勇者パーティーを追放された薬草師

高坂ナツキ

文字の大きさ
3 / 12

03 パーティーの崩壊(勇者視点)

しおりを挟む
「クソッ!」

 サラが抜けて一週間が経ったけれど、僕たちの依頼達成率はドンドン下がっていっている。
 最初こそ、心機一転で笑顔も増えていたパーティーメンバーだが、昨日の依頼の際には全員がお互いの目すら見られないほどにまでなってしまった。

「今回の依頼の失敗は、マリア! 君の回復が遅いせいじゃないか?」

 僕は依頼の失敗の原因はマリアにあると思っている。だって、マリアが来る前は簡単にこなせていた依頼だったのに、今では失敗しているのだから。
 それに期待していた回復だって遅すぎる! サラがいた時は常に体力は万全で、回復待ちで攻撃できないなんてことはなかった。

「聞き捨てなりませんね。わたくしは聖女として、きちんと回復をしております。そもそも、作戦もなしに突っ込んでいって、敵わなかったら即座に回復しろだなんて無茶です」

「なっ!? これまで僕らはこうやって依頼を達成してきた! それを疑うっていうのか?」

「当たり前でしょう! どこの世界に接敵前に作戦も立てずに突っ込んでいく冒険者がいるのですかっ! しかもタンクのマイクさんはともかく、アタッカーのジョーさんまで魔物の前に立つし!」

「一撃必殺が僕たちパーティーの信条なんだ! それにこれまでは問題なかったんだ!」

「だとしたら、前の回復役の方はさぞや大変だったでしょうね。前衛が二人して、ケガばかりしているのですから……それに、スーザンさん、貴女も魔法をむやみやたらと放ちすぎですわ」

「はぁ!?」

 マリアは僕に的確に言い返せたと思ったのか、責任の矛先をスーザンへと向けてきた。

「魔力量が少ない癖に、効果のない魔法や無駄に高威力な魔法を使っているせいで、戦闘の後半は立ち尽くしていたじゃないですか」

「なっ! 魔女は先制の一撃を与えるのが役目よ! 私がいなかったら、もっと被害は出ていたわ!」

「これまでも、そうだったのですか? 最初の一撃を放った後は棒立ちに?」

「……これまでは、MPポーションがあったから」

 スーザンの言っていることは正しい。これまでは、潤沢なMPポーションがあったから、スーザンは高威力の魔法を放ち続けられていたんだ。

「そもそも、マイク! マリアは君が連れてきたんだろう? その時の言葉は覚えているかい?」

「はあっ!?」

「マイク、君はサラの代わりになる人物を探してきた、そう言ったんだよ? なのに、ふたを開けてみれば、回復は遅いわ、僕たちの戦力は下がるわ」

「おいおい、待てよ。サラの追放には全員が賛成していたじゃねえか! 金食い虫のくせに役立たずだってよ」

「確かにサラには不満がたまっていたよ。だけどね、回復もろくにできない回復役を連れてこられても困るんだよ。……サラはお金がかかっても回復だけはキッチリやっていたからね」

 そう。僕たちの共通認識として、薬草師であるサラは役目を全うするためと言って、パーティー資金の大部分を使っていた。
 それに関して不満は持っていたが、回復役としてのサラには文句はなかった。戦闘中に回復が切れることはなく、スーザンも万全の状態で魔法が使えていたからね。

「マリアの回復が、あの役立たずに劣るって言いたいのか!?」

「事実そうだろう? 僕もマイクも回復のために後ろに下がって、貴重な攻撃の機会を失っている」

 聖女であるマリアの回復は至近距離でなければかけられないらしく、回復するためには後方に下がる必要がある。
 その点、サラの回復はポーションだったから、戦いながらでも回復できたし、ポーションが無くなったら、サラ自身が補充に動いていた。

「はあ。勇者パーティーだというから、期待していたのですが、わたくしの居場所はここにはなさそうですね」

「マ、マリア!」

「まともに攻撃もできない勇者に、まともに魔法も使えない魔女のお世話なんて、ごめんですわ。急ですが、本日限りでこのパーティーから抜けさせていただきますわ」

「なっ! そんな自分勝手な!」

「そうよ! 聖女だっていうなら、最後まで勇者の役に立ちなさいよ!」

 身勝手なマリアに対して僕とスーザンが正当な抗議をするも、マリアはそれ以上は何も言わずに去っていった。
 マイクもマリアを追いかけていってしまい、パーティー用にとっていた宿の部屋に残ったのは僕とスーザンだけ。
 どうしてこうなってしまったんだ。このままじゃ、勇者として魔王を倒すなんて、とてもじゃないが出来るわけがない。

 とはいえ、酒場でサラに追放を宣言していたのは多くの冒険者が見ていて、新しい仲間を見つけるのも簡単じゃない。
 何がいけなかったんだ? マイクを信じてマリアをパーティーに入れたこと? それともサラを追放したこと?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

聖獣使い唯一の末裔である私は追放されたので、命の恩人の牧場に尽力します。~お願いですから帰ってきてください?はて?~

雪丸
恋愛
【あらすじ】 聖獣使い唯一の末裔としてキルベキア王国に従事していた主人公”アメリア・オルコット”は、聖獣に関する重大な事実を黙っていた裏切り者として国外追放と婚約破棄を言い渡された。 追放されたアメリアは、キルベキア王国と隣の大国ラルヴァクナ王国の間にある森を彷徨い、一度は死を覚悟した。 そんな中、ブランディという牧場経営者一家に拾われ、人の温かさに触れて、彼らのために尽力することを心の底から誓う。 「もう恋愛はいいや。私はブランディ牧場に骨を埋めるって決めたんだ。」 「羊もふもふ!猫吸いうはうは!楽しい!楽しい!」 「え?この国の王子なんて聞いてないです…。」 命の恩人の牧場に尽力すると決めた、アメリアの第二の人生の行く末はいかに? ◇◇◇ 小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 カクヨムにて先行公開中(敬称略)

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!

aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。 そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。 それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。 淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。 古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。 知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。 これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

処理中です...