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17:マリーの希望
しおりを挟む身内だけで簡単な葬儀を済ませ、ブラックは埋葬された。
ブルースはこの様な形でプルドー男爵家を継ぐ事となり、頭を抱えていた。
葬儀が終わった日の夜、二人きりの時にマストはマリーに尋ねた。
「マリー、君の兄は信用出来る人間か?」
「えっ?……はい、心から信用出来ます。正義感がとても強く前向きで明るく、貧乏だった頃もいつも私を励まして下さっていました。自慢の兄です」
マリーは、迷わずはっきりとそう言う。
今のブルースの心痛を思うと、マリーも胸が痛かった。
「……お兄様は、時間がかかってもお義母様にお金を返すと申しております……」
マストは自分から話し掛けたにも関わらず、何も言わなかった。
マリーは、窓の外を見ながら熟考している様子のマストを見た。
「……旦那様、お義母様に離縁するように言われております」
マストはマリーの方を見て、真顔で言った。
「ああ、俺にも言って来た」
二人の間に冷たい空気が流れる。
「……この様な事があったにも関わらず、タングール伯爵家の嫁として居続ける事は出来ません」
「……それで、どうしたいのだ?」
淡々と表情を変えずに発言をするマストに、マリーは悲しい気持ちになった。
(ああ、旦那様は本当に私のことはどうでもいいのね……)
「……お願いがございます」
マリーはここ数日、どうにかして子ども達と離れずに済む方法はないかと考えていた。
マリーは一つ大きな深呼吸をし、マストの目を真正面から見て言う。
「離縁はいたします。しかしその後、侍女としてこの屋敷においては頂けませんか?」
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