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最終章 ずっと変わらない気持ち
5:最終話 : 家族
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リリカは顔を真っ赤にして、しかし、決してウィリアムから目を逸らさずに言った。
(どうか私の気持ちが伝わりますように……)
そう願いながら、想いを込めて見つめ続ける。
ウィリアムは更に驚き、すっかり固まっている。
「私に領地経営を手伝わせて下さい! そして、ウィリアム様は研究を続けて下さい!」
「えっ……」
ウィリアムから漏れた戸惑いの言葉に、リリカは心が折れそうになる。
しかし、それでも決して目を逸らさなかった。
「……決して、研究を続けられることを餌にして、釣っている訳ではありません」
「……」
リリカは目に涙が滲むのを感じる。
(泣いたら駄目よ! 泣き落としになってしまう!)
リリカは奥歯をギュッと噛み締めて、涙を堪える。
「……ただ、私がこれからの人生を、ウィリアム様と一緒に過ごしたいだけなのです……」
「……」
もうこれ以上、リリカは涙を堪えることは出来なかった。
「お慕いしております……。……愛しています……」
ウィリアムを見つめたままそう言ったリリカは、あっという間に温かいものに包まれる。
真っ暗になった視界にリリカが戸惑っていると、頭上から言葉が降って来た。
「……俺も、愛している」
そして、リリカは”ギュッ”と力強く抱きしめられた。
「……ウィリアム様……」
何が起こっているか理解できないリリカは、そっとウィリアムの胸に手を置き、顔を見ようとウィリアムを見上げた。
するとそこには、今までに見た事のないウィリアムの顔があったのだ。
ウィリアムは顔を真っ赤にして、長い前髪の隙間から、リリカを見つめている。
”ビュウッ”
窓から気持ちの良い風が入って来て、ウィリアムの前髪を乱した。
瞳の露わになったウィリアムと目が合った瞬間、リリカの視界は再び暗くなる。
唇に柔らかいものが重ねられたのだった……
「「お父様、領主としてのお勤め、お疲れさまでした」」
10年後の今日、リチャードは領主の座を年の離れた弟へ引き渡した。
「ありがとう。何とか頑張れたのは、リリカとキャサリンのおかげだよ」
リチャードは乾杯の酒を飲みながら、笑顔で言う。
今日は親子3人水入らずで、久しぶりに食事をしているのだ。
「私たちは嫁いでしまって、何もお手伝い出来ませんでした……」
相変わらず綺麗なキャサリンは、申し訳なさそうに言う。
「いや、何を言うか。嫁いだ後も、何かと気に掛けてくれていたではないか」
ローズとの離縁後まもなく、リリカとキャサリンも嫁いでしまい、リチャードは屋敷に一人きりとなってしまったのだった。
そんなリチャードを気遣い、リチャードが寂しくないようにと、双子は頻回に連絡を取った。
リリカは隣の領地で近いこともあり、領地を治め忙しくしながらも、リチャードを気に掛け続けたのだった。
「それにしても、スターリンは騎士のトップになり、ウィリアムはまた新薬を開発したな! 二人の夫は本当に凄いな!!!」
久しぶりの家族3人での食事に、リチャードはすっかり上機嫌だ。
そんなリチャードを見ながら、リリカとキャサリンは目配せをして頷き合う。
そしてリリカは、事前にキャサリンにも相談して許可を得ていた内容を、リチャードに伝えることとする。
「お父様、私と一緒に暮らしませんか? 隣の領地ですし、子供たちがお父様と一緒に暮らしたがっているのです。私も忙しいので、遊び相手をしてくれると助かるのですが……」
リリカのその言葉に、一瞬驚いた顔をした後、リチャードは大号泣だった。
一人で辛いことも、たくさんあったに違いないのだ。
そんな泣きながら笑うリチャードを、リリカとキャサリンは優しく抱きしめたのだった……
こうしてリリカとキャサリンは、幼い頃からの許嫁と結婚をし、幸せに暮らしましたとさ。
【完】
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!!!
(どうか私の気持ちが伝わりますように……)
そう願いながら、想いを込めて見つめ続ける。
ウィリアムは更に驚き、すっかり固まっている。
「私に領地経営を手伝わせて下さい! そして、ウィリアム様は研究を続けて下さい!」
「えっ……」
ウィリアムから漏れた戸惑いの言葉に、リリカは心が折れそうになる。
しかし、それでも決して目を逸らさなかった。
「……決して、研究を続けられることを餌にして、釣っている訳ではありません」
「……」
リリカは目に涙が滲むのを感じる。
(泣いたら駄目よ! 泣き落としになってしまう!)
リリカは奥歯をギュッと噛み締めて、涙を堪える。
「……ただ、私がこれからの人生を、ウィリアム様と一緒に過ごしたいだけなのです……」
「……」
もうこれ以上、リリカは涙を堪えることは出来なかった。
「お慕いしております……。……愛しています……」
ウィリアムを見つめたままそう言ったリリカは、あっという間に温かいものに包まれる。
真っ暗になった視界にリリカが戸惑っていると、頭上から言葉が降って来た。
「……俺も、愛している」
そして、リリカは”ギュッ”と力強く抱きしめられた。
「……ウィリアム様……」
何が起こっているか理解できないリリカは、そっとウィリアムの胸に手を置き、顔を見ようとウィリアムを見上げた。
するとそこには、今までに見た事のないウィリアムの顔があったのだ。
ウィリアムは顔を真っ赤にして、長い前髪の隙間から、リリカを見つめている。
”ビュウッ”
窓から気持ちの良い風が入って来て、ウィリアムの前髪を乱した。
瞳の露わになったウィリアムと目が合った瞬間、リリカの視界は再び暗くなる。
唇に柔らかいものが重ねられたのだった……
「「お父様、領主としてのお勤め、お疲れさまでした」」
10年後の今日、リチャードは領主の座を年の離れた弟へ引き渡した。
「ありがとう。何とか頑張れたのは、リリカとキャサリンのおかげだよ」
リチャードは乾杯の酒を飲みながら、笑顔で言う。
今日は親子3人水入らずで、久しぶりに食事をしているのだ。
「私たちは嫁いでしまって、何もお手伝い出来ませんでした……」
相変わらず綺麗なキャサリンは、申し訳なさそうに言う。
「いや、何を言うか。嫁いだ後も、何かと気に掛けてくれていたではないか」
ローズとの離縁後まもなく、リリカとキャサリンも嫁いでしまい、リチャードは屋敷に一人きりとなってしまったのだった。
そんなリチャードを気遣い、リチャードが寂しくないようにと、双子は頻回に連絡を取った。
リリカは隣の領地で近いこともあり、領地を治め忙しくしながらも、リチャードを気に掛け続けたのだった。
「それにしても、スターリンは騎士のトップになり、ウィリアムはまた新薬を開発したな! 二人の夫は本当に凄いな!!!」
久しぶりの家族3人での食事に、リチャードはすっかり上機嫌だ。
そんなリチャードを見ながら、リリカとキャサリンは目配せをして頷き合う。
そしてリリカは、事前にキャサリンにも相談して許可を得ていた内容を、リチャードに伝えることとする。
「お父様、私と一緒に暮らしませんか? 隣の領地ですし、子供たちがお父様と一緒に暮らしたがっているのです。私も忙しいので、遊び相手をしてくれると助かるのですが……」
リリカのその言葉に、一瞬驚いた顔をした後、リチャードは大号泣だった。
一人で辛いことも、たくさんあったに違いないのだ。
そんな泣きながら笑うリチャードを、リリカとキャサリンは優しく抱きしめたのだった……
こうしてリリカとキャサリンは、幼い頃からの許嫁と結婚をし、幸せに暮らしましたとさ。
【完】
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!!!
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(6件)
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最後まで読みました!
告白のシーンはキュンキュンでした!
家族3人、それぞれの居場所で幸せになれて良かったです!
お疲れ様でした!
次回作も楽しみにしています^ ^
最後まで読んで下さり、ありがとうございました^ ^
まだ読み途中なので、一言だけ。
私も毒親に育てられたので、色々思い出して辛いです。。
それじゃなくても同性の双子って比べられやすいっていうのに……
本当に、子どもを親の所有物で好き勝手にして良いって思ってる親の多いこと……。
辛い想いをしつつも読んで下さってありがとうございます!
『将来面倒みてもらうために子どもは産んでおいた方が良い』って実際に言ってる人、何人か知ってます……
もしよければ、最後まで読んで下さると嬉しいです^ ^
最初から母親(ローズ)の事
受け入れる事はできませんでした。
父もリリカ・キャサリンも
其々辛かったですね!
と いうか…
それが余りにも大き過ぎて
幸せが霞んでしまっていました。
ですが3人だったから
上手く乗り越え進んでいけたのかなと。
子どもを愛せない自分を責める母親は、実際にいますよね。ローズみたいに開き直る人は、中々いないかもしれませんが!
家族って難しいなって思います。近いからこそ、色々拗れやすいというか。
子どもを自分の所有物だと勘違いしている人も多いですし。
何だかローズの印象が強すぎて、物語か霞んでしまったようですね>_<
読んで下さり、ありがとうございました^ ^