勇者パーティーを追放された薬草師

高坂ナツキ

文字の大きさ
4 / 12

04 サラとの出会い(ウィル視点)

しおりを挟む
「ウィル様、こちらです」

 俺の名前はウィル・C・アレン。王国の中でも辺境とされる領の領主をやっている。
 いつものように領主としての仕事をしていると、大工組合長が執務室にやってきて、外から来たお客さんが森に家を建てたいと言ってきたと、伝えてきた。
 辺境というと魔国の対極に位置していて、平和だなんだと言われがちだが、魔族や魔物はいなくとも凶悪な野生生物が多く、騎士でも危険なんだぞ!

 組合長も危険なことを伝えたが、お客さんは一歩も引かないようで、辺境一帯の土地の権利を持っている俺の元に話しが回ってきたということらしい。
 なんでもお客さんは若い女だとかで、その点も組合長は危惧しているらしいが……はあ!? 若い女が!? 森に住む!?
 ありえないだろっ! 森なんて屈強な冒険者や騎士ですら、有事以外は近づきたがらないってのに、若い女!?

「おい、このちんちくりんか? 森に住みたいって言っているのは?」

「はあっ!? 誰よコイツ!?」

 組合長に連れられてやってきた場所には、どう見ても10代前半の少女が座っていた。
 若い女だという話は聞いていたが、森に住むというからには冒険者のように鍛えている女性などを想像していた。
 それが実際に会ってみれば、10代前半にしか見えない少女だったら、驚くのは無理ないだろう。

「ウィル様っ! さすがに失礼ですよ。こちらはサラさん。旅の薬草師だそうです。サラさん、こちらは領主のウィル様です。失礼のないように」

 流石にケンカになるとまずいと思ったのか、双方の立場と名前を知っている組合長が紹介をしてくれた。
 しかし、旅の薬草師? 魔国との戦いが始まってからは薬草師は貴重なはずだが、本当に薬草師なのか?

「組合長、薬草師というのは本当か?」

「商業ギルドにポーションを売り込んだらしいですよ。身分証の職業も薬草師となっていました」

 確認するところは確認しているようだな。しかし、それでも疑わしい。そもそも薬草師は覚えることが多く、冒険者や兵士のように身体能力があれば簡単になれる職業でもない。
 それが子供と言って通じるような少女ならば、簡単に信じることはできない……身分証は公的なものだが、偽造する手段がないというわけでもないしな。

「なんか疑われてる?」

「そりゃ、お嬢ちゃんみたいな子供が薬草師を名乗って、信じろって方が難しいだろ」

「子供だとか、ちんちくりんだとか失礼ね。これでも18歳よ」

「「18!?」」

 組合長も俺と一緒に驚いているところを見ると、年齢までは確認していなかったようだ。
 とはいえ、18……俺の2個下で、弟と同い年? 見えない。

「そりゃ、他の人と比べれば、ちょっと成長が遅いけど、その反応は失礼じゃない?」

 ちょっと? どう見ても10代前半、それも12、3くらいにしか見えないんだが、それで18歳っていうのはちょっとじゃないだろ。
 身長も140あるかないかくらいだし、胸だってぺったんこ。俺がちんちくりんと言ったのは、悪口ではなく事実だ。

「そいつは悪かったな。それで? 森に家を建てたいんだって?」

「ええ。聞けば、森の浅いところは出入り自由なんでしょ? その辺りに家を建てて研究をしたいのよ」

 話を聞けば納得できることだ。森に家を……という話だったから、てっきり奥の危険地帯かと思っていたら、浅いところか。

「たしかに森の浅いところは出入り自由にしているが、研究? 何をするつもりだ?」

「商業ギルドでもそうだったし、あんたも気づいていないようだけど、あの森は薬草の宝庫よ! 薬草師だったら、あの森の薬草を使って作ってみたい薬が山ほどあるわ!」

 俺の疑問に対して、サラとかいう少女は目を輝かせながら答えてくる。……しかし、それほどのものか? 俺も森には幾度となく入っているが、一目で薬草と分かるものなどなかったぞ?

「言っていることの筋は通るが、本当に森に薬草があるのか?」

「ああ、素人には区別がつかないでしょうね。薬草って言っても、森に生えている段階では雑草と変わらないから。商人が売っている薬草は乾燥させてあったり、魔力を込めてあったりするからね」

 確かに俺の知っている薬草はパサパサして乾燥しきったものか、魔力が潤沢に込められてキラキラしているものだ。
 普通に考えれば自生しているものが乾燥しているわけはないし、普通の草と見た目の違いがなければ森で見逃してもおかしくはない……のか?

「で? こっちの事情は話したけど、家は建ててくれるの?」

 俺と組合長がそろって黙り込んでいたから、しびれを切らしたようにサラが詰め寄ってくる。

「事情は分かった。だが、簡単に判断できることではない」

「そもそも、森の中ではなく、街の中ではいけないのかい?」

「行き来が面倒じゃない。それに、薬草畑も作って確実に採れるようにしたいし……」

 俺の判断を後押しするように組合長も森の中ではなく、街の中から通えばと提案するが、サラはその提案を一蹴した。
 組合長としても、大事な組合員を森の中で作業させるのは嫌なのだろう。しかし、サラの言い分ももっともだ。本当に森の中に薬草があるのなら、傍で管理したいと考えるのは当然だろう。

「……条件付きで許可しよう」

「ウィル様!?」

「家を建てる時には護衛に騎士を出すし、森の深部との中間地点に騎士の詰め所も作る」

「で、条件って?」

「俺の弟を治すことだ。優秀な薬草師だという証明が出来なければ、こちらもリスクを負って家の建築を許可する意味がないからな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖獣使い唯一の末裔である私は追放されたので、命の恩人の牧場に尽力します。~お願いですから帰ってきてください?はて?~

雪丸
恋愛
【あらすじ】 聖獣使い唯一の末裔としてキルベキア王国に従事していた主人公”アメリア・オルコット”は、聖獣に関する重大な事実を黙っていた裏切り者として国外追放と婚約破棄を言い渡された。 追放されたアメリアは、キルベキア王国と隣の大国ラルヴァクナ王国の間にある森を彷徨い、一度は死を覚悟した。 そんな中、ブランディという牧場経営者一家に拾われ、人の温かさに触れて、彼らのために尽力することを心の底から誓う。 「もう恋愛はいいや。私はブランディ牧場に骨を埋めるって決めたんだ。」 「羊もふもふ!猫吸いうはうは!楽しい!楽しい!」 「え?この国の王子なんて聞いてないです…。」 命の恩人の牧場に尽力すると決めた、アメリアの第二の人生の行く末はいかに? ◇◇◇ 小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 カクヨムにて先行公開中(敬称略)

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

【完結】義妹に全て奪われた私。だけど公爵様と幸せを掴みます!

朝日みらい
恋愛
リリアナは美貌の義妹イザベラにすべてを奪われて育ち、公爵アルノーとの婚約さえも破棄される。 役立たずとされて嫁がされたのは、冷徹と噂される公爵アルノー。 アルノーは没落した家を立て直し、成功を収めた強者。 新しい生活で孤立を感じたリリアナだが、アルノーの態度に振り回されつつも、少しずつ彼の支えを感じ始め――

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

婚約破棄された宮廷薬師、辺境を救い次期領主様に溺愛される

希羽
恋愛
宮廷薬師のアイリスは、あらゆる料理を薬学と栄養学に基づき、完璧な「薬膳」へと昇華させる類稀なる才能の持ち主。 しかし、その完璧すぎる「効率」は、婚約者である騎士団の副団長オスカーに「君の料理には心がない」と断じられ、公衆の面前で婚約を破棄される原因となってしまう。 全てを失ったアイリスが新たな道として選んだのは、王都から遠く離れた、貧しく厳しい北の辺境領フロスラントだった。そこで彼女を待っていたのは、謎の奇病に苦しむ領民たちと、無骨だが誰よりも民を想う代理領主のレオン。 王都で否定された彼女の知識と論理は、この切実な問題を解決する唯一の鍵となる。領民を救う中で、アイリスは自らの価値を正当に評価してくれるレオンと、固い絆を結んでいく。 だが、ようやく見つけた安住の地に、王都から一通の召喚状が届く。

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

処理中です...