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コヨタ

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第9話 食事の時間です・前編

第9話・3 何かが繋がっている

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 医療棟・医務室にて──。
 ベッドの上でセセラは片手で頭を押さえ、額を濡らしたタオルを落としかけていた。

「っ……ぐ……」

 モニターに映る数値は、安定している。
 だが、眼鏡を外したその目元はタオルの下で赤く充血していた。

(ダメだ……見えねえ……)

「……先生、どこにいるんだよ……」

 それはその場に誰かがいれば絶対に言わない、弱音。誰かに聞かれるのが恥ずかしいと思っているから。

 視界が奪われれば他の五感が働く。セセラはこの部屋に誰もいないと見えないながらに確信していた。

 ──コン、コン……

 小さなノックの音。

「…………」

 セセラは身動ぎも返事もしなかった。

 だが、扉は静かに開けられ、柔らかな甘い香りがふわりと漂う。

「……入るぞ……セセラ」

 その声に、セセラはぴくりと反応した。

「……やっぱ来たか、先生」

 ゆっくりと体を起こす。
 そして目元からタオルを外すも、目は閉じられたまま。

 もう完全に何も見えていない。

「……こんな時にリミットが来たよ。先生もとっくに喉渇いてんだろ?」

 シエリは何も言わずに頷くと、ベッドの傍に椅子を置いて座る。

 そして、その小さな手が、セセラの体にそっと触れた。

「…………」

 シエリの指がセセラの胸元に添えられた瞬間──。

「……ッ……」

 ビクッ、と震えるセセラの体。

「……わりぃな、先生……待たせちまって……、今回はちょっと……やばいかもな」

 苦笑気味にそう言いながら、セセラはおどけた口調の奥に、ほんの僅かに滲んだ不安を隠していた。

「……な~んも見えねえ」

 シエリの手が、ぴくりと揺れる。

「……どうして、もっと早く……」

「……忙しくて連絡すんの無理だったんだよ。見えねえし。……でもまあ、来るのはわかってた。ていうか先生、俺が頼まなくても来てくれる人だろ」

 そう言って、少しだけ顔を上げる。
 目を開けてみても焦点の合わない──赤色から茶褐色へと色を変えたその瞳に、シエリは静かに顔を寄せた。

「……バカ。……こんなになるまで……」

 その小さな声は、まるで泣き声のようだった。

「すまねえ、先生だって苦しくなるのにな」

 ──そして、沈黙。

 部屋は暗く、ただ電子音だけが鳴っている。

「……もう……いいな?」

 シエリの問いに、セセラは微かに頷いた。

「……お好きにどうぞ、先生」

 その返事が終わるのを待たず──。

 ふわ……、と。
 小さな手が、セセラの首元に回される。

 そして、ゆっくりと──。

 シエリの唇が、舌が。

 ──牙が。

 首筋に触れた。

「……っ、……う………ッ……!!」

 強烈な痛み。

 そしてそれに伴う、毒の効果か、なんとも言い難い快感。

 吸う、というより、飲み込むように。
 その牙は普段よりも深く沈み、血管を捉えると同時に、セセラの体から力が抜けていく。

「せんせ……っ、……ちょ、いてえかも……」

(……ッ、……くそ……やっぱ、今回……深い……っ)

(マジで、痛い……ッ!!!)

 耐えるように、拳を握る。
 だが、それすらもシエリの体温に溶かされる。

「……はぁ……んっ、……セセラ……もっと……」

 熱く、執拗で、濃密な吸血。

 まるで、取り戻すかのように。
 まるで、失いかけたものを繋ぎ止めるように。

 ──ガタンッ!

 シエリが椅子を倒すと、更にその身を乗り出してセセラに跨り牙を突き刺す。

 倒された椅子の音にさえ、誰も反応しなかった。

「いて……ッ!!」

 室内を、ふたりが小さく漏らす声と吐息が埋めていく。

「あ゙……先生ッ、やべ……頭、ッ、なんか……、っ、きてる……(神経毒が)」

「……ん、……んくっ、セセラ、いっぱい出てる……(血が)」

 静かな部屋の中、重なる気配と音。
 それは主従を超えた、互いの

「……ん、ふ……フフ……これで、もう大丈夫だな……」

 シエリが満足そうに口を離すと、唇に伝ったを、そっと指で拭う。

「……っ、はあ……、はあ……っ……」

 セセラはベッドの端に倒れ込み、首筋を血で濡らしながら肩で息をしていた。

「……はあ……っはあ……、……なぁ……先生……」

「なに?」

「……ちょっとは、加減ってもんを……」

「無理」

 ニコッとシエリは笑う。

「キミが、あんな可愛い顔してたから……我慢できなかったんだもん♪」

 その声は、優しくて、ずるくて──どこか寂しそうだった。


 ◇


 ──数分後。

「……セセラ、落ち着いたか?」

 ベッドの端に腰掛け、セセラの額をそっと拭いながらシエリが問いかける。

 眼鏡をかけ直していたセセラは深く息を吐き、ぼんやりと天井を見上げた。

「……ああ……だいぶ、な。視界も戻った……少しずつハッキリしてきた」

「うん、よかった」

 シエリは小さく頷く。
 その声には、安堵と、ほんの微かな罪悪感が滲んでいた。

「……強すぎたかな?」

「……あぁ? ……あ、いや……気持ちよか……じゃねえ、ちょうどよかったよ……って、……言っとく」

「フフ、ありがとう」

「…………ッ」

 再び沈黙。
 だが、気まずさは無い。
 ふたりの間には、もう言葉にする必要の無い何かがあった。

「……なぁ、先生」

「うん?」

「こうやって、何度も命繋がれてると……たまに、思うんだよ」

「何を?」

「……俺、これがなんじゃねえかって」

「…………」

 シエリは笑わなかった。
 その問いには、笑顔で返せないことを知っていたから。

 だから、まっすぐに答えた。

「それでも……私は……キミだから求めるんだよ」

「…………っ……」

 その言葉に、セセラは少しだけ目を細めて──。

「……ずるいな、先生」

「ずるいのはお互い様だろう」

 互いに微笑んだ、その時。

 ──コンコン……!

 扉を叩く音が鳴る。

「……失礼します、薊野さん……! 上層から指令です!」

「……指令?」

「はい、戦闘班より報告。制圧区画で捕らえた異形体の一部が、原因不明のを起こしました」

「…………は……?」

 セセラは眉をひそめた。

「蒸発……? 自壊じゃなくて?」

「はい……まるで誰かに回収されたかのような、痕跡が──」

「……クソッ、まだ誰かが繋がってる……」

 先程まで寝転んでいた体が、即座に立ち上がる。

「先生、悪い。また現場戻る」

「……ああ。もう、目は大丈夫か?」

「もう十分だよ」

 最後にシエリの頭をぽんと撫でて、セセラは再び走り出した。

 ──“繋がっている者”がいる。

 あの異形は、生まれただけじゃない──“誰かの元へ戻った”のだ。

 セセラの分析と推理が、再び戦場を照らし始める。


 ◇


 龍調査機関・中央モニター室──。

「異形体の残骸、映像を再確認!」

 セセラがモニター室へ入るなり、職員たちが緊張した面持ちで端末に向かっていた。
 中央スクリーンには、先程捕獲され、拘束されていた異形の一部が映されている。

「これです……捕獲から13分後、突如として体組織の一部が溶解。通常の腐食や自己分解とは異なるパターンでした」

「熱反応は?」

「ありません。冷却系の異常も無し。まるでかのように、自然に消滅しています」

「…………」

 セセラはデータの時間軸を遡り、画面の数フレームを凝視した。

「……ここ、拡大してみろ」

 指差したのは、異形の体表。
 一瞬だけ──青白く、稲妻のような紋様が走っていた。

「……これは、“転送痕”……? まさか、あんな不定形の龍が、転送機能……?」

「違う」

 低く響くセセラの声。

「これはあいつ自身の力じゃない。外から命令が来たんだ。まるで回収命令みたいに……」

「……じゃあ、やっぱり誰かが操っている……?」

 セセラはひとつ、大きく息をついた。

「いや……誰かじゃない。だ」

「…………っ」

 その言葉に、部屋の空気が重くなる。

「俺たちは龍そのものばかり追ってきた。でも、使がいるとしたら……今回の侵入も、実験だった可能性がある」

 職員たちが息を呑んだ。

「しかも、ターゲットは明確にウチの龍憑き……リルと、レイラ。その因子を記録し、反応させ、喰らわせるように……」

「……内部情報が漏れていた?」

「間違いねえ」

 セセラのその目が鋭く光る──。

「犯人探しは継続中だ。けど、もう姿だけじゃねえ……その目的に、先に辿り着く」

 瞬時にセセラの分析が動き出す。
 レイラたちを狙い、異形の龍を操る“どこか”の存在──。

 その輪郭が、少しずつ浮かび上がり始めていた。

「転送、命令、因子……」

 セセラはモニターの前で立ったまま指を滑らせ、各データベースを高速で呼び出す。

「この転送痕に似たパターン……何か、他に記録がないか……?」

 職員のひとりが緊張しながらも端末を操作した。

「……ありました。3年程前……旧・第三研究区画周辺で確認された龍の一部が、類似の現象で消滅していた記録が……」

「3年前? 旧・第三研究区画……? そっち、確か……閉鎖になったろ」

「はい、施設内で“龍の暴走と記録消失”が同時に発生。……それ以上の調査は、何者かの手で打ち切られていました」

 その返答に、ぴくりと動くセセラの眉。

「……なんだそれ。都合よすぎんだろ。誰かが“封じた”と見るべきだな」

 セセラはデータの中に並んでいた関係者一覧をスクロールする。

 ──そして、そこに。

 見覚えのある名が、ふっと視界をかすめた。

 

「やっぱり……お前か……」

 ごく短く、セセラが呟いた声に──誰もが反応しきれなかった。ただ、その視線だけが凍りついたように冷たく、静かに確信を深めていった。

「よし。先生に報告を……」

「…………」

「……いや、俺が直接進める」

 セセラは一歩、前に出る。

「組織がいる。……あいつらを喰らう龍を育てようとしてる、どこかがな」


 ◇


 医療棟・療養エリア。

「……はぁ……」

 レイラは深く、長くため息をついた。

 柔らかい療養室のソファ。横にリルが座っている。

「……やっぱ、まだダメだな。オレ、足が軽くガクついてる。さっき全力疾走したからか……」

「私も……なんか、胸が息苦しくなる瞬間がある……」

 ふたりは黙って天井を見つめる。
 あのときは、ただ逃げるしかなかった。
 でも今、動かないでいると──体のあちこちが叫びを上げている。

「……まだ、戻ってきてないんだね、私たち」

「……ああ。回復した気になってたけど、やっぱ無理してたんだな」

 リルは自分の手のひらをじっと見つめた。

「……治ったじゃなくて、動けるだけだったんだな……」

 レイラも、小さく頷く。

「私たち、強くなったと思ってた。でも……まだ、全然足りないんだ」

「……足りないってのは、そうだな……」

 ふっと笑うリル。

「でも、死ななかったんだ。今回は」

「うん。……それだけでも、きっと意味があるよ」

 互いのぬくもりが、まだ確かにここにいることを教えてくれた。

 静かな時間。

 壁越しに聞こえるのは、誰かの足音と、カートを押す音。

「……ねえ、リル」

「ん?」

「……本当に休めるとき、来るかな」

「…………来るよ」

 リルは、曖昧な笑みで答えた。

「それまで、オレらが生き残れりゃな」

「うん……そうだね」

 視線が重なる。

 その時、扉の隙間から職員が声をかけてきた。

「おふたりとも、明日再検査となりました。ご準備をお願いしますね」

「はーい……」

「……またかよ……」

 ふたりの疲れた声が重なり、ふっと笑いが零れる。

 しかし、その笑顔の奥にあるのは──。
 まだ拭えない、深い予感だった。

 ──そして、中央モニター室。

「このネクって奴、確か……元は医療班にいたんだったな」

 セセラがモニター越しに映る履歴データを見ながら、ぽつりと呟く。

「そうです、元・医療技術課。現場ではあまり目立ちませんでしたが、ログイン記録や解析補助の腕は優秀でした。特に“因子管理サーバー”への接続頻度が……異様に多いです」

「……で、誰にも怪しまれてなかった?」

「……はい。線が細くて人当たりも良く、トラブルを起こしたこともありませんでした。ただ……彼、ずっと右目を眼帯で隠していて……それを理由に検診も免除されていたようで……」

「……っざけんなよ……。何年も騙して、それでも一度もボロ出さなかったってか……」

 髪をぐしゃっとかき乱しながら唸るセセラ。

「……そいつ、今どこにいる?」

 職員は首を横に振る。

「1ヶ月前に自主退職という形で処理されています。住所は転送されましたが、現在は居住記録も移動記録も途絶えていて……」

「……消されたな。人間社会からも、機関からも」

 セセラは深く腰を下ろし、机に肘をついた。

「なあ、お前ら……こういう奴が本気で動いたときって、痕跡なんか残すと思うか?」

「…………」

 ──誰も、すぐには答えられない。

「……むしろ残してるんだよ。残すことで、んだ」

「え……?」

「『俺がいた』っていう痕跡を、わざと見せてるんだよ。まるで、次に来るぞって合図みたいにな」

 沈黙が落ちる。

「……あいつ、絶対また来る」

 セセラの赤い瞳が、静かに燃え上がっていた。


 ◇


 ──深夜のモニター室。

 僅かな照明と機器の低い駆動音だけが響く。
 職員たちが疲労困憊の中、セセラはひとりモニター群の前で足を組み、映像を巻き戻し、再生し、また止めて……を繰り返していた。

「……何か引っかかる。絶対、ただの痕跡じゃねえ……」

 映っているのは、異形が回収される直前のフレーム。
 ノイズ交じりの中──ほんの一瞬、記録には“あり得ないもの”が映っていた。

「…………ん?」

 ──影。

 階段の奥、完全に死角のはずの位置に、が一瞬だけ映り込んでいた。

(ここに……立ってた……? 誰かが……?)

 セセラはその足元のシルエットをさらに拡大し、色調を調整する。

 ──そこには、確かに人間のもののような細く伸びた影と、足首のようなものが映っていた。

(……人間だ。これは、服の裾……?)

 ──白衣。

「……! おいこれ、録画の保存レベル上げろ。データ損失防止ロックかけとけ。誰にも消させるなよ」

 慌てて立ち上がり、職員に指示を飛ばす。

「これは……もうと見て間違いねえ」

 セセラは拳を握った。

「……あいつは、回収するだけじゃない。俺たちの反応を、見に来てやがった……」

 その時だった。

 ──ピコンッ

 モニター室の端末に、新規のメッセージが届いた。

 発信者は──不明。

「…………っ……!?」

 セセラは眉をひそめ、手元の端末を開く。

 そこには、たった1行のメッセージ。

『またすぐ会えますよ、薊野さん』

「……ッ」

 端末を握る手が、無意識に力んだ。

「……誘ってやがる……!」

 ネクだ。
 この語り口、この“丁寧すぎる距離感”。

 間違いない──奴が次に動く。

 セセラの背中に、久しぶりの戦慄が走っていた。



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