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番外編 ウィルヘルムの結婚
到着
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結界も張ったし、魔法もかけた。もともと地形のせいで存在自体がわかりにくいので魔法でよりわからなくなったようだ。
ジェフリー様が心配そうな顔をしている。
「ベル、そんなに魔法を使って身体は辛くないか?」
優しいなぁ。心配してもらえると嬉しくなる。
「大丈夫ですわ。私は筒のようなもので、神様の力を私の身体を通して出している感じなので、ダメージはないのです」
「そうなのか? それならいいが、あいつの言うことを全て聞く必要はないよ。嫌なことは断ればいい」
「はい。最近はあんまり無茶振りはしてこないですよ。今回は私も楽しそうだから首を突っ込んでみたくなったのです」
そう、サイオトリス王国の素敵な令嬢に会ってみたかったのだ。
ヒューイ様の声が聞こえてきた。
「そろそろ、陛下達が到着するぞ! 皆持ち場につけ!」
どんな感じで瞬間移動してくるのだろう? 団体の移動は見たことがないので楽しみだ。
「ホールに到着すると連絡があった。皆、ホールに集まれ!」
ヒューイ様の声に皆がホールへと移動する。
離宮のホールにもくもくとした白い霧に包まれた。
どどっ。どん。
大きな音が響き、建物が縦に揺れた。私は隣にいたジェフリー様にしがみついた。
「ベル、大丈夫か?」
「はい。瞬間移動も大勢だとこんなに凄いことになるのですね」
霧が晴れると、そこに50名くらいの人間が姿を現した。1番前にいたウィル様が手をあげた。
「よぉ、待たせたな」
「陛下、お戻りをお待ちしておりました」
ジェフリー様が声をかけるとウィル様はジェフリー様の肩を叩きながら、私の顔を見た。
「いつもながら良い仕事だな、ベル。エルフリーデ嬢はかなり疲れている。癒してやってくれ」
「かしこまりました。陛下はこんなに沢山の方々を一度に移動させて、お疲れではありませんか?」
ウィル様はニヤリと笑った。
「俺はなんともないさ。神のやろうはヘロヘロかもしれんがな」
あ~、ウィル様の魔法も私と同じか。神の魔法を身体に通しているだけ。それなら全く疲れはしない。
ウィル様はジェフリー様やヒューイ様をエルフリーデ嬢や公爵家の方々に紹介している。
「困ったことがあればこいつらに言えばいい。それと、聖女! ここに」
また呼ばれた。鬱陶しいが行くしかないか。
「これは我が国の聖女、ティーユだ。疲れを癒してもらうといい。これは宰相の女だから、冷凍人間になりたくなければ、間違っても不埒な気持ちは持たないように」
宰相の女って、まるでジェフリー様の愛人みたいじゃない。ジェフリー様のイメージダウンを狙っているのかしら?
エルフリーデ嬢は目を見開いている。
「愛人なの?」
「愛人ではないよ」
ウィル様はふふんと笑うが、ジェフリー様はこめかみをピキピキさせながらウィル様を睨みつけている。
「妻のベルティーユです」
「初めてお目にかかります。ノバック公爵が妻のベルティーユと申します」
カーテシーをすると令嬢は目をぱちくりさせた。
「公爵夫人に愛人などと申し訳ございません。エルフリーデ・ロンメルです。以前はサイオトリス王国のロンメル公爵家の長女でございましたが、今は訳あって国外追放になっております。今までは地下に潜んでおりましたので、久しぶりの地上で生き返ったような気分です」
痩せてはいるが元気そうだ。良かった。
ジェフリー様は皆に見せつけるかのように私を抱き寄せる。独占欲が強いのがたまにきずだ。
「この離宮全体に回復と癒しの魔法をかけております。中にいると体調も良くなると思います。外からはこの離宮は認識されません。結界も張っているのでしばらくは敵のことは気にせず、しっかり食べて、身体を休めて下さい」
ジェフリー様の言葉に一同、ホッとしたような顔になった。
「エルフリーデ嬢もゆっくりして下さいませ。湯浴みの準備もしております」
そういうと、エルフリーデ嬢は嬉しそうな顔で微笑んだ。
「うれし~い。湯浴みなんてもう長いことしてないわ。いつも浄化魔法をかけるだけでしたもの。聖女様、ありがとうございます。湯浴みしたいです」
猫みたいな目を見開いてキャッキャ喜ぶ令嬢はとても可愛い。ウィル様も満更でもないような顔をしている。
妃候補かな? 自ら迎えに行ったんだもの気に入ったのかしらね。
ジェフリー様が心配そうな顔をしている。
「ベル、そんなに魔法を使って身体は辛くないか?」
優しいなぁ。心配してもらえると嬉しくなる。
「大丈夫ですわ。私は筒のようなもので、神様の力を私の身体を通して出している感じなので、ダメージはないのです」
「そうなのか? それならいいが、あいつの言うことを全て聞く必要はないよ。嫌なことは断ればいい」
「はい。最近はあんまり無茶振りはしてこないですよ。今回は私も楽しそうだから首を突っ込んでみたくなったのです」
そう、サイオトリス王国の素敵な令嬢に会ってみたかったのだ。
ヒューイ様の声が聞こえてきた。
「そろそろ、陛下達が到着するぞ! 皆持ち場につけ!」
どんな感じで瞬間移動してくるのだろう? 団体の移動は見たことがないので楽しみだ。
「ホールに到着すると連絡があった。皆、ホールに集まれ!」
ヒューイ様の声に皆がホールへと移動する。
離宮のホールにもくもくとした白い霧に包まれた。
どどっ。どん。
大きな音が響き、建物が縦に揺れた。私は隣にいたジェフリー様にしがみついた。
「ベル、大丈夫か?」
「はい。瞬間移動も大勢だとこんなに凄いことになるのですね」
霧が晴れると、そこに50名くらいの人間が姿を現した。1番前にいたウィル様が手をあげた。
「よぉ、待たせたな」
「陛下、お戻りをお待ちしておりました」
ジェフリー様が声をかけるとウィル様はジェフリー様の肩を叩きながら、私の顔を見た。
「いつもながら良い仕事だな、ベル。エルフリーデ嬢はかなり疲れている。癒してやってくれ」
「かしこまりました。陛下はこんなに沢山の方々を一度に移動させて、お疲れではありませんか?」
ウィル様はニヤリと笑った。
「俺はなんともないさ。神のやろうはヘロヘロかもしれんがな」
あ~、ウィル様の魔法も私と同じか。神の魔法を身体に通しているだけ。それなら全く疲れはしない。
ウィル様はジェフリー様やヒューイ様をエルフリーデ嬢や公爵家の方々に紹介している。
「困ったことがあればこいつらに言えばいい。それと、聖女! ここに」
また呼ばれた。鬱陶しいが行くしかないか。
「これは我が国の聖女、ティーユだ。疲れを癒してもらうといい。これは宰相の女だから、冷凍人間になりたくなければ、間違っても不埒な気持ちは持たないように」
宰相の女って、まるでジェフリー様の愛人みたいじゃない。ジェフリー様のイメージダウンを狙っているのかしら?
エルフリーデ嬢は目を見開いている。
「愛人なの?」
「愛人ではないよ」
ウィル様はふふんと笑うが、ジェフリー様はこめかみをピキピキさせながらウィル様を睨みつけている。
「妻のベルティーユです」
「初めてお目にかかります。ノバック公爵が妻のベルティーユと申します」
カーテシーをすると令嬢は目をぱちくりさせた。
「公爵夫人に愛人などと申し訳ございません。エルフリーデ・ロンメルです。以前はサイオトリス王国のロンメル公爵家の長女でございましたが、今は訳あって国外追放になっております。今までは地下に潜んでおりましたので、久しぶりの地上で生き返ったような気分です」
痩せてはいるが元気そうだ。良かった。
ジェフリー様は皆に見せつけるかのように私を抱き寄せる。独占欲が強いのがたまにきずだ。
「この離宮全体に回復と癒しの魔法をかけております。中にいると体調も良くなると思います。外からはこの離宮は認識されません。結界も張っているのでしばらくは敵のことは気にせず、しっかり食べて、身体を休めて下さい」
ジェフリー様の言葉に一同、ホッとしたような顔になった。
「エルフリーデ嬢もゆっくりして下さいませ。湯浴みの準備もしております」
そういうと、エルフリーデ嬢は嬉しそうな顔で微笑んだ。
「うれし~い。湯浴みなんてもう長いことしてないわ。いつも浄化魔法をかけるだけでしたもの。聖女様、ありがとうございます。湯浴みしたいです」
猫みたいな目を見開いてキャッキャ喜ぶ令嬢はとても可愛い。ウィル様も満更でもないような顔をしている。
妃候補かな? 自ら迎えに行ったんだもの気に入ったのかしらね。
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