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打倒!元実家!
72 切られる
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貴族の御用聞きとして、財を築いて来たランド商会のデートーン・ランドは岐路に立たされていた。
少し前から、商売仲間の態度がよそよそしくなって行ったのである。おかしいと首を傾げても、何一つ心当たりはない。デートーンは悩んでいた。
そして先日あったと言う商人達を招いた小さなパーティの招待状はランド商会には届かなかった。
「うちより規模の小さい商会にも届いているのに、何故?」
商人は横の繋がりも大事にする。商人仲間の間で浮いてしまう事は、商人としては避けたい。悩んでも悩んでも一向に訳が分からないデートーンは古くからの友人に必死に願い出て、尋ねてみた。
このままでは、ランド商会は立ち行かなくなってしまう。
「あー……君とは古い付き合いだ……。違うかもしれんが、俺の考えを教えよう」
火の粉はかぶりたくないが、ランド商会が沈みゆくのを黙って見ているのも忍びない。何せ直接にデートーン・ランドは悪い事などしていないのだから。
「お前さん、公爵家のディライト家の御用聞きやってるよな、そのせいだ」
「え?!確かにあまり良い噂を聞かぬ家だが、金払いは悪くないぞ!」
訝しむデートーンに友人は語り始める。
「最近出来た勢いのある商会を知っているか?リリー商会と言う……そこの代表、名前をリリーと言うのだが……彼女は元貴族だ。いや、今も貴族なのかもしれないがな」
デートーンは鈍い男では無い。
「まさか、リリーってアマリリー・ディライト様の事か?!現王の兄に断罪されて市井に落とされたアマリリーお嬢様か?!」
「そうだ。そのアマリリー様がリリーとしてあの商会の代表になっていて……ご実家を相当恨んでいらっしゃる」
「まさか……!だってあの事件はもう10年以上前の事じゃないか!」
それでもデートーンは覚えていた。アマリリーは良い顧客だったから。いつでも進めるままに高い買い物をしてくれたお嬢さまであった。
「それがまた最近やらかしたらしくてな?アマリリー様が挨拶だけと寄ったらそのまま軟禁されて、子供達全員取り上げられてかけ……1番上の息子は殺されかけたそうだ」
貴族は怖いねぇ……商人達は身を震わせる。
「でな?相当ディライト家を恨んでいて……多分ありゃ、乗っ取るか潰すか狙ってると思う。リリー商会の実質トップの男がまた気持ち悪いくらいな切れ物でな……バチュールの白虎、知ってるか?」
「噂では」
この国よりかなり南の国で、強引な手段すら用いて駆け上がった大商人の呼び名だったはずだ。白虎が嘲笑えば国が落ちるという実しやかに流れていた。
「リリー商会を仕切ってるのが白い虎の獣人なんだわ……あいつが多分、バチュールの白虎だ」
「なんでそんな大物がウィシュバーグに?!」
2人の会話は熱くなって来た。一息入れる為にお茶を飲む。
「そこに、リリーさんの死にかけた息子が絡んでくるのよ。名前はリトと言って今、学園に通っている学生らしいんだが……まあ、男がどうかわからんくらい容姿が整っていてな、俺でもすごく可愛いと思ったよ」
「で?その美人な息子がどうしたんだよ」
「バチュールの白虎が、そのリト君に惚れに惚れ抜いているらしい。いやぁ、人目も憚らずベタベタくっ付いて凄かったぜ」
男同士だよな?と確認するが、なんというかそういうレベルじゃなかった、と言われデートーンはその辺の追求はやめた。色々な愛があるからな……。
「でな?その目の中に入れても痛くないリト君に大怪我を追わせて、危なく殺される所だったのは、どうもディライト家のせいらしいんだ。それを聞いた白虎は何をすると思う?」
「まさか……本気か!」
「……だから、お前の商会はこんな目に遭ってるんだ」
物を売るのが仕事なのに、売り物が入ってこない。今は在庫を細々と売っているが、もうすぐ底をつく。傾きかけても誰も金を貸してくれないだろう。
「うちがディライト家と取引をしているから……?」
友人は肯定も否定もしなかった。これ以上踏み込みたくないのだ、白虎に睨まれ、沈みゆく定めの泥舟に乗りたくなどない。
「考えろ、デートーン。そして迅速に動け。虎は人間より素早く動くぞ。しかも怒っているんだ、気がついたら喉笛を食いちぎられていた、なんてことにならないように」
「分かった……ありがとう」
デートーンは頭を下げて、友人に感謝する。
「しかしな、実は俺もディライト家、嫌いなんだ」
「何故だ?商人なら噂で好き嫌いしてはいかんだろう?」
いやな?友人は懐から愛用のペンを取り出した。美しい細工のガラスのペン。先日、あのパーティで貰った物だ。
「みろ、この素晴らしい技術。美しく、使い心地も良く、最高の品だ」
デートーンは手に取るとほう!と感嘆の息を漏らした。これは売れる!あればあるだけ売れる素晴らしい品だ。
「デートーン。これは件のリト君の作品だ。彼は富を生み出す魔術師なんだ……」
「なんと……!あのアマリリー様の御子息が!」
友人はデートーンからガラスペンを返却してもらい、大切にしまった。ガラスなので衝撃には弱いから。
「そのリト君なんだけど、殺されかけた時に……左手をざっくりやられたらしく、ここら辺がない」
左手の薬指から小指の辺りを指さす。
「わかるか?巨万の富を産み出す魔術師の、職人の手を切ったんだ。この失われた物の大きさ!商人なら分かるだろう?精度、技巧、ああ!考えただけで、腹が立つ!もし、怪我がなければリト君の産み出す作品はどんな物が出来たのか!」
デートーンも震えていた。あのガラスペンは素晴らしかった。だがあの上を行く物が出来たかも知れないのに!それはそのリト君と言う子息の怪我によって失われたと言う。そしてその原因はディライト家だと言う。
「ありがとう、今日は本当に良い話が聴けたよ。近々、そのパーティに私も出られると良いな」
「……決めたか」
デートーンは頷いた。先祖からの付き合いがなんだ!クソ喰らえ!素晴らしい職人に怪我を負わせて、作品を台無しにする奴は人間じゃねーよ!
「私の代でランド商会を潰すわけにはいかんからね、従業員を路頭に迷わせる訳には行かないよ」
いかにも正しい経営者の顔で笑うが、腹の中身は素晴らしい作品に出会えなくなったことの怒りで満杯だ。
「くくっ!違いない」
友人は笑いながらランド商会を出た。
「さあ!もう少しの辛抱だよ!ここを乗り切ったら皆んなにボーナス出すから、頑張ろうな!」
「はい!旦那様!」
デートーン・ランドのランド商会は程なく持ち直し、ホッと胸を撫で下ろすのであった。
少し前から、商売仲間の態度がよそよそしくなって行ったのである。おかしいと首を傾げても、何一つ心当たりはない。デートーンは悩んでいた。
そして先日あったと言う商人達を招いた小さなパーティの招待状はランド商会には届かなかった。
「うちより規模の小さい商会にも届いているのに、何故?」
商人は横の繋がりも大事にする。商人仲間の間で浮いてしまう事は、商人としては避けたい。悩んでも悩んでも一向に訳が分からないデートーンは古くからの友人に必死に願い出て、尋ねてみた。
このままでは、ランド商会は立ち行かなくなってしまう。
「あー……君とは古い付き合いだ……。違うかもしれんが、俺の考えを教えよう」
火の粉はかぶりたくないが、ランド商会が沈みゆくのを黙って見ているのも忍びない。何せ直接にデートーン・ランドは悪い事などしていないのだから。
「お前さん、公爵家のディライト家の御用聞きやってるよな、そのせいだ」
「え?!確かにあまり良い噂を聞かぬ家だが、金払いは悪くないぞ!」
訝しむデートーンに友人は語り始める。
「最近出来た勢いのある商会を知っているか?リリー商会と言う……そこの代表、名前をリリーと言うのだが……彼女は元貴族だ。いや、今も貴族なのかもしれないがな」
デートーンは鈍い男では無い。
「まさか、リリーってアマリリー・ディライト様の事か?!現王の兄に断罪されて市井に落とされたアマリリーお嬢様か?!」
「そうだ。そのアマリリー様がリリーとしてあの商会の代表になっていて……ご実家を相当恨んでいらっしゃる」
「まさか……!だってあの事件はもう10年以上前の事じゃないか!」
それでもデートーンは覚えていた。アマリリーは良い顧客だったから。いつでも進めるままに高い買い物をしてくれたお嬢さまであった。
「それがまた最近やらかしたらしくてな?アマリリー様が挨拶だけと寄ったらそのまま軟禁されて、子供達全員取り上げられてかけ……1番上の息子は殺されかけたそうだ」
貴族は怖いねぇ……商人達は身を震わせる。
「でな?相当ディライト家を恨んでいて……多分ありゃ、乗っ取るか潰すか狙ってると思う。リリー商会の実質トップの男がまた気持ち悪いくらいな切れ物でな……バチュールの白虎、知ってるか?」
「噂では」
この国よりかなり南の国で、強引な手段すら用いて駆け上がった大商人の呼び名だったはずだ。白虎が嘲笑えば国が落ちるという実しやかに流れていた。
「リリー商会を仕切ってるのが白い虎の獣人なんだわ……あいつが多分、バチュールの白虎だ」
「なんでそんな大物がウィシュバーグに?!」
2人の会話は熱くなって来た。一息入れる為にお茶を飲む。
「そこに、リリーさんの死にかけた息子が絡んでくるのよ。名前はリトと言って今、学園に通っている学生らしいんだが……まあ、男がどうかわからんくらい容姿が整っていてな、俺でもすごく可愛いと思ったよ」
「で?その美人な息子がどうしたんだよ」
「バチュールの白虎が、そのリト君に惚れに惚れ抜いているらしい。いやぁ、人目も憚らずベタベタくっ付いて凄かったぜ」
男同士だよな?と確認するが、なんというかそういうレベルじゃなかった、と言われデートーンはその辺の追求はやめた。色々な愛があるからな……。
「でな?その目の中に入れても痛くないリト君に大怪我を追わせて、危なく殺される所だったのは、どうもディライト家のせいらしいんだ。それを聞いた白虎は何をすると思う?」
「まさか……本気か!」
「……だから、お前の商会はこんな目に遭ってるんだ」
物を売るのが仕事なのに、売り物が入ってこない。今は在庫を細々と売っているが、もうすぐ底をつく。傾きかけても誰も金を貸してくれないだろう。
「うちがディライト家と取引をしているから……?」
友人は肯定も否定もしなかった。これ以上踏み込みたくないのだ、白虎に睨まれ、沈みゆく定めの泥舟に乗りたくなどない。
「考えろ、デートーン。そして迅速に動け。虎は人間より素早く動くぞ。しかも怒っているんだ、気がついたら喉笛を食いちぎられていた、なんてことにならないように」
「分かった……ありがとう」
デートーンは頭を下げて、友人に感謝する。
「しかしな、実は俺もディライト家、嫌いなんだ」
「何故だ?商人なら噂で好き嫌いしてはいかんだろう?」
いやな?友人は懐から愛用のペンを取り出した。美しい細工のガラスのペン。先日、あのパーティで貰った物だ。
「みろ、この素晴らしい技術。美しく、使い心地も良く、最高の品だ」
デートーンは手に取るとほう!と感嘆の息を漏らした。これは売れる!あればあるだけ売れる素晴らしい品だ。
「デートーン。これは件のリト君の作品だ。彼は富を生み出す魔術師なんだ……」
「なんと……!あのアマリリー様の御子息が!」
友人はデートーンからガラスペンを返却してもらい、大切にしまった。ガラスなので衝撃には弱いから。
「そのリト君なんだけど、殺されかけた時に……左手をざっくりやられたらしく、ここら辺がない」
左手の薬指から小指の辺りを指さす。
「わかるか?巨万の富を産み出す魔術師の、職人の手を切ったんだ。この失われた物の大きさ!商人なら分かるだろう?精度、技巧、ああ!考えただけで、腹が立つ!もし、怪我がなければリト君の産み出す作品はどんな物が出来たのか!」
デートーンも震えていた。あのガラスペンは素晴らしかった。だがあの上を行く物が出来たかも知れないのに!それはそのリト君と言う子息の怪我によって失われたと言う。そしてその原因はディライト家だと言う。
「ありがとう、今日は本当に良い話が聴けたよ。近々、そのパーティに私も出られると良いな」
「……決めたか」
デートーンは頷いた。先祖からの付き合いがなんだ!クソ喰らえ!素晴らしい職人に怪我を負わせて、作品を台無しにする奴は人間じゃねーよ!
「私の代でランド商会を潰すわけにはいかんからね、従業員を路頭に迷わせる訳には行かないよ」
いかにも正しい経営者の顔で笑うが、腹の中身は素晴らしい作品に出会えなくなったことの怒りで満杯だ。
「くくっ!違いない」
友人は笑いながらランド商会を出た。
「さあ!もう少しの辛抱だよ!ここを乗り切ったら皆んなにボーナス出すから、頑張ろうな!」
「はい!旦那様!」
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