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虎
18 ディライト家の悪夢
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大変不味いことになった。
ジュディウス・ディライトは頭を抱えた。机の上には指輪がある。しかも血のついた指輪だ。
切り取った、とんでもない事を言っていた傭兵は取り敢えず監禁してある。
「なんという事だ」
なんの対策もできぬまま、次の日に王子は飛んで来た。運悪く、子供達に会わせろと鬼の形相で食ってかかるアマリリーとエイムド王子は顔を合わせた。
「リリー。何故ここに?」
「ルシリア伯爵の元へ行く前に挨拶だけでもと思い寄りましたら、子供達と引き離され、10日ほど軟禁されております!お助け下さい!」
「ではそなたも来るのだ。事態はかなり不味い方向に進んでおる……。リンを手放してはならんぞ」
メイドや執事の案内もなしに王子は、私の執務室に真っ直ぐやって来た。ノックもなしに扉を開かれ
「分かっておるな?」
そう尋ねられた。もう出すしかない。
血塗れの指輪を机の上に置いた。
「ゆ、指輪……?血?!」
アマリリーの顔から血の気が引いて行く。王子はそっと指輪を摘み上げ
「説明を」
それだけ言った。恐ろしい。
「リトと、カレン、ザザ、シュルが迷子になって……」
「違うな、逃げ出したんだろう」
「……探させると……指輪だけ見つかったと」
「本当にそうなのだな?」
「……はい」
そう言うしかない。事実が知られれば大変な不況を買う事になる。
「ネリス」
冷たい、冷たい声。王子は側近を呼んだ。
「地下に監禁されておりました。こちらです」
「なっ?!」
私は立ち上がった。何故!地下にはまだ生かしてあるあの傭兵がいるのに!
「気付かぬとでも思ったのか?これは私が念じれば辺りの音を拾って私に聞かせてくれるのだぞ?」
がたかと震えるアマリリーを伴って地下に降りると、ぼろぼろだがまだ生きている傭兵が鎖に繋がれていた。
「お前、この指輪の持ち主をどうした?」
「は……何度も教えたじゃねぇか……斬って捨てたよぅ……」
ヒヒヒ!汚く笑った。
「その指輪さえあれば良いんだろう?あのガキは山の中でチョロチョロ逃げ回って鬱陶しいからな、動けなくしてから、切り落としたぜ?」
「……その後は?」
「可愛い顔してたから、少し遊ぼうかと思ったけど、もう暗くなりかけてた。血の匂いに誘われて魔獣が来たら堪らんからな!崖から川に捨てたさ!」
「……リト……っ」
終わった。王子に聞かれてしまった。我が家にどんな沙汰が降りるのかかんがえただけで身震いする。
大体、今更アマリリーなど、受け入れなければ良かったのだ。
6人もいるアマリリーの子供達はみな、輝くように美しい。会って驚いた程だった。これなら、貴族に引く手数多だろう。
平民として育っても、正しく我が家の血を引いているのなら、厳しく教育すればなんとか使い物になる筈だ。
父上はそう言ったし、私も同意した。しかも長男は王子に婚約の指輪まで贈られたと言う。是非我が家に迎え入れなければと思ったのに。
どうせ平民だ。少し豪華な生活をさせてやればずっと居たいと願うはずなのに……子供達は逃げ出した。
そしてこのざまだ。
「何と言う事だ……」
「ディライト翁はアマリリーに謝りたいと言っていたが……それは我が父上の前だけの詭弁であったようだな」
この王子の目は鋭すぎる。目端が効くという良い噂とやる事が極端すぎるという悪い噂が混じり合う御仁だ。
「リリー、多分リトはカレン達を逃したはずだ。あの子はそうする。ルシリア伯の元へ行こう。カレン達を保護しなければならない。リトが無事なら、必ずルシリア領に戻って来る筈だ」
「わ、分かりました……そう、そうですね、子供達を探さないと……」
倒れる寸前のリリーを支えるのは子供への想いか。15年も経つと人は強くなるのだな。
「済まなかった、リリー。私がディライトの言葉を信じ、話したのが間違いであった」
「……私も心の何処かで、信じたかったのです。あの時は仕方がなかったのだと。愚かな自分が憎いです。また裏切られた、今度は息子を奪われた」
それでも泣かぬのは、腕に未子を抱いているから。
「王子、お手数ですが、我々をルシリア伯の元まで護衛していただけませんか?そして逃げ出した子供達を探すのを手伝っていただけませんか?」
「当然だ。今すぐ出よう。もう既に探索隊は出発しておる。私の乗って来た馬車でそのまま向かうぞ」
ペコリと、王子に頭を下げてたアマリリーは最後にこちらを1度だけ見た。
「人殺し」
静かにそう言い捨てて、私たちはもう2度と会う事は無かった。
ジュディウス・ディライトは頭を抱えた。机の上には指輪がある。しかも血のついた指輪だ。
切り取った、とんでもない事を言っていた傭兵は取り敢えず監禁してある。
「なんという事だ」
なんの対策もできぬまま、次の日に王子は飛んで来た。運悪く、子供達に会わせろと鬼の形相で食ってかかるアマリリーとエイムド王子は顔を合わせた。
「リリー。何故ここに?」
「ルシリア伯爵の元へ行く前に挨拶だけでもと思い寄りましたら、子供達と引き離され、10日ほど軟禁されております!お助け下さい!」
「ではそなたも来るのだ。事態はかなり不味い方向に進んでおる……。リンを手放してはならんぞ」
メイドや執事の案内もなしに王子は、私の執務室に真っ直ぐやって来た。ノックもなしに扉を開かれ
「分かっておるな?」
そう尋ねられた。もう出すしかない。
血塗れの指輪を机の上に置いた。
「ゆ、指輪……?血?!」
アマリリーの顔から血の気が引いて行く。王子はそっと指輪を摘み上げ
「説明を」
それだけ言った。恐ろしい。
「リトと、カレン、ザザ、シュルが迷子になって……」
「違うな、逃げ出したんだろう」
「……探させると……指輪だけ見つかったと」
「本当にそうなのだな?」
「……はい」
そう言うしかない。事実が知られれば大変な不況を買う事になる。
「ネリス」
冷たい、冷たい声。王子は側近を呼んだ。
「地下に監禁されておりました。こちらです」
「なっ?!」
私は立ち上がった。何故!地下にはまだ生かしてあるあの傭兵がいるのに!
「気付かぬとでも思ったのか?これは私が念じれば辺りの音を拾って私に聞かせてくれるのだぞ?」
がたかと震えるアマリリーを伴って地下に降りると、ぼろぼろだがまだ生きている傭兵が鎖に繋がれていた。
「お前、この指輪の持ち主をどうした?」
「は……何度も教えたじゃねぇか……斬って捨てたよぅ……」
ヒヒヒ!汚く笑った。
「その指輪さえあれば良いんだろう?あのガキは山の中でチョロチョロ逃げ回って鬱陶しいからな、動けなくしてから、切り落としたぜ?」
「……その後は?」
「可愛い顔してたから、少し遊ぼうかと思ったけど、もう暗くなりかけてた。血の匂いに誘われて魔獣が来たら堪らんからな!崖から川に捨てたさ!」
「……リト……っ」
終わった。王子に聞かれてしまった。我が家にどんな沙汰が降りるのかかんがえただけで身震いする。
大体、今更アマリリーなど、受け入れなければ良かったのだ。
6人もいるアマリリーの子供達はみな、輝くように美しい。会って驚いた程だった。これなら、貴族に引く手数多だろう。
平民として育っても、正しく我が家の血を引いているのなら、厳しく教育すればなんとか使い物になる筈だ。
父上はそう言ったし、私も同意した。しかも長男は王子に婚約の指輪まで贈られたと言う。是非我が家に迎え入れなければと思ったのに。
どうせ平民だ。少し豪華な生活をさせてやればずっと居たいと願うはずなのに……子供達は逃げ出した。
そしてこのざまだ。
「何と言う事だ……」
「ディライト翁はアマリリーに謝りたいと言っていたが……それは我が父上の前だけの詭弁であったようだな」
この王子の目は鋭すぎる。目端が効くという良い噂とやる事が極端すぎるという悪い噂が混じり合う御仁だ。
「リリー、多分リトはカレン達を逃したはずだ。あの子はそうする。ルシリア伯の元へ行こう。カレン達を保護しなければならない。リトが無事なら、必ずルシリア領に戻って来る筈だ」
「わ、分かりました……そう、そうですね、子供達を探さないと……」
倒れる寸前のリリーを支えるのは子供への想いか。15年も経つと人は強くなるのだな。
「済まなかった、リリー。私がディライトの言葉を信じ、話したのが間違いであった」
「……私も心の何処かで、信じたかったのです。あの時は仕方がなかったのだと。愚かな自分が憎いです。また裏切られた、今度は息子を奪われた」
それでも泣かぬのは、腕に未子を抱いているから。
「王子、お手数ですが、我々をルシリア伯の元まで護衛していただけませんか?そして逃げ出した子供達を探すのを手伝っていただけませんか?」
「当然だ。今すぐ出よう。もう既に探索隊は出発しておる。私の乗って来た馬車でそのまま向かうぞ」
ペコリと、王子に頭を下げてたアマリリーは最後にこちらを1度だけ見た。
「人殺し」
静かにそう言い捨てて、私たちはもう2度と会う事は無かった。
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