神子の余分

朝山みどり

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10 逃亡 2

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神子の腰を抱いて王子が歩く後ろを少し戸惑いながら神官たちがついて行く。オオヤナギは一番後ろを自分の後ろにホールを作り石を吸い込みながら歩いて行った。

すると、前方から神官見習いが走って来ると王子への挨拶もそこそこに、

「神官さま、給金が無くなりました」「わたしたちの給金が・・・・」「給金がないんです」

「見たんです」「こわくて・・・・」

口々にブラウン神官に言うのをハロルド王子は、興味深げに見ていたが、

「なにを見たんだ?そこの・・・言ってみろ」と一人に向かって言うと

「はい、わたしはそこの恥知らずが忍び込むのを見ました。お部屋を探したらいいと思います」

オオヤナギはなるほどと思った。僕の部屋に、お金があるのか!


そこに近衛隊と魔法士がやって来て、オオヤナギとミツルギ、ハロルド、と神官たちをまとめて取り囲んだ。

「そこのオオヤナギが王子殿下、神子様に危害を加える恐れがある。気をつけろ」

『頭悪すぎだろう。王子と神子が離れてから来いよ』とオオヤナギは二人から離れるよう自分が動いた。

オオヤナギの動きに連れて近衛隊が動き包囲の輪の中はオオヤナギひとりになった。

剣を抜いた近衛隊が輪を縮めてくる。ホールを出すと石を打ち出した。相変わらず当たらないが、びっくりして剣を取り落とす者が出た。

オオヤナギはその剣を拾った。それから水を雨つぶにして周囲に降らせた。雨が目にはいり視力を失った彼らが再びオオヤナギの姿を探した時、彼の姿はどこにもなかった。


逃げ出したオオヤナギは最短の道で門に向かっていた。剣は収納にしまった。

『あちこち行かされたのに感謝だな。道を覚えられた』と思いながら走る彼に、声をかけた者がいる。

「色男、どうした」とケントが笑っていた。

「あぁ、ケント。悪い急ぐんだ」

「外出か?」

「残念だな、今日は朝から出入り禁止だ」とケントが言った。

「なに?」とオオヤナギがあせったのを見て

「どうした?なにかあるのか?」とケントが真剣に言った。

周囲が急にうるさくなり、

「さがせ」「どこに行った?」と言う声が遠くで聞こえた。

「色男、おまえ・・・・こっちだ」とケントは走りだし、振り返り

「なにをしている!ついてこい。お前は恩人だ」と言うと走り出した。

オオヤナギも続いた。

横にずらりと長屋形式でドアが並んだ建物が見えるあたりで足を止めたケントは、周囲を確認すると

「ついてこい」と一番端のドアを開けてなかに入った。


「俺はまだ仕事が終わらないから、行くがここで待て。帰ってから事情は聞くが、俺たちは恩知らずじゃない。だから頼っていい。じゃあな」

ケントは出て行った。




外の人の気配にオオヤナギが身構えた時、

「今日は疲れた」「なんの騒ぎだったんだ?」「うん、なんだろうね」の声とともにドアが開いたが、三人とも口に人差し指を当てていた。

寸での所で声を抑えたオオヤナギは、右手をあげた。

「大丈夫だと思うが、隣に人がいるんだ」とビルが言うとオオヤナギはうなづいた。

「腹が空いただろう」とポケットから出したパンを手渡すと

「食ってから話せ」とビルが笑った。

「ちょうど、良かったよ、ペギーから預かったんだ。マントがあったんだって」とジョンが物入れからマントを取り出した。



それからオオヤナギは逃げてる事情を話したが、本人にもわからない事を説明するのは難しかったが、

命を狙われたから、逃げ出すと言う事は伝わった。

「じゃあ、今度外出する時、一緒に行こう。それまでここに隠れてろ」と言う事になりオオヤナギはうなづいた。

それからオオヤナギはビルに

「その足、治るまえに無理したろう?」

「まぁな・・・・俺たち無理しないわけには」と答えるのに

「わかる気がするが、治すからベッドに靴を脱いで」と言うと決まり悪そうに靴を脱いだ。

異臭が立ち込めた。オオヤナギは笑うと清浄をかけた。

「おぉ」「さすが」「匂いもすごかったが、さすが色男だ」

「内緒だ」と言いながら、足首に手をあててゆっくりと魔力を注いだ。

「無理するなと言いたいが・・・・明日また治療するから」と足首を軽くたたきながら言うと

「ありがとう」の後の言葉が続かなかった。

「ベッドを提供する」と搾り出すように言うと、ビルはベッドから降りた。







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