【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!

ひかり芽衣

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12:4人家族の始まり

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「マリー、ご苦労だった」

呆然としているマリーは、声を掛けられて我に返った。
声の方を見ると、そこにはフリージアを連れたマストがいる。

今回も前回と同じ言葉を言うとすぐに、フリージアを連れて立ち去ろうとした。

しかし今回は前回と違い、フリージアがもっとマリーと一緒にいたいとごねたのだ。

「いやー! ママー!!!」

「フリージア、ママは今赤ちゃんを産んだばかりで疲れているのだ。ママと赤ちゃんが元気な様子を見れたから安心しただろう? 今日はゆっくりママを休ませてあげよう。子ども部屋でパパと遊ぼう」

マストはそう言ってフリージアをなだめた。

マリーは驚いた。
出産を終えてすぐの妻に、一言だけ掛けてすぐにその場を去る理由を知ったからだ。

(私を労っての行動だったと言うの!?)

気分が落ちていたマリーは、マストの間接的ではあるが貴重な優しい言葉に、思わず涙が込み上げて来たのだった。

「ママー?」

「フリージアも、産まれて来たこの子も、元気で嬉しいなと思って……。フリージア、仲良くしてあげてね」

泣いているマリーを不思議がって近寄って来たフリージアを、マリーはそっと抱き寄せて言う。
まだ2歳にもならないフリージアは、ポカンと口を開けてマリーを見ている。

(ふふっ。まだ分からないわよね。可愛いわね)

フリージアを見つめながら微笑んでいるマリーを、マストはそっと見つめていた。

「……リリーという名はどうだろうか?」

ふとマストにそう言われ、マリーは驚いた。
マストから何かを提案される事は、初めての事だったのだ。

(いつも決定事項を伝えられるだけなのに……。自分から名前を付けるという事は、二人目も女の子でガッカリしたりはしていないという事かしら……?)

マリーはそう疑問に思ったが、怖くて尋ねる事は出来なかった。

マリーは寡黙なマストとの結婚生活の中で、自分が傷付きたくないが為に、前以てその芽を摘む癖がついてしまっていた。

マストと言い争っても勝ち目はないのだ。
いつも論破され、マリーの感情に訴えた部分はスルーされる。
その様な事を繰り返しているうちに、最初は怒りを抱いていたが、今では悲しい感情を抱く様になっていた……

理解されたい人に理解されない、理解しようともされずに否定される悲しさ。
そして次第に、自己防衛が働く様になる。
そうしてマリーは、何も自分の意見を言わなくなり、更に微妙な内容は尋ねることはせずに答えを明らかにしようとはしなくなった。

「……とても良い名前ですね」

もし気に入らない名前であってもマリーはそう言ったであろうが、今回は本心だった。

マストは、マリーの返答に満足そうに微笑んだ。

「パパー、あそぶー」

マリーの妊娠中は主にマストがフリージアと身体を使った遊びをしていた為、フリージアはすっかりパパっ子になっていた。

マリーは生まれたばかりの我が子リリーを見た後、マストに抱きつくフリージアとマストを見て心の中で思う。

(家族四人で幸せになれますように……)





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