわけではなく、お付きの護衛やら記録係の文官やらも一緒に来ている。
護衛は2人だけをゲルハルディ邸、他は騎士団の訓練施設に放り込んで、文官は少ないのでゲルハルディ邸で面倒を見ることになった。
伯爵から辺境伯になったゲルハルディ家だが、屋敷を改築したわけじゃないから大人数を泊められるだけのキャパシティがないんだ。
「マティアス殿下はしばらく逗留するようですが、見学したい場所などはありますか?」
「ああ、そういうのはこっちで勝手にやるから大丈夫だよ。ゲルハルディ家として見せたくないところがあるなら、文官に伝えといてくれ」
「良いのですか?」
「ああ。取り繕った姿じゃなくて、辺境の実態を知るのが目的の遊学だからね。父上や貴族議会も私が何に興味を持ってどう感じたのかを知りたいんだろうし」
まあ、それもそうか。これから国を背負っていくマティアス殿下が、何に興味を持ってどう感じたのかというのは中央ならずとも気になるところだ。
国民に負担をかけるような暴君になるなら国王派である辺境伯たちが教育に乗り出すが、それ以外は割と自由というか国王の裁量に任される部分が多いからな。
「では、1つ注意を。マティアス殿下が訓練に興味がないのなら、騎士団訓練所……というか父上にはあまり近づかないように」
「ゲルハルディ卿かい?」
「領主を引退してから、以前にも増して訓練に身を入れているので不用意に近づくと訓練に巻き込まれますよ」
「それは怖い。北東辺境伯や北西辺境伯では軍事演習に参加させられるって脅されているからね。ここではまったりしたいし、なるべく近づかないようにするよ」
ゲルハルディ領は海、南辺境伯領は砂漠、西辺境伯領は大河によって敵国と物理的に距離がある。
それでも南辺境伯領や西辺境伯領は攻め込まれていたわけだが。
これらと違って、北東辺境伯領や北西辺境伯領は敵国との間に遮るものがないから、戦争が身近なんだよな。
「あとは自由にしてもらって構いませんよ……ああ、バルディ領なんかの友好領に行く場合には声をかけてください」
「うむ、ヴァイセンベルク王国で唯一、交易港のある領だからね。バルディ領には顔を出そうと思ってたんだ。その時には声をかけるよ。ま、しばらくはゲルハルディ領で旅の疲れを落とすけどね」
「では、そのように」
「ああ、そういえば父上から伝言があったな」
「陛下から?」
「少し先の話になるけれど、貴族学園入学の際にはマックスと辺境伯夫人には夫婦であることは隠してほしいとのことだ」
「? 別に言いふらそうとも思ってなかったですけど」
「どうも、貴族名鑑を確認していない貴族が多いようでね。そのあぶり出しに使いたいらしい」
ヴァイセンベルク王国では毎年のように貴族名鑑が王宮から発行され、各貴族はそれで各貴族家の構成を覚える。
同派閥ならともかく、他派閥の婚姻事情を知る機会などないから貴族名鑑は大事なんだが……それを確認しない貴族がいる?
「別にこちらは構いませんけど、そんな貴族が本当にいるんですか?」
「にわかには信じがたいけどね。貴族学園にも、次期領主なのに次男というだけで嘲っていたりする人間もいたしねぇ」
次期領主=嫡男という考え自体は正しいが、病気や怪我、資質などの問題で次男などが継ぐことも普通にあり得るからな。
確かに普通に考えれば貴族学園に通っている人間が領主……それも陞爵して辺境伯になっているとは思わないし、あぶり出しには使えるか。
貴族名鑑をきちんと確認すればわかることだが、前世でもそうだったが重要書類などに目を通さず誤魔化す輩はいるからな。
「一応レナ……妻と話し合ってから答えますね」
「うん。返事は父上宛てで良いからさ」
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