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そして入学へ
56 イノシシ現る。
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流石に殺される~とか助けてーと大声で叫ばれると、名指しを受けてしまった王太子ルドルフ様から……何故かヴィンセントお兄様まで駆けつけねばならない状況になってしまったわよね。
「一体何が……?」
その声が聞こえる位置にルドルフ様やお兄様が居たのも良くなかったのだけれど、顔を出したらユウキさんが飛んできたわ。怖い、体当たりね。
「ルドルフ様! ヴィンセント様、助けて! あの女が私を殺すって脅してくるんです!」
凄い勢いで指を差されたのは、アネッサ・バウンズ伯爵令嬢。彼女は真っ青になってくらりと倒れかけ、お友達の女生徒に支えて貰っている。
「わ、私はそのような事は一言も……」
「言ったわ!! 助けて怖い! 殺される!! ルドルフ様ッ!」
イノシシのような突進を止めたのはルドルフ様の護衛のエディソン君(22)で、よくやったわ! と褒めてあげたい。エディソン君(22)はお嫁さん募集中だからいい人がいたら紹介してあげなくちゃ。
「ヴィンセント様は助けてくださいますよね!?」
殿下に凸れないと分かると標的をお兄様に替えただと!? お兄様には護衛のクラブ10がついてる、良かった。クラブ10オリオス、あいつは出来る奴よ、イノシシだろうがロケットだろうが撃ち落としてくれるはず。まずは二人に護衛がいることを確認してから私はアネッサ・バウンズを助けなければならない。だって私が言わなきゃいけなかった事を言ってくれたのよ。それにバウンズ家はクラブ家ゆかりのお家だからね……領地でおミカンを作って貰ってるの。美味しいわよ! 私はすっとアネッサ様に近づいて彼女に声をかけなくちゃ。
「大丈夫? アネッサ様……」
「マリエル様……私、私……」
「大丈夫分かっていますわ。アネッサ様は何も悪い事をしていない、そうでしょう?」
「マリエルさまぁ……」
可哀想にカタカタ震えている……立っているのもやっとね。そんなアネッサ様とは逆に仁王立ちでこちらを睨みつけるユウキさん。
「マ、マリエル・クラブ! あなたがその子を唆したのね!? 酷いわっ! 私が聖女だからって酷い酷い!!」
どうしてそうなるんだろう……? 同じ「トランプる!」好きなら何か通じるモノがあると思っていたのに、どうもこの聖女ユウキと私は違うみたい。同じ作品を好きでも相容れない時は相容れないわよね? この人、同担拒否派なのね。それに……酷い酷いしか言わないから何がどう酷いか理由もわからない。何よりルドルフ様とお兄様が困ってるじゃない。推しの笑顔を曇らせたるとは度し難し! 私だって怒る時は怒るわよ!
「貴女が聖女でも何でもいいのですが、決めつけで物事を語るのはおやめください。それにそんな大声で叫んで流石に迷惑でしょう」
「なっ!」
学園の中いっぱいに響き渡るかと思う位の大声でしたからね。ルドルフ様とお兄様もすーっと私の傍に寄って来てくれます。こういうさりげない動きは流石としか言いようがありませんね。
「王太子殿下、お兄様。こちらの方はバウンズ伯爵家令嬢、アネッサ様ですわ」
「ああ、バウンズ伯爵には世話になっているね」
毎年どっさりおミカンを送ってくれる気前のいい伯爵なんだもん。子供の頃からミカン風呂に入ったわよね、私達。
「ふむ……何があったか話を聞かせてくれるかい? バウンズ伯爵令嬢」
「は、はい……」
ルドルフ殿下は優しくアネッサに声をかけて何があったかを聞き始める。当然ながら伯爵令嬢のアネッサ様から聞くわよ、ユウキさんは子爵令嬢扱いですもの。
「え!? ど、どうしてそっちにいるの……!? 私が被害者なのよ!!」
ユウキさんが気づかない間に一人ぼっちのユウキさんと私達、という図に書き換わっていたわ……これはお兄様とルドルフ殿下のせいなんだけど、私がアネッサ様側についたからこっちへ来たという事ではないと思うけれど。
「……ですから、今の様な態度ではいずれこの学園にいられなくなり自ら出て行くことになりますよ、とお伝えしたのです……それなのにあのように言われて……うううっ」
「アネッサ様、大丈夫よ」
大抵の令嬢はあんなに大声を出されて、殺される呼ばわりされたら倒れるわよ? 私みたいな子の方が少ないんだから。真っ青な顔でブルブル震えるアネッサ様の背中をそっと支える。流石に倒れてしまわれると事の顛末が彼女の口から聞けないからね……頑張って、アネッサ様。
「ありがとうアネッサ嬢。君は悪くないよ」
ルドルフ殿下は優しくアネッサ様に事情を聞いてくれた。この場を仕切るのはやはり一番権力のある王太子殿下になってしまう。
「マリー、下がって」
そしてなぜお兄様は私を庇うように立っていらっしゃるのかしら? 別にユウキさんは猛獣でもなんでもないし、狙われているのはお兄様でしてよ……? いやでもちょっとイノシシっぽかったかな?
「ヴィンセント様、マリエル様。絶対に私の陰から出ないでください。アレがキシュの報告に有ったヤツか……あの類は突然何をし出すか見当も付かん、下がってください」
ちょっと、ちょっとクラブ10のオリオスまで戦闘態勢に入ってる?な、なにがどうなってるの?一応ユウキさんも貴族令嬢なのよ?……いや、どう、かな……令嬢じゃないかも……イノシシ? ロケット……?
「一体何が……?」
その声が聞こえる位置にルドルフ様やお兄様が居たのも良くなかったのだけれど、顔を出したらユウキさんが飛んできたわ。怖い、体当たりね。
「ルドルフ様! ヴィンセント様、助けて! あの女が私を殺すって脅してくるんです!」
凄い勢いで指を差されたのは、アネッサ・バウンズ伯爵令嬢。彼女は真っ青になってくらりと倒れかけ、お友達の女生徒に支えて貰っている。
「わ、私はそのような事は一言も……」
「言ったわ!! 助けて怖い! 殺される!! ルドルフ様ッ!」
イノシシのような突進を止めたのはルドルフ様の護衛のエディソン君(22)で、よくやったわ! と褒めてあげたい。エディソン君(22)はお嫁さん募集中だからいい人がいたら紹介してあげなくちゃ。
「ヴィンセント様は助けてくださいますよね!?」
殿下に凸れないと分かると標的をお兄様に替えただと!? お兄様には護衛のクラブ10がついてる、良かった。クラブ10オリオス、あいつは出来る奴よ、イノシシだろうがロケットだろうが撃ち落としてくれるはず。まずは二人に護衛がいることを確認してから私はアネッサ・バウンズを助けなければならない。だって私が言わなきゃいけなかった事を言ってくれたのよ。それにバウンズ家はクラブ家ゆかりのお家だからね……領地でおミカンを作って貰ってるの。美味しいわよ! 私はすっとアネッサ様に近づいて彼女に声をかけなくちゃ。
「大丈夫? アネッサ様……」
「マリエル様……私、私……」
「大丈夫分かっていますわ。アネッサ様は何も悪い事をしていない、そうでしょう?」
「マリエルさまぁ……」
可哀想にカタカタ震えている……立っているのもやっとね。そんなアネッサ様とは逆に仁王立ちでこちらを睨みつけるユウキさん。
「マ、マリエル・クラブ! あなたがその子を唆したのね!? 酷いわっ! 私が聖女だからって酷い酷い!!」
どうしてそうなるんだろう……? 同じ「トランプる!」好きなら何か通じるモノがあると思っていたのに、どうもこの聖女ユウキと私は違うみたい。同じ作品を好きでも相容れない時は相容れないわよね? この人、同担拒否派なのね。それに……酷い酷いしか言わないから何がどう酷いか理由もわからない。何よりルドルフ様とお兄様が困ってるじゃない。推しの笑顔を曇らせたるとは度し難し! 私だって怒る時は怒るわよ!
「貴女が聖女でも何でもいいのですが、決めつけで物事を語るのはおやめください。それにそんな大声で叫んで流石に迷惑でしょう」
「なっ!」
学園の中いっぱいに響き渡るかと思う位の大声でしたからね。ルドルフ様とお兄様もすーっと私の傍に寄って来てくれます。こういうさりげない動きは流石としか言いようがありませんね。
「王太子殿下、お兄様。こちらの方はバウンズ伯爵家令嬢、アネッサ様ですわ」
「ああ、バウンズ伯爵には世話になっているね」
毎年どっさりおミカンを送ってくれる気前のいい伯爵なんだもん。子供の頃からミカン風呂に入ったわよね、私達。
「ふむ……何があったか話を聞かせてくれるかい? バウンズ伯爵令嬢」
「は、はい……」
ルドルフ殿下は優しくアネッサに声をかけて何があったかを聞き始める。当然ながら伯爵令嬢のアネッサ様から聞くわよ、ユウキさんは子爵令嬢扱いですもの。
「え!? ど、どうしてそっちにいるの……!? 私が被害者なのよ!!」
ユウキさんが気づかない間に一人ぼっちのユウキさんと私達、という図に書き換わっていたわ……これはお兄様とルドルフ殿下のせいなんだけど、私がアネッサ様側についたからこっちへ来たという事ではないと思うけれど。
「……ですから、今の様な態度ではいずれこの学園にいられなくなり自ら出て行くことになりますよ、とお伝えしたのです……それなのにあのように言われて……うううっ」
「アネッサ様、大丈夫よ」
大抵の令嬢はあんなに大声を出されて、殺される呼ばわりされたら倒れるわよ? 私みたいな子の方が少ないんだから。真っ青な顔でブルブル震えるアネッサ様の背中をそっと支える。流石に倒れてしまわれると事の顛末が彼女の口から聞けないからね……頑張って、アネッサ様。
「ありがとうアネッサ嬢。君は悪くないよ」
ルドルフ殿下は優しくアネッサ様に事情を聞いてくれた。この場を仕切るのはやはり一番権力のある王太子殿下になってしまう。
「マリー、下がって」
そしてなぜお兄様は私を庇うように立っていらっしゃるのかしら? 別にユウキさんは猛獣でもなんでもないし、狙われているのはお兄様でしてよ……? いやでもちょっとイノシシっぽかったかな?
「ヴィンセント様、マリエル様。絶対に私の陰から出ないでください。アレがキシュの報告に有ったヤツか……あの類は突然何をし出すか見当も付かん、下がってください」
ちょっと、ちょっとクラブ10のオリオスまで戦闘態勢に入ってる?な、なにがどうなってるの?一応ユウキさんも貴族令嬢なのよ?……いや、どう、かな……令嬢じゃないかも……イノシシ? ロケット……?
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