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最終章 ずっと変わらない気持ち
4:リリカとウィリアム
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リリカは、ウィリアムに会うことが出来るのは明日だと思っていたため、突然のウィリアムの登場に目を見開いて固まってしまう。
そんなリリカの横で、伯爵は嬉しそうに声を上げる。
「おお、もう帰ったのか!」
「ええ。インクと紙を買いに行っていただけなので……」
ウィリアムは、父親の高いテンションを不思議に思いながら答える。
「ちょうど私との話は終わったところだ。リリカはウィリアムを訪ねて来たのだよ。ではまたな、リリカ」
「……はい。ありがとうございました」
ペコっと頭を下げるリリカの横を通り過ぎる時、伯爵はこそっと耳打ちをした。
『また、いつでも領地経営について教えるからな』
リリカは再び目を見開く。
伯爵の後押しに、リリカは覚悟を決める。
(私は想いをしっかりと伝えるだけよ……)
先程までリチャードが座っていた場所に、ウィリアムは腰を下ろした。
ウィリアムの目の前に座るリリカは、数カ月ぶりのウィリアムに胸がときめくのを止められなかった。
最近は社交の場も多くあるのだろう。
やぼったかったウィリアムも、最近はすっかり小綺麗にしているのだ。
しかし調子に乗りかけたリリカは、いっきに現実に押し戻された。
ここ数年の出来事が、いっきにフラッシュバックして来たのだ。
ウィリアムとの悲しい会話は、全てここで繰り広げられたのだった……
嫌な予感に思わず、リリカは眉間に皺を寄せてしまう。
しかし、リリカはすぐに首を激しく左右に振って、自分の思考を振り払おうとした。
(過去に囚われては駄目。今の気持ちを伝えるのよ……!)
「どうした? 大丈夫か?」
急に頭を振ったリリカに驚いたウィリアムは、飲んでいたお茶を置いた。
そのウィリアムの声をゴングに、リリカは”キッ”と、ウィリアムを睨むように見上げる。
リリカの眼力にウィリアムは少したじろいだが、リリカはお構いなしで口を開けた。
「ウィリアム様、花の注文を国の機関に推薦して下さったこと、聞きました。本当にありがとうございました。とても大きな収益となり、助かりました。お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません」
背筋を伸ばし、胸を張って、リリカは真顔で堂々としている。
「……いや、良いと思ったから推薦しただけだ。うまくいって良かったな」
ウィリアムは笑顔を浮かべて言う。
リリカはその笑顔に、胸が高鳴るのを感じる。
(親子2人して優しいのだから……)
家族仲が良くいつも温かくリリカを迎えてくれる、このブルーム伯爵家が、リリカは大好きなのだ。
「家もだいぶ持ち直したと聞いた。商売は続けるのか?」
「あっ……花があと1ヶ月弱は綺麗に咲きそうなので、その間は続けようと思います」
「そうなのか。お世辞抜きで、初めて見る色と香りだと、とても評判がよかった。同じ青い花が、生け方で主役にも引き立て役にもなっていて、本当に素晴らしかった。推薦者として鼻高々だったよ。ありがとう」
ウィリアムのこれほどまで明るい笑顔を見るのは、いつぶりだろうか?
(この笑顔を、これからも近くで見続けたい)
リリカは”ゴクッ”と唾を飲み、”ジッ”とウィリアムを見つめながら、意を決したその時……
”コンコン”
ノック音が部屋に鳴り響き、執事が入って来た。
「失礼いたします。ウィリアム様、国立研究所から手紙が届いております。お急ぎだといけないので、お伝えさせていただきます。お客様がいらっしゃっているのに、申し訳ありません」
「ああ……」
ウィリアムは立ち上がると、執事の方へ歩いて行った。
「ああ、わざわざ申し訳ありません」
「いや、ちょうど身体をのばしたかったのだ」
わざわざ手紙を受け取りに来たウィリアムに、執事が申し訳なさそうに言う。
リリカがそっと目をやると、執事が足を怪我しているようだった。
(相変わらず、優しいのね……)
リリカは変わらないウィリアムに、胸が熱くなる。
ウィリアムが席に戻って来た時、リリカは急に立ち上がった。
リリカはそっと歩いてウィリアムの斜め前に立ち止まる。
ウィリアムは、急なリリカの行動に驚いて立ったままだ。
リリカはそっと、ウィリアムの服の袖をつまんだ。
そしてすぐに、顔を真っ赤にした……
「……ウィリアム様、私は今から、とても身勝手なことを言わせていただきます」
驚いた顔でリリカを見ているウィリアムを、リリカは見上げた。
”ジッ”とウィリアムの瞳を見つめる。
(この瞳にずっと映っていたい……)
驚いた表情を崩さずに、ウィリアムは一言だけ言う。
「ああ……」
リリカはつまんでいた袖を、更にギュッと強く握った。
「私と結婚して下さい」
そんなリリカの横で、伯爵は嬉しそうに声を上げる。
「おお、もう帰ったのか!」
「ええ。インクと紙を買いに行っていただけなので……」
ウィリアムは、父親の高いテンションを不思議に思いながら答える。
「ちょうど私との話は終わったところだ。リリカはウィリアムを訪ねて来たのだよ。ではまたな、リリカ」
「……はい。ありがとうございました」
ペコっと頭を下げるリリカの横を通り過ぎる時、伯爵はこそっと耳打ちをした。
『また、いつでも領地経営について教えるからな』
リリカは再び目を見開く。
伯爵の後押しに、リリカは覚悟を決める。
(私は想いをしっかりと伝えるだけよ……)
先程までリチャードが座っていた場所に、ウィリアムは腰を下ろした。
ウィリアムの目の前に座るリリカは、数カ月ぶりのウィリアムに胸がときめくのを止められなかった。
最近は社交の場も多くあるのだろう。
やぼったかったウィリアムも、最近はすっかり小綺麗にしているのだ。
しかし調子に乗りかけたリリカは、いっきに現実に押し戻された。
ここ数年の出来事が、いっきにフラッシュバックして来たのだ。
ウィリアムとの悲しい会話は、全てここで繰り広げられたのだった……
嫌な予感に思わず、リリカは眉間に皺を寄せてしまう。
しかし、リリカはすぐに首を激しく左右に振って、自分の思考を振り払おうとした。
(過去に囚われては駄目。今の気持ちを伝えるのよ……!)
「どうした? 大丈夫か?」
急に頭を振ったリリカに驚いたウィリアムは、飲んでいたお茶を置いた。
そのウィリアムの声をゴングに、リリカは”キッ”と、ウィリアムを睨むように見上げる。
リリカの眼力にウィリアムは少したじろいだが、リリカはお構いなしで口を開けた。
「ウィリアム様、花の注文を国の機関に推薦して下さったこと、聞きました。本当にありがとうございました。とても大きな収益となり、助かりました。お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません」
背筋を伸ばし、胸を張って、リリカは真顔で堂々としている。
「……いや、良いと思ったから推薦しただけだ。うまくいって良かったな」
ウィリアムは笑顔を浮かべて言う。
リリカはその笑顔に、胸が高鳴るのを感じる。
(親子2人して優しいのだから……)
家族仲が良くいつも温かくリリカを迎えてくれる、このブルーム伯爵家が、リリカは大好きなのだ。
「家もだいぶ持ち直したと聞いた。商売は続けるのか?」
「あっ……花があと1ヶ月弱は綺麗に咲きそうなので、その間は続けようと思います」
「そうなのか。お世辞抜きで、初めて見る色と香りだと、とても評判がよかった。同じ青い花が、生け方で主役にも引き立て役にもなっていて、本当に素晴らしかった。推薦者として鼻高々だったよ。ありがとう」
ウィリアムのこれほどまで明るい笑顔を見るのは、いつぶりだろうか?
(この笑顔を、これからも近くで見続けたい)
リリカは”ゴクッ”と唾を飲み、”ジッ”とウィリアムを見つめながら、意を決したその時……
”コンコン”
ノック音が部屋に鳴り響き、執事が入って来た。
「失礼いたします。ウィリアム様、国立研究所から手紙が届いております。お急ぎだといけないので、お伝えさせていただきます。お客様がいらっしゃっているのに、申し訳ありません」
「ああ……」
ウィリアムは立ち上がると、執事の方へ歩いて行った。
「ああ、わざわざ申し訳ありません」
「いや、ちょうど身体をのばしたかったのだ」
わざわざ手紙を受け取りに来たウィリアムに、執事が申し訳なさそうに言う。
リリカがそっと目をやると、執事が足を怪我しているようだった。
(相変わらず、優しいのね……)
リリカは変わらないウィリアムに、胸が熱くなる。
ウィリアムが席に戻って来た時、リリカは急に立ち上がった。
リリカはそっと歩いてウィリアムの斜め前に立ち止まる。
ウィリアムは、急なリリカの行動に驚いて立ったままだ。
リリカはそっと、ウィリアムの服の袖をつまんだ。
そしてすぐに、顔を真っ赤にした……
「……ウィリアム様、私は今から、とても身勝手なことを言わせていただきます」
驚いた顔でリリカを見ているウィリアムを、リリカは見上げた。
”ジッ”とウィリアムの瞳を見つめる。
(この瞳にずっと映っていたい……)
驚いた表情を崩さずに、ウィリアムは一言だけ言う。
「ああ……」
リリカはつまんでいた袖を、更にギュッと強く握った。
「私と結婚して下さい」
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