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着々と(ミッシェル[ヘンリー]視点)
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ブランシュ(母上)がクロヴィスと出会うのはアカデミーの高等科になってからなのだが、私と姉は出会いを早める計画を立てた。
私はクロヴィスと同じ年。
クロヴィスとブランシュが巻き戻す前の人生より早く出会い、あの男より先に婚約をしてもらうために、友達になるために私はクロヴィスに近づくことにした。
13歳になり、私はアカデミーに入学した。この国の貴族の子供達は13歳になると王立のアカデミーに入学する。
クロヴィスは確かスタンリッド伯爵家の嫡男。同じ伯爵家なので近づきやすい。
母上が好きだった男。母上を生涯愛し、母上に殉じた男。どんな奴なのか興味があった。今のこの世界で私の父になる男だ。
妹のブランシュを紹介するくらい仲良くならなくてはいけない。
その機会は入学早々訪れた。私とクロヴィスは同じクラスになり、席も隣になった。
「隣の席が同じ伯爵家でよかった。私はヘンリー・シューナアスよろしく」
「クロヴィス・スタンリッドだ。シューナアス伯爵家なら領地も近いし、親達も親しかったとた思う。よろしくな」
私はすぐにクロヴィスと仲良くなった。親同士もアカデミーの頃からの友達らしく、スタンリッド伯爵の嫡男と友達になったと父に話をすると喜んでいた。
クロヴィスはめちゃくちゃいい奴だった。クロヴィスの息子になったら絶対幸せだろう。何がなんでもブランシュとくっつけなければならない。
そう思っていたら姉が悪い笑顔を浮かべながら私の前にきた。
「ヘンリー、私、うまくランディス公爵の令嬢とお友達になったわ。ランディス公爵家は、あの時ルブラウン侯爵家とやっていた共同事業に興味があるみたいだし、ルブラウン侯爵より先にうちと共同事業をしてもらえたら、侯爵家があとから何か言ってきても爵位が高いからねじ伏せられるわね」
予定通りだ。姉はデビュタント後、お茶会や夜会に出て人脈を広げている。
姉は巻き戻る前は侯爵夫人だった。元々社交的で明るい人だ。あの頃の知識や経験をいかし、あの男を破滅させようと動いてくれている。
祖父母には悪いがルブラウン侯爵家には良い思いはさせない。なんせ母とあの男を無理やり結婚させたのは祖父だ。
私は祖父と母に小さい頃から領地経営を教えてもらったが、それはあの男が全く領地経営や侯爵家の仕事をしなかったからだ。あてにできない嫡男より、嫁や孫に期待したのだろう。
そもそも領地は土があまり良くなく作物が育ちにくい。
母が提案し、土壌改良をしたり、酪農や加工品をやりだし領民も少しづつ裕福になってきた。
それもこれもシューナアス伯爵家の財力があればこそだ。
今はまだルブラウン侯爵家は財政難のはず、そのうち、我が家と共同事業をし、金を引き出したいと思うだろう。
その前にランディス公爵家と固い繋がりを作り、ルブラウン家に入る隙を与えないようにしなければ。
姉は話を続ける。
「私、ランディス公爵家の令息を狙っているの。上手くいくかどうかわからないけど婚約まで持ち込めば、我が家門の後ろ盾になってもらえるわ」
「姉上、無理はだめですよ。姉上には愛し合った夫がいるではないですか」
「あれはクラウディアよ。私は今はセレスティアだから私なりに動くわ。あなたは結婚する気はないんでしょう?」
姉らしいと思った。姉は本当に母上を慕っていた。母上を幸せにするためならなんでもする気だ。ランディス公爵の子息がどんな奴か調べてみなくてはいけないな。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてますよ。私は結婚はしませんよ。母上がクロヴィスと結婚したら私は消えるんです。家督を継ぐのは弟のマックスですからね」
「それは私も同じよ。結婚してもすぐに死んじゃうしね。相手を余程好きになったら考えるわ。今のお父様やお母様は政略結婚なんてしなくていいと言ってるしね。まぁ、うちは裕福だから、恩恵にあずかりたい爵位だけ高い家門から打診がこないように、ランディス公爵家を盾にしたいの。令嬢は良い子だけど子息が嫌な奴なら関わり合いにならないようにするわね」
令嬢らしからぬ態度で姉はペロっと舌をだした。
私はクロヴィスと同じ年。
クロヴィスとブランシュが巻き戻す前の人生より早く出会い、あの男より先に婚約をしてもらうために、友達になるために私はクロヴィスに近づくことにした。
13歳になり、私はアカデミーに入学した。この国の貴族の子供達は13歳になると王立のアカデミーに入学する。
クロヴィスは確かスタンリッド伯爵家の嫡男。同じ伯爵家なので近づきやすい。
母上が好きだった男。母上を生涯愛し、母上に殉じた男。どんな奴なのか興味があった。今のこの世界で私の父になる男だ。
妹のブランシュを紹介するくらい仲良くならなくてはいけない。
その機会は入学早々訪れた。私とクロヴィスは同じクラスになり、席も隣になった。
「隣の席が同じ伯爵家でよかった。私はヘンリー・シューナアスよろしく」
「クロヴィス・スタンリッドだ。シューナアス伯爵家なら領地も近いし、親達も親しかったとた思う。よろしくな」
私はすぐにクロヴィスと仲良くなった。親同士もアカデミーの頃からの友達らしく、スタンリッド伯爵の嫡男と友達になったと父に話をすると喜んでいた。
クロヴィスはめちゃくちゃいい奴だった。クロヴィスの息子になったら絶対幸せだろう。何がなんでもブランシュとくっつけなければならない。
そう思っていたら姉が悪い笑顔を浮かべながら私の前にきた。
「ヘンリー、私、うまくランディス公爵の令嬢とお友達になったわ。ランディス公爵家は、あの時ルブラウン侯爵家とやっていた共同事業に興味があるみたいだし、ルブラウン侯爵より先にうちと共同事業をしてもらえたら、侯爵家があとから何か言ってきても爵位が高いからねじ伏せられるわね」
予定通りだ。姉はデビュタント後、お茶会や夜会に出て人脈を広げている。
姉は巻き戻る前は侯爵夫人だった。元々社交的で明るい人だ。あの頃の知識や経験をいかし、あの男を破滅させようと動いてくれている。
祖父母には悪いがルブラウン侯爵家には良い思いはさせない。なんせ母とあの男を無理やり結婚させたのは祖父だ。
私は祖父と母に小さい頃から領地経営を教えてもらったが、それはあの男が全く領地経営や侯爵家の仕事をしなかったからだ。あてにできない嫡男より、嫁や孫に期待したのだろう。
そもそも領地は土があまり良くなく作物が育ちにくい。
母が提案し、土壌改良をしたり、酪農や加工品をやりだし領民も少しづつ裕福になってきた。
それもこれもシューナアス伯爵家の財力があればこそだ。
今はまだルブラウン侯爵家は財政難のはず、そのうち、我が家と共同事業をし、金を引き出したいと思うだろう。
その前にランディス公爵家と固い繋がりを作り、ルブラウン家に入る隙を与えないようにしなければ。
姉は話を続ける。
「私、ランディス公爵家の令息を狙っているの。上手くいくかどうかわからないけど婚約まで持ち込めば、我が家門の後ろ盾になってもらえるわ」
「姉上、無理はだめですよ。姉上には愛し合った夫がいるではないですか」
「あれはクラウディアよ。私は今はセレスティアだから私なりに動くわ。あなたは結婚する気はないんでしょう?」
姉らしいと思った。姉は本当に母上を慕っていた。母上を幸せにするためならなんでもする気だ。ランディス公爵の子息がどんな奴か調べてみなくてはいけないな。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてますよ。私は結婚はしませんよ。母上がクロヴィスと結婚したら私は消えるんです。家督を継ぐのは弟のマックスですからね」
「それは私も同じよ。結婚してもすぐに死んじゃうしね。相手を余程好きになったら考えるわ。今のお父様やお母様は政略結婚なんてしなくていいと言ってるしね。まぁ、うちは裕福だから、恩恵にあずかりたい爵位だけ高い家門から打診がこないように、ランディス公爵家を盾にしたいの。令嬢は良い子だけど子息が嫌な奴なら関わり合いにならないようにするわね」
令嬢らしからぬ態度で姉はペロっと舌をだした。
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