【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華

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番外編 ウィルヘルムの結婚

本当の心

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 ウィル様はすっかりエルフリーデ嬢と仲良くなっている。エルフリーデ嬢を利用して矢面に立たせて、サイオトリス王国を取るつもりなのだろう。

 エルフリーデ嬢はサイオトリス王国の公爵令嬢だ。王家の血も引いているらしい。エルフリーデ嬢を無実の罪で断罪した、無能な王太子を罰することもしない王家にいちゃもんをつけるつもりか。

 地下組織のメンバーは王家に恨みがあったり、このまま王家をのさばらしていては、民が幸せにはなれないと国家転覆を企てている者達だ。リーダー格ねウォレス様も王家に深い恨みがあると聞いた。ウィル様が乗り出せば願ったり叶ったりなのかもしれない。

 さて、どうやって国を乗っ取るのだろう。戦争にならないようにジェフリー様やヒューイ様達は動いているようだが、もし、戦争になったら苦しむのは民達だ。

 私はウィル様の命令でエルフリーデ嬢を癒す役目を担っているが、あんなことがあったのにエルフリーデ嬢は全く傷ついていない。

 私ならあんな目にあったら心を閉ざしてしまうかもしれないのに。

 屋敷に戻り夜ご飯を食べたあと、ジェフリー様に話をしてみた。

「エルフリーデ嬢は心に傷がないのです。だから、癒しのアンテナに引っ掛からなかったのだと思うのですが、まだ18歳の女の子があんな目にあって、傷つかないなんてあり得ない。淑女教育の賜物なのかしら?」

 ジェフリー様はふんと鼻をならした。

「私が思うに、エルフリーデ嬢はわざとあの場で婚約破棄をさせたのではないのかな?」

「えっ? なぜ?」

「全ては王家をぶっ潰すためのシナリオだったとか。ひょっとしたらその男爵令嬢もグルだったりしてね」

 ジェフリー様の言葉にわたしの頭は混乱している。まさか、そんなこと思ってもみなかった。

「ロンメル公爵が絵を描いているのか、地下組織のリーダー格のウォレスってやつが糸を引いているのか? 黒幕が誰なのか、今見極めているところだ。エルフリーデ嬢は決して冤罪で断罪された可哀想な令嬢ではないと思うよ」

 そうなのか。やっぱり私は甘いな。すっかりエルフリーデ嬢に騙されてしまった。エルフリーデ嬢は猫じゃなくてたぬきだったか。

 なんだか情けなくなって来た。

 ジェフリー様は私をぎゅっと抱きしめる。

「ベルはそのままでいいんだよ。優しくて情け深くて、人に寄り添えるベルでいい。エルフリーデ嬢だって自分のしていることが後ろめたいと思う時があるかもしれない。そんな時はベルが癒してやればいいよ。でも、まぁ、これはただの推測だ。本当に無実の罪で断罪された可哀想な令嬢かもしれないしね」

「そうね。疑うのはよくないけど、なんだかジェフリー様の推測が正しい気がするわ。人の心の中がわかる魔法があればいいのにね。間抜けな私には本当にそれが必要だわ」

 人の本当の心がわかる魔法。あるともう騙されて傷つくことはないが、本当の心を知るのは怖い気がする。

 ジェフリー様は私の頭を撫でてくれている。

「神様に祈ってみたらどうだ? 本当の心がわかる魔法がほしいと。きっと神様はくれると思うよ」

「でも、怖いわ」

「大丈夫。私やヒューイ、セレス、君の近くにいるものはみんな君を欺くような事はない。自分の身を守るためにはあったほうが良いと思う」

 ジェフリー様の言う通り、本当の心がわかると、それなりの付き合い方がわかる。私は単純ですぐに信じてしまうから必要かもしれない。

「スイッチの切り替えをすれば良い。見たいと思う時だけ見られるように。四六時中、全ての人の本当の心を知る必要なんてないからね」

 確かにそうだ。そう思えば気持ちが軽くなる。やっぱりジェフリー様は凄いわ。

 私は神様にお願いをすることにした。バルコニーから夜空を見上げ、神様に話しかけた。

「神様、どうか私に本当の心がわかる魔法をください。見たいと思った時だけその人の本心を知ることができる魔法を下さい。お願いします」

 お願いしたあと、ベッドに入り、ジェフリー様に抱きしめられながらぐっすりと眠った。
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