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第一章 僕の自殺を止めたのは
第12話 し、死んでる!?
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「いっただきまーす」
「いただきます」
テーブルの上には、先ほど近くのコンビニで買ってきたサンドイッチ。いつもなら食事は自分で作ることが多いのですが、最近ろくに買い物をしていなかったせいで、冷蔵庫の中にほとんど食材がなかったのです。それに、死神さん希望のサンドイッチは、一から作ろうとするとかなりの時間がかかりますしね。
死神さんは、パクパクと夢中でサンドイッチを頬張っています。頬張りすぎて、ほっぺがリスのように膨らんでいました。いや、リスというより、大好物を食す時の子どもと表現した方がいいかもしれません。
それにしても、人間と同じように死神もちゃんとした食事が必要なんですね。初めて知りました。
「いやはや、久々にまともな食事だよ。最近は、いろいろ忙しくて食事も全然とってなかったからさー。おいしいなあ」
「そういえば結局、死神さんはこの三日間何をしてたんですか?」
死神さんは、「やりたいことができたから」と言って、三日間、僕のもとを離れました。その間に何をしていたのか、僕はまだ聞いていません。
「あー。えっとね」
死神さんは、サンドイッチを食べる手を止め、人差し指でポリポリと自分の頬を掻き始めました。その顔には、ほんのり朱が差しています。
「実は、君と同棲する手続きしてたんだ」
「…………はい?」
皆さんは、思考が止まるという経験をしたことがあるでしょうか。僕はあります。そう、今この瞬間です。
「大変だったんだよ。両親を説得したり、仕事先の上司に賄賂渡したり。その他にもいろいろ。一番時間かかったのは両親の説得だね。なかなか折れてくれなくて。困った困った」
「…………」
「あれ? おーい。どうしたのー?」
「…………」
「おーい。反応してくれないと私辛いんだけど」
「…………」
「え!? し、死んでる!?」
「は! あ、あれ? 一瞬、意識が」
「あ、生きてた」
なんだかとんでもないようなことを言われた気がしますよ。もしかして、これは夢? ああ。そうですね。夢に決まってます。むしろ夢じゃなきゃ困ります。
「死神さん。もう一回聞いてもいいですか? この三日間、何してました?」
「だから、君と同棲する手続してたんだって」
はい。現実でした。
「ど、どうして?」
「だって、これから私、君の大切な人になるんだから。同棲するのが手っ取り早いよね。それに、同棲してれば毎日将棋ができるし」
なんとまあ無茶苦茶な。
「い、いやいやいや。さすがに急すぎます。いきなり同棲なんて」
いろいろとんでもない人だとは思っていましたが、まさかここまでとは。これが、死神ゆえの価値観だったりするのでしょうか? 普通の人間である僕には理解の外です。そもそも、僕たちはまだ会ってから日も浅くて。って、その言い方じゃ、何回も会って親しくなれば同棲OKみたいな……。
まとまらない思考。ぐちゃぐちゃと余計な考えが浮かんできては、泡のように消えていきます。混乱という言葉がこれほどまでに似合う場面というのもそうないでしょう。
「あ」
その時、死神さんは何かに気がついたように顔をゆがめました。
「もしかしてさ。私が君と同棲するの、君の負担になっちゃうのかな? それだったら、いや、だな」
不安げに僕を見つめる死神さん。僕の大切な人になる。そう宣言した死神さんにとって、自身の存在や行動が僕の負担になることは耐えられないのかもしれません。
「…………」
「…………」
僕たちの間に、沈黙が流れます。何かを告げたいのに、僕の口は言葉を紡いでくれないのです。それは、僕の心にまだ小さなしこりが残っていることを意味していました。本当に、これでいいのかと。再び、僕は苦しむことになるのではないかと。
「えっと。もしだめなら、私……」
長い長い沈黙を破ったのは、死神さんの声。その唇は、微かに震えていました。
……ああ、そうか。もう、答えなんて、最初から決まってる。
「あのですね」
死神さんの言葉を遮るように、僕は口を開きました。
「いただきます」
テーブルの上には、先ほど近くのコンビニで買ってきたサンドイッチ。いつもなら食事は自分で作ることが多いのですが、最近ろくに買い物をしていなかったせいで、冷蔵庫の中にほとんど食材がなかったのです。それに、死神さん希望のサンドイッチは、一から作ろうとするとかなりの時間がかかりますしね。
死神さんは、パクパクと夢中でサンドイッチを頬張っています。頬張りすぎて、ほっぺがリスのように膨らんでいました。いや、リスというより、大好物を食す時の子どもと表現した方がいいかもしれません。
それにしても、人間と同じように死神もちゃんとした食事が必要なんですね。初めて知りました。
「いやはや、久々にまともな食事だよ。最近は、いろいろ忙しくて食事も全然とってなかったからさー。おいしいなあ」
「そういえば結局、死神さんはこの三日間何をしてたんですか?」
死神さんは、「やりたいことができたから」と言って、三日間、僕のもとを離れました。その間に何をしていたのか、僕はまだ聞いていません。
「あー。えっとね」
死神さんは、サンドイッチを食べる手を止め、人差し指でポリポリと自分の頬を掻き始めました。その顔には、ほんのり朱が差しています。
「実は、君と同棲する手続きしてたんだ」
「…………はい?」
皆さんは、思考が止まるという経験をしたことがあるでしょうか。僕はあります。そう、今この瞬間です。
「大変だったんだよ。両親を説得したり、仕事先の上司に賄賂渡したり。その他にもいろいろ。一番時間かかったのは両親の説得だね。なかなか折れてくれなくて。困った困った」
「…………」
「あれ? おーい。どうしたのー?」
「…………」
「おーい。反応してくれないと私辛いんだけど」
「…………」
「え!? し、死んでる!?」
「は! あ、あれ? 一瞬、意識が」
「あ、生きてた」
なんだかとんでもないようなことを言われた気がしますよ。もしかして、これは夢? ああ。そうですね。夢に決まってます。むしろ夢じゃなきゃ困ります。
「死神さん。もう一回聞いてもいいですか? この三日間、何してました?」
「だから、君と同棲する手続してたんだって」
はい。現実でした。
「ど、どうして?」
「だって、これから私、君の大切な人になるんだから。同棲するのが手っ取り早いよね。それに、同棲してれば毎日将棋ができるし」
なんとまあ無茶苦茶な。
「い、いやいやいや。さすがに急すぎます。いきなり同棲なんて」
いろいろとんでもない人だとは思っていましたが、まさかここまでとは。これが、死神ゆえの価値観だったりするのでしょうか? 普通の人間である僕には理解の外です。そもそも、僕たちはまだ会ってから日も浅くて。って、その言い方じゃ、何回も会って親しくなれば同棲OKみたいな……。
まとまらない思考。ぐちゃぐちゃと余計な考えが浮かんできては、泡のように消えていきます。混乱という言葉がこれほどまでに似合う場面というのもそうないでしょう。
「あ」
その時、死神さんは何かに気がついたように顔をゆがめました。
「もしかしてさ。私が君と同棲するの、君の負担になっちゃうのかな? それだったら、いや、だな」
不安げに僕を見つめる死神さん。僕の大切な人になる。そう宣言した死神さんにとって、自身の存在や行動が僕の負担になることは耐えられないのかもしれません。
「…………」
「…………」
僕たちの間に、沈黙が流れます。何かを告げたいのに、僕の口は言葉を紡いでくれないのです。それは、僕の心にまだ小さなしこりが残っていることを意味していました。本当に、これでいいのかと。再び、僕は苦しむことになるのではないかと。
「えっと。もしだめなら、私……」
長い長い沈黙を破ったのは、死神さんの声。その唇は、微かに震えていました。
……ああ、そうか。もう、答えなんて、最初から決まってる。
「あのですね」
死神さんの言葉を遮るように、僕は口を開きました。
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