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11:第二子誕生
しおりを挟むフリージアが一歳を迎える頃、マリーは二人目の妊娠が発覚した。
今回も、前回と同様に悪阻が酷かった。
マストは、前回の悪阻の時に比較的食べやすかった物を覚えていた様で、同じ様な物を色々と買って来てくれた。
「ありがとうございます」
「他に何か食べたい物や食べられそうな物があれば、何でも言いなさい」
相変わらずマリーの辛い気持ちに寄り添う言葉はないが、解決が出来る事に関してはマストは積極的であった。
「フリージアに構ってあげる余裕がなくて、寂しい想いをさせてしまっているのです。お時間のある時は出来るだけ相手をしてやって貰えませんか?」
「相手はしているつもりだが」
マストの真顔の返しに、マリーは少し怯んだ。
「……ええ、分かっております。もしもう少しでも時間が作れる様ならば……と思っただけです。生意気な事を言って、申し訳ありません」
マストの子どもを妊娠し、悪阻に苦しんでいる今、(何でたかがこれくらいの事で謝罪をしなければならないのか)と、マリーは悲しい気持ちになった。
(優しいことは何も言ってくれずに、いつもきつい物言いばかり……)
マリーは心の中で溜め息をつき、いつも思う事をこの日も思ったのだった。
しかしこの後、マストはそれまでよりも更にフリージアに時間を割いてくれる様になった。
執事によると、仕事意外の時間は全てフリージアに費やしているとのことだ。
(本当に、旦那様が何を考えているのかいまだにちっともわからないわ……。旦那様の頭の中が透けて見えたら良いのに……)
マリーは単純に喜ぶことが出来ず、心にモヤがかかるのを感じるのだった。
マリーは悪阻がおさまると、今度はローレルの嫌味に耐える日々が始まった。
ローレルはマストの留守の時を見計らってはマリーに会いに来て、決まって同じ事を言う。
「次は男の子を産みなさいよ」
マストは言葉はキツイが、怒っている時以外は瞳は冷たくなかった。
しかし、ローレルの瞳はマストと同じ色にはとても見えない程、いつも冷え切っている。
「性別は選べませんので……」
マリーは毎回、同じ無難な返事を無心で繰り返してやり過ごした。
そんなローレルの訪問は、産む迄ほぼ毎日続いたのだった……
タングール伯爵家は、もう何代も長男が家系を継いでいた。
マストと後継の話をした事は一度もなく、マストから男児を望む様な発言を聞いた事は一度もなかった。
しかしローレルは、マストの次の代も長男に継がせたい想いが強く、マリーへ話しかける内容はそれが90%以上である。
(男の子が産まれるまで産み続ければ良いのでしょ!)
マリーはそう考えてローレルの言葉を深く考えない様にし、性別ではなく元気に産まれて来てくれる事だけを祈り続けた。
そして産まれた子は、再び女児だった。
マリーは大きな産声をあげた我が子が愛しくて仕方がなかった。
しかし同時に、咄嗟に次のように思ってしまった。
(また色々言われる)
そして出産して我が子を見て一番にそう思ってしまった自分に、とてもショックだったのだ……
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