【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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33 俺、やらかした?

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 手に持っていたそれをポロリと落としてしまった。

あ!割れちゃう!

「よっ」

 上手にギアナ様が空中で捕まえてくれた。良かった!ひとまず、胸を撫で下ろした。

「ありがとうございます」

「リト」

「はい。何ですか??」

「色々聞きたい事があるんだが、良いかな?」

 ん?何だろう??そして俺は周りを見回す。辺りはとっぷり日が暮れて真っ暗。
 お屋敷の方から何十人も皆んながこっちを見ている。

「あ、あれ??」

 お腹が急にぐーーーーっと良い音を立てた。

「まずは、何か食べないとだな」

「はいぃぃ……」

 これは恥ずかしい……。食堂でパンとスープを貰う。ああ!美味しい!俺ってばどんだけ集中してやってたんだ……恥ずかしい!そしていつから見られてたんだろう!

「リト、まずこれだが虎で良いんだな?しかも白いから俺だな?」

 えっ!1番最初そこなの?!まずそこなの?!と、心の中でツッコミを入れてから答えた。

「え、あ、はい……そのつもりです……」

 座って両足を前に伸ばした姿の白い虎……のつもりですが、ころんと丸く可愛らしくなってしまった。

「俺が貰っていいんだな?!」

「え!あ、ごめんなさい!書類を押さえるのにちょうど良いかと思ったんですが、あまり上手に出来なくて……!別の物に作り変えますね!!」

「駄目だ!寄越せ!」

「いえっ!壊して別の物に!」

「俺のだ!壊すな!!!」

「いえいえ!」

「あのーーー」

 言い合っている俺たちの間に執事さんがニョキっと顔を出した。

「あのグラスについて聞きたい者がたくさんおるのですが……」

「あ!そうだった。どうですか?使えそうですか??怪我してから初めてやったので大変でした!」

 テーブルの上に10脚のグラスが乗っている。うん、大きさも形もなかなか揃ってまあまあの出来だ。

「使えそうも何も……こんな美しいグラス……使っていいのか?」

 ギアナ様が1つ手に取っている。そんなに見ちゃ作りが甘いところが判っちゃう!

「えっ!やっぱりダメでした?!うーん、ごめんなさい!なんとか使い物にならないかと思ったんですが……!手の怪我ってやっぱり響きますね。もう少し良くなればもうちょっと良い物が出来ると思うんです」

「これ以上良い物を作ってどうする?!国宝にする気かーーー!」

「うわーー!ごめんなさいー!今すぐ割って作り直してきますーーー!」

「割るなーー!!」


「だまらっしゃいっ!!」

「「ひゃっ!」」

 この執事さん、こんな大きな声出たんだ……びっくりした!こほん、咳払いを一つして、執事さんは喋りだす。

「リトさん、まずこのグラスは素晴らしいです。我が家で使ってよろしいですか?」

「ミミーが壊した物の代わりになればと思ったので……」

 ふむ。執事さんはグラスを一つ持ち上げる。

「透明度が段違いですね。澄んだ水の様に美しい。そしてこの薄さ……リトさん、あなたは一体何者なんですか?」

「え?ただの木こりの息子ですが……」

 執事さんとギアナ様は顔を見合わせてたけど、本当に木こりの息子だしなあ。

「ま、まあ。このグラスは使ってもよろしいのですね?」

「使えますか?!良かった!どうぞよろしくお願いします!」

 ぺこりと頭を下げると、向こうからミミーが走って来た。

「リトさーーーん!ありがとうぉぉ!!私!私ぃ!!とんでもないことをしたってえ!!!どうしようかと、どうしようかとぉ!!」

「えへへ、俺の趣味が役に立って良かったよ。でももう壊さないでね」

「わかったー!ありがとう!リトさん!」

 涙と鼻水にまみれたミミーは、先輩に付き添われて帰って行った。良かった良かった!

「一件落着!」

「いや待て、リト」

 ギアナ様に止められた。

「まだサラマンダーは良い。なんだ?他に風と土の精霊もいなかったか?」

「ええ、ぴゅーやんにザックですね。さっきのガラスを白くする時に手伝ってくれます」

 いい奴らですよ!

「三系統の精霊と契約しているのか……どうなってるんだ?リト、お前は大魔導師なのか?」

「?だから俺は木こりの息子ですってば……」

 ギアナ様は変な所で人の話を聞いてないなぁ!

「いや!火の精霊と契約しているだけでも凄いのに、風と土もとはあり得ないぞ!」

「契約ってそんな凄いことしてないですよ。ちょっと手伝って貰っているだけですよ」

 精霊達は遊び疲れたのかもう姿を消し寝ている。そんな自由な仲なんだよ!

「いや、しかし……」

「そ、そんなに変ですか……?」

 お、俺って異常だったのかな….山の中暮らしで比べる人とかいなかったから、これくらい割と大丈夫かと思ってたよ!
 
「ご、ごめんなさい……俺、山の中で暮らしてて、普通が分かってなかったみたいです……もうしないので怒らないで下さい……」

 やってしまった。俺の常識の無さがこんなところで……。あれ?もしかして俺嫌われた?あっ……どうしよう……。

「お、俺!もう寝ますーーーー!」

 とりあえず走って逃げた。色々やらかしすぎて自分が恥ずかしい!




 
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