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16:事実
しおりを挟むその後マリーは、ブルースから真実を聞かされた。
マストは既にある程度のことは知っている様子で、マリーの後ろで渋い表情をしている。
「父上は、今までの事業が伸び悩んでいる為に新しい事業を始める事としたのだ。今回もローレル婦人に融資をして貰える事となったが、ローレル婦人から金を受け取った後で、新しい事業については一旦白紙に戻す事となってしまった。しかし、ローレル婦人の金を返す前に、不意に儲け話が舞い込んで来たのだ。そしてローレル婦人に相談する事なく、勝手にその金を使い、騙されて持ち逃げされた。それがローレル婦人に知られ、責められ、貴族中に言いふらされた。それでなくても最近上手くいっていなかった事業は、あっという間に広がった噂により信頼がなくなり、取引先の相次ぐ撤退ですぐに立ち行かなくなった。ローレル婦人に返す金のあてもない。途方に暮れた父は自害をした……その様な流れでございます」
ブルースは分かりやすく、経過を追ってマストへ向けて話した。
マリーも横に座って聞く。
一度成功をしてからというものブラックは、大きな損害を出すことはなく着々と金を増やして行っていた。
その為、今回も大丈夫であろうと調子に乗ったのだろう。
しっかりと吟味をする事なく、甘い話に飛び付いてしまったのだ。
丁度手元に大金があったが為に。
"勝手に金を使っても、増やせば文句はないだろう"
気の大きいブラックの事なので、そう思ったのかもしれない。
そして急転直下での地面激突に立ち向かう力は、ブラックにはなかった。
その為、この現実から一人で逃げる事を選んだのだ。
本当のところは自害をする気があったのかは定かではない。
ただ現実から逃げ出したくて、深く考えずに多量の酒と薬を飲んだのではないかとマリーは思っていた。
ブラックには自害をする勇気などない様な気がするのだ。
ブラックはいつも態度が大きかった。
それは、本当は気が小さい事を隠している様にしか、マリーには見えていなかったのだ。
そしてマリーはようやく、ローレルの言っていた意味、即ち怒りの理由の全貌を知る事となった。
ローレルは融資をする際には必ず、その内容をしっかりと見極めてから融資をする。
損をしない為だ。
しかし今回はそうではなく、"勝手に金を使われた"という事となる。
マリーは目の前が真っ暗になるのを感じた。
それは父の死の悲しみではなく、子ども達と離れなければならないかもしれない恐怖からであった……
ブラックの死に悲しみの感情が浮かんでこない自分の薄情さに、マリーは少しショックを抱く。
しかしそれと同時に、貧乏な頃から変わらない自分勝手な横柄なブラックの様子が脳裏に浮かぶのだ。
その人が亡くなった時に抱く感情が、その人への本当の気持ちなのかもしれない。
(私はお父様のこと、好きではなかったのね……)
マリーは今まで考えないようにしていたことを、自覚するしかなかった。
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