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10:結婚四年目
しおりを挟む「旦那様、子供の名前は何か考えられていますか?」
「……何か良い名があるのか?」
「えっ、あのっ……」
出産翌日にマストへした質問に、質問で返されてマリーは返事に戸惑ってしまう。
「良い名があるのなら申してみろ」
マストはいつもと変わらない無表情でマリーをまっすぐに見て言う。
「……フリージア……は、いかがでしょうか?」
マリーは躊躇いながら、勇気を出して言ってみた。
「……フリージアか。良い名だ。そうしよう」
「えっ、良いのですか!?」
マリーは驚き、つい身体を大きく動かしてしまった。
「オギャー!!!」
「あ、ごめんね! せっかく気持ち良く寝てたのにね!!!」
マリーが腕の中の我が子をあやしている様子を見ながら、マストは密かに微笑んだ。
「私も気に入った。フリージアにしよう」
(えっ、このようにすぐに認めて下さるなんて意外だわ! ……この子を産んだ私のことを、尊重しようとして下さっているのかしら……?)
マリーはマストがすんなりと快諾してくれたことに驚きつつも、そう思って嬉しい気持ちになったのだった。
結婚四年目。
フリージアは元気に育っている。
ローレルからは、生まれた子供が女児だったことに暫く嫌味を言われ続けた。
そして半年が過ぎた頃には、第二子を催促され始めた。
マストは意外と良い父親だった。
毎日必ず、食事時以外にもフリージアと遊ぶ時間を作り少しでも会いに来た。
「旦那様、今度三人でピクニックに行きませんか?」
「ああ、良いだろう」
相変わらずマリーには用事連絡以外の声掛けはないが、マストとフリージアの戯れる様子は微笑ましく、マリーは二人を眺める事が好きだった。
「フリージア、パパだよ」
「大丈夫大丈夫、痛くないよ」
この様な様子で、顔に似合わない口調であやすので、マリーはいつも笑いを堪えるのに必死だった。
「お仕事で忙しいにも関わらず子どもの相手もして下さって、いつもありがとうございます」
最近マリーは、フリージアのためにもマストと良い夫婦関係を築きたくて、感謝の気持ちを頻繁に直接言葉で伝える様にした。
(私から感謝の気持ちを伝えるようにしていたら、マスト様も少しはプラスの言葉を言って下さるようになるかもしれない)
そう願って。
しかしマリーの期待はいつも空振りだった。
「ああ」
マストの返事は決まってこれだけなのだ。
「私は意識的に感謝の言葉を伝える様にしていますが、旦那様は全く言っては下さいませんね」
マリーは業を煮やし、つい、マストに不満を言ってしまった。
「言わせて言って貰って、嬉しいか?」
マストのその返答に、マリーは恥ずかしいやら悔しいやら、複雑な想いが胸いっぱいに広がる。
「言われたいのなら言いたいと思わせる様な言動をしろ、と言うことですか?」
「まあ、そうだな」
マストはサラリと言い、フリージアとの遊びへ戻った。
(なんなのよー! もう、腹が立つ!!!)
マリーは怒りと悔しさで、握り拳をわなわなと振るわせるだった。
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