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2:友人たちの告白
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雪が解け暖かくなって来たある日、アリーナは年頃の友人たちと3人で久しぶりに集まっていた。
「えっ? 結婚されるのですか?」
「ええ、第二夫人としてね」
あまりにケロッという友人リリーにアリーナが固まっていると、彼女は苦笑いを浮かべる。
「アリーナ、あなたの大好きな恋愛小説でも婚外恋愛の話はよくあるでしょう? 結婚なんてそんなものよ。男は女一人に絞れないの。今度私が嫁ぐ所のような名家は特にね」
「でもそんな、公然と……」
「跡取り候補は多い方が良いのよ」
まるで子供を産むためだけに嫁いでいくと言わんばかりのリリーに、アリーナは眉を下げて心底心配そうな表情をしている。
「ぷっ……アリーナ、なんて顔をしているのよ。私のことは心配しないで。第二夫人の座で満足するつもりはないから。第一夫人の女が、これまた嫌な女なの! 私は第一夫人になってみせるわ! 見ていて」
そうニッと笑うリリーに、アリーナはそれ以上何も言えずに微笑むしかなかった。
彼女の幸せを願いながら……
「……実は、お付き合いしている人がいるの」
それまで二人の会話を聞いていたもう一人の友人アネッサが、おずおずと口を開いた。
「えっ? 婚約者の方でしょう?」
既に婚約して1年になるアネッサは、結婚話が具体的に進んでいることは周知の事実だ。
「……他の人なの……」
アリーナが目と口を真ん丸に見開いていると、リリーが口を開いた。
「どういうことなの?」
「……婚約者の方とは他に、お付き合いをしている人がいるの」
「遊びよね?」
「……ええ、もちろん」
アリーナはアネッサが心配になる。
言葉と表情が一致しておらず、とても苦しそうな表情をしているのだ。
「……その彼とは別れるの?」
リリーの問いに、アネッサは首を横に振る。
別れるつもりはないようだ。
「私の婚約者、20も年上の奥様と死別してお子様もいらっしゃる方なのよ? 私が喜んで嫁ぐと思う? この一年の婚約期間だって、彼の子供達の心の準備のために設けられたものだし……。もう一人の彼は私の生きる希望なの。"貴族の娘"という自分の役割を果たすために必要な存在なのよ」
その台詞を聞いたアリーナは思ってしまった。
(そういうものなのかもしれない)
……と。
父が今も母と離縁していないのは、愛人がいるからだ。
父からしたら母は、屋敷と仕事、後継者育てをするただの協力者なのだ。
……もはや、雇用者のつもりかもしれないが。
家庭……本来自分のいるべき場所での満たされない部分を満たすのが、愛人の役割だ。
しかし愛人は、それ以外の母がしている部分を満たすことは出来ない。
つまり、父にとってはどちらも必要な存在だということになる。
母から一度も父親の悪口を聞いたことがないアリーナは、父について深く考えない様にしていた。
父がいなくても何も困っていないからだ。
考えて、心を痛めるほうが嫌だった。
決して褒められる行為ではない不倫。
婚外恋愛と言えば聞こえは良いが、不倫は不倫だ。
大々的に知れ渡ればプラスに働く可能性は低く、寧ろマイナスに働く可能性の方が多いにある。
自分の立場を危うくさせる恐ろしい行為だ。
それなのにも関わらず、これだけ多くの人がその"危険な行為"を行うのは、それ以上のメリットを当事者たちは感じているからに違いない。
それは、アリーナには到底想像すらできないことだった……
「えっ? 結婚されるのですか?」
「ええ、第二夫人としてね」
あまりにケロッという友人リリーにアリーナが固まっていると、彼女は苦笑いを浮かべる。
「アリーナ、あなたの大好きな恋愛小説でも婚外恋愛の話はよくあるでしょう? 結婚なんてそんなものよ。男は女一人に絞れないの。今度私が嫁ぐ所のような名家は特にね」
「でもそんな、公然と……」
「跡取り候補は多い方が良いのよ」
まるで子供を産むためだけに嫁いでいくと言わんばかりのリリーに、アリーナは眉を下げて心底心配そうな表情をしている。
「ぷっ……アリーナ、なんて顔をしているのよ。私のことは心配しないで。第二夫人の座で満足するつもりはないから。第一夫人の女が、これまた嫌な女なの! 私は第一夫人になってみせるわ! 見ていて」
そうニッと笑うリリーに、アリーナはそれ以上何も言えずに微笑むしかなかった。
彼女の幸せを願いながら……
「……実は、お付き合いしている人がいるの」
それまで二人の会話を聞いていたもう一人の友人アネッサが、おずおずと口を開いた。
「えっ? 婚約者の方でしょう?」
既に婚約して1年になるアネッサは、結婚話が具体的に進んでいることは周知の事実だ。
「……他の人なの……」
アリーナが目と口を真ん丸に見開いていると、リリーが口を開いた。
「どういうことなの?」
「……婚約者の方とは他に、お付き合いをしている人がいるの」
「遊びよね?」
「……ええ、もちろん」
アリーナはアネッサが心配になる。
言葉と表情が一致しておらず、とても苦しそうな表情をしているのだ。
「……その彼とは別れるの?」
リリーの問いに、アネッサは首を横に振る。
別れるつもりはないようだ。
「私の婚約者、20も年上の奥様と死別してお子様もいらっしゃる方なのよ? 私が喜んで嫁ぐと思う? この一年の婚約期間だって、彼の子供達の心の準備のために設けられたものだし……。もう一人の彼は私の生きる希望なの。"貴族の娘"という自分の役割を果たすために必要な存在なのよ」
その台詞を聞いたアリーナは思ってしまった。
(そういうものなのかもしれない)
……と。
父が今も母と離縁していないのは、愛人がいるからだ。
父からしたら母は、屋敷と仕事、後継者育てをするただの協力者なのだ。
……もはや、雇用者のつもりかもしれないが。
家庭……本来自分のいるべき場所での満たされない部分を満たすのが、愛人の役割だ。
しかし愛人は、それ以外の母がしている部分を満たすことは出来ない。
つまり、父にとってはどちらも必要な存在だということになる。
母から一度も父親の悪口を聞いたことがないアリーナは、父について深く考えない様にしていた。
父がいなくても何も困っていないからだ。
考えて、心を痛めるほうが嫌だった。
決して褒められる行為ではない不倫。
婚外恋愛と言えば聞こえは良いが、不倫は不倫だ。
大々的に知れ渡ればプラスに働く可能性は低く、寧ろマイナスに働く可能性の方が多いにある。
自分の立場を危うくさせる恐ろしい行為だ。
それなのにも関わらず、これだけ多くの人がその"危険な行為"を行うのは、それ以上のメリットを当事者たちは感じているからに違いない。
それは、アリーナには到底想像すらできないことだった……
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