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14 忘れた記憶
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学園を卒業する日が近づいてくる中、私は一人、悩んでいることがあります。
それは、婚約者がいないということです。
第一王子と婚約を白紙にできたことは、とても!いいことなのですが、そのことを内々で処理してしまったがために、そこまで広まっていないのですよね。
それに加えて、お父様もあまり乗り気ではないようなので、家でも話題にすることができません。このままでは、行き遅れになってしまいます。
それに、第二王子殿下の婚約者の方が私に代わって王妃になるとは思うのですが、噂を一度も聞かないのですよね。以前、王妃様に聞いても答えてくれませんでしたし…
私が押し付けたという形になるので、たとえ誰であろうとも支えてあげたいとは思っているのですが、一体誰なんでしょう?
今度、第二王子殿下に会った時に聞いてみましょうか。
「お前、クリスに直接聞くとかいうなよ」
「キャッ、お、お兄様!部屋に入るときにノックぐらいしてください!」
「したが、返事がなかったぞ」
「返事がされたら入ってきてください!返事がないのに入ったらしてないのと一緒です!」
「まあそう言うなよ。お前の疑問に答えに来てやったんだからな」
「疑問って、どうして私が考えていたことを!」
「入ってきたときに口に出してたぞ」
そんな、口に出して言っていただなんて。しかも、それをお兄様に聞かれていただなんて。
「まあ、気にするな。それよりもクリスに直接聞くことはやめろよ」
「どうしてですか?」
「はぁ、父上も母上もお前には言わないようにしているが、クリスには子供の頃から好きな人がいるんだよ」
「そうだったんですか!それで、どなたなのですか?」
「ハァ~、まあいい、お前に期待はしていなかった」
「なっ、それはどう言う意味ですか!」
「お前も薄々気づいているだろう、フィー。お前の夢の人物を。二人分のお茶会の準備をして、お前を一人にするやつなんて、この国には一人しかいない」
「……」
「そして、その会場は王城だ。そこでお前より年下の人物は一人しかいない。もう俺が言わなくてもわかるな?」
「は…い…」
夢で会った男の子は第二王子殿下?
「…クリ、ス様」
「やっと名前を呼んだな」
『僕、頑張る!だから、フィーア姉様。僕が王になった時には僕の隣で、僕を支えてくれませんか?』夢の中で途切れ途切れになっていた言葉を思い出す。
あれはクリス様に言ってもらった言葉だったんだ。
「でも、どうして私は…」
「そのことはいい。ただ胸糞悪い話になるだけだ。今は忘れておけ。それと、このことは父上や母上には言うなよ。二人はまだ王族に対して怒っているからな」
「はぁ、わかりました」
どうして私の周りの人は私に全部教えてくれないのでしょうか?そんなに私は信頼がないのでしょうか?
「そんなことはないさ。ただ、お前に心配をかけたくないだけだよ」
「私はそんなにわかりやすい顔をしていますか?」
「私は信頼されていないのか考えている顔をしていたぞ」
「どんな顔なんですか、それは…」
「父上も母上も、もう義務感でお前の婚約者を決めたくないんだよ。クリスがフィーのことを好きだと知ったら、フィーは王妃になるために、そのまま婚約するんじゃないかと心配だったんだよ」
「それは…」
「フィーは今まですごく頑張ってきた。だから、もうわがままを言っていいんだよ。好きな人ができて、その人と結婚していいんだ。この家は俺が継ぐから、だから、フィーはもう家柄を気にする必要はないんだよ」
そう言われても、私は王妃になるために過ごしてきました。クリス様が私を望んでいるのなら、この国のために私が婚約するのが一番いい結果になるのではないでしょうか?
「それでも、私は…」
「王妃になりたいか?王妃になって、お前は何がしたい?」
「何が、したい…私は、この国の民のために…」
「そこにフィーの幸せは?」
「私の…幸せ」
「悪い、一気に言いすぎたな。ただこれだけは言わせてもらう。俺もだが、父上も母上も、もうお前の幸せになるようにしか考えていない。この国よりも、お前が幸せになることを望んでいる。それだけは覚えておけ」
私は今まで自分を犠牲にしてでもこの国をよくしようと考えてきました。たとえ、相手が第一王子だとしても、それだけは変わらないでいようと。だけど、私の幸せはそこにあったのでしょうか?それだけはないと言えます。
お兄様の言葉を聞いてからは、今まで考えたことのない内容ばかりで考えがまとまらない。婚約相手もお父様が決めた方だと思っていました。私が好きな人…
この国のことを思っている人、相手を尊重できる人、気遣いができて、話していて楽しくなる人…
『フィーア姉様』
そのような人物は一人しか思いつきません。なぜ忘れていたのかは思い出せませんが、思い出した出来事は心が温かくなることばかりです。
「クリス様…」
あなたのことを忘れていた私を、あなたはまだ想ってくれますか?
それは、婚約者がいないということです。
第一王子と婚約を白紙にできたことは、とても!いいことなのですが、そのことを内々で処理してしまったがために、そこまで広まっていないのですよね。
それに加えて、お父様もあまり乗り気ではないようなので、家でも話題にすることができません。このままでは、行き遅れになってしまいます。
それに、第二王子殿下の婚約者の方が私に代わって王妃になるとは思うのですが、噂を一度も聞かないのですよね。以前、王妃様に聞いても答えてくれませんでしたし…
私が押し付けたという形になるので、たとえ誰であろうとも支えてあげたいとは思っているのですが、一体誰なんでしょう?
今度、第二王子殿下に会った時に聞いてみましょうか。
「お前、クリスに直接聞くとかいうなよ」
「キャッ、お、お兄様!部屋に入るときにノックぐらいしてください!」
「したが、返事がなかったぞ」
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「まあそう言うなよ。お前の疑問に答えに来てやったんだからな」
「疑問って、どうして私が考えていたことを!」
「入ってきたときに口に出してたぞ」
そんな、口に出して言っていただなんて。しかも、それをお兄様に聞かれていただなんて。
「まあ、気にするな。それよりもクリスに直接聞くことはやめろよ」
「どうしてですか?」
「はぁ、父上も母上もお前には言わないようにしているが、クリスには子供の頃から好きな人がいるんだよ」
「そうだったんですか!それで、どなたなのですか?」
「ハァ~、まあいい、お前に期待はしていなかった」
「なっ、それはどう言う意味ですか!」
「お前も薄々気づいているだろう、フィー。お前の夢の人物を。二人分のお茶会の準備をして、お前を一人にするやつなんて、この国には一人しかいない」
「……」
「そして、その会場は王城だ。そこでお前より年下の人物は一人しかいない。もう俺が言わなくてもわかるな?」
「は…い…」
夢で会った男の子は第二王子殿下?
「…クリ、ス様」
「やっと名前を呼んだな」
『僕、頑張る!だから、フィーア姉様。僕が王になった時には僕の隣で、僕を支えてくれませんか?』夢の中で途切れ途切れになっていた言葉を思い出す。
あれはクリス様に言ってもらった言葉だったんだ。
「でも、どうして私は…」
「そのことはいい。ただ胸糞悪い話になるだけだ。今は忘れておけ。それと、このことは父上や母上には言うなよ。二人はまだ王族に対して怒っているからな」
「はぁ、わかりました」
どうして私の周りの人は私に全部教えてくれないのでしょうか?そんなに私は信頼がないのでしょうか?
「そんなことはないさ。ただ、お前に心配をかけたくないだけだよ」
「私はそんなにわかりやすい顔をしていますか?」
「私は信頼されていないのか考えている顔をしていたぞ」
「どんな顔なんですか、それは…」
「父上も母上も、もう義務感でお前の婚約者を決めたくないんだよ。クリスがフィーのことを好きだと知ったら、フィーは王妃になるために、そのまま婚約するんじゃないかと心配だったんだよ」
「それは…」
「フィーは今まですごく頑張ってきた。だから、もうわがままを言っていいんだよ。好きな人ができて、その人と結婚していいんだ。この家は俺が継ぐから、だから、フィーはもう家柄を気にする必要はないんだよ」
そう言われても、私は王妃になるために過ごしてきました。クリス様が私を望んでいるのなら、この国のために私が婚約するのが一番いい結果になるのではないでしょうか?
「それでも、私は…」
「王妃になりたいか?王妃になって、お前は何がしたい?」
「何が、したい…私は、この国の民のために…」
「そこにフィーの幸せは?」
「私の…幸せ」
「悪い、一気に言いすぎたな。ただこれだけは言わせてもらう。俺もだが、父上も母上も、もうお前の幸せになるようにしか考えていない。この国よりも、お前が幸せになることを望んでいる。それだけは覚えておけ」
私は今まで自分を犠牲にしてでもこの国をよくしようと考えてきました。たとえ、相手が第一王子だとしても、それだけは変わらないでいようと。だけど、私の幸せはそこにあったのでしょうか?それだけはないと言えます。
お兄様の言葉を聞いてからは、今まで考えたことのない内容ばかりで考えがまとまらない。婚約相手もお父様が決めた方だと思っていました。私が好きな人…
この国のことを思っている人、相手を尊重できる人、気遣いができて、話していて楽しくなる人…
『フィーア姉様』
そのような人物は一人しか思いつきません。なぜ忘れていたのかは思い出せませんが、思い出した出来事は心が温かくなることばかりです。
「クリス様…」
あなたのことを忘れていた私を、あなたはまだ想ってくれますか?
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