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1.休戦条約
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遡ること、ふたつき前。
2年に渡った戦争は、勝敗を決めることなくひとまず休戦となった。前線に出ていたガリアナ王国第一王女エレインは、残処理は放置して王城に戻れと父王から命じられた。
エレイン・ミレイ・ガリアナ。21歳。琥珀色の瞳に、燃えるような赤毛を後ろで一つに束ねている。筋肉質ですらりとした手足に、豊満な胸。それらを甲冑で覆い隠している。若き第一王女でありながら、第一騎士団の団長を務めた歴戦の女騎士だ。
「このまま終戦に持ち込むんでしょうか」
エレインの部下である、第一騎士副団長は眉根を寄せて尋ねる。それへ、エレインは顔色ひとつ変えずに答えた。
「そうだろうな。だが、きっと我が国には不利な条約が結ばれるだろう。休戦とは言っているが、どちらかといえばこちらが不利な状態だった。それを休戦してくれたなら、逆に礼を言わなければいけない立場だ」
そもそも、最初に攻め込んだのは相手国、マリエン王国の方だ。それまでの平和条約に難癖をつけて、体裁を取り繕って戦を始めた。正直なところ、ガリアナ王国はマリエン王国に比べて豊かではない小国だ。だからこそ周辺の国とは条約を結んでいたし、マリエン王国とは国境と国境の間に中立地域も設置していた。なのに、その中立地域を、あれこれと理由をつけて攻め込んだ。
ガリアナ王国としては、マリエン王国に制裁を下せるほどの国力がない。それをわかっていて、一方的に戦が始まった。最初の半年が経過した頃、中立地域もほとんどマリエン王国のものになり、これはもうガリアナ王国の国境に食い込むのでは……と思われた。
その国境を守るために、エレインが派遣された。
エレインの働きは目覚ましかった。彼女はあっという間にガリアナ王国の戦乙女として名を馳せ、士気をあげることにも十分に貢献をした。彼女は騎士としての腕前も素晴らしかったが、戦術にも長けており、その活躍に人々は舌を巻いた。
そして、何よりも。彼女は生まれた時に「ガーディアン」の天啓を受けていた。天啓を受ける者は、1000人に1人いるかいないかと言われている。また、その天啓は様々な種類のものがあり、なかなか同じ能力を持つ者には出会えないと言われている。
ガーディアンの力。その力は、一定時間、自分に向かう外的要因をすべて跳ねのけることが出来るものだ。要するに、誰も、彼女を傷つけることが出来なくなる。また、彼女がそのガーディアンの能力を他人に使えば、短時間ではあるが、その者も敵の攻撃を受け付けなくなる――例えば剣や矢を弾いたり――ことが出来る。その能力を駆使して、彼女は前線に立った。
甲冑を上から下まで着込んだ彼女は、疲れを見せずに常に戦場にいた。一年半、駆け続けた。少しばかり旗色が悪くなって前線を守れずに後退もしたが、それでも彼らは希望を失わなかった。そこに彼女がいたからだ。だが、ガリアナ王国とマリエン王国の隣接箇所は広く、彼女一人ではそれを守り切ることは難しかった。とはいえ、それらはすべて、もう終わったことだ。
「そうですね……遅かれ早かれ、クルネムの国境の砦は破られたでしょうしね……団長、王城までお気をつけてください」
「ああ。君も。残務を頼む」
そう言って、エレインは国境近くから王城へと向かった。
何故自分を呼び戻したのか。それを考えれば心は曇る。彼女は王位には無関心だったし、とはいえ、弟に王位を譲るには早すぎる。となれば、戦争の責任をとって国王が退位をするわけではない、とわかる。
なんにせよ、前提として「休戦」なのだから、父である国王が処刑をされることなどは免れるのだろう。敗戦ではないのだ。それに縋るしかない。当然だが、戦をすることも休戦をすることも、今のガリアナ王族にとってはほぼ初めてのことでエレインはこの先どうなるのか予想もつかない。ああ、過去の歴史をもっと細やかに学んでおけばよかった、と悔やんでも遅い。
(少なくとも、帰還をすればもう甲冑を着ることもないだろう。そもそも王族としての立場を剥奪される可能性もあるか……きっと、剣ももう一生握れないのだろうな)
彼女は、5歳の頃に兄である第一王子を殺害され、それをきっかけに国を継ぐために男装をして生きていた。10歳になるまで弟が生まれず、下には一人の妹と、母親が違う2人の弟がいる。弟は未だ上は11歳、下は6歳だ。
弟が出来てからは女性としての生活に戻ったが、既に10才にして当時の彼女の剣の腕は有名で、結果的に3年後、王女でありながら騎士団に所属をするという大変な異例が起きた。それには理由がある。そうすることで彼女は「自分は国を継がない」意思を表明することが出来たし、弟がそれなりに育つまでには嫁に出ることも回避出来ると思ったからだ。
しかし、話はそれに留まらなかった。戦が始まる前には彼女は王女でありながら剣の腕前が立ち、かつ、戦術についても才があることが明らかになった。父である国王は、彼女が騎士団にいることをあまりよく思っていなかったが、人には人の生きる場所というものがある、と言う彼女の言葉により、仕方なく許可をした。それが、まさか戦で前線に出て、武勲をあげ続けることになるとは……。
「さすがに、戦が終わるとなれば、第一王女であるエレイン様をさっさと前線から戻したいんでしょうね」
共に馬を走らせる部下は、彼女にとってそれなりに気安い、年齢が近い男性2人だ。
「本当にそう思うか?」
「えっ、他に……」
「わたしは、どうにも胸騒ぎがしてならない」
部下2人は「まさか」と言いながら、その先を追及しなかった。彼らは、エレインのそういった直感を信じていたからだ。そして、エレインもまた、それ以上のことは何も口に出さなかった。
「結婚、ですか?」
「そうだ……条約を結ぶ前段階で、双方の国から王族の女性を双方の王族に嫁がせることを条件とされてな……」
王城に戻ったエレインは、すぐさま父王の部屋に足を運んだ。人払いがされて、エレインと国王の二人だけでソファに座って向かい合う。
「あちらからは?」
「マリエン王国からは、王妹殿下が嫁いでくる。13歳なので、マルティンより2歳年上だが、婚約者として受け入れようと思っている」
「13歳ですか。お可哀相に。父上、よくしてあげていただきたい」
「うむ……それで、だ」
「それと引き換えに、わたしを嫁がせろと? とはいえ、マリエン国王は戦争の途中に代替わりをして、未だにお世継ぎは……」
そこまで口にして、エレインは「まさか」と息を呑んだ。
「マリエン王国からは……その……クリスティアン国王に嫁がせたいと……」
「は?」
「その……お前を……側室にしたいと……」
苦渋の表情で国王はうめく。さすがにそれは考えていなかった、とエレインは目を見開いた。
「マリエン王国の使者が言うには……あちらの国王がお前を気に入っているようでな……そういう約束で終戦が結ばれることに……」
名指しか。エレインは、ふう、と息を吐いた。
マリエン王国の国王は、この戦争の間に病死をした。それで戦争が終わるのではと思ったが、まったく問題なく、息子の第一王子クリスティアンがすぐさま即位をした。その第一王子は確か28歳ぐらいだったと記憶している。戦時中で細かい情報はわからないが、確か即位をする前には既に結婚をしていた気がした。
「噂で、勝手に気に入ったというわけですか。ガリアナ王国の戦乙女だとか姫騎士だとかなんだとか……ガーディアンの天啓もあちらはもう知っているのでしょうし……」
「そう思う」
どちらにせよ、断ることは出来ない。それはエレインもわかっていた。
「この国から、わたしのガーディアンの力を奪って……それでも、この国に手を出さないでくれると?」
「お前をこの国から奪うことで、我々の心を折ろうとしているのかもしれん……」
「父上」
側室とは名ばかりで、どこか他の隣国に攻めるための手駒にでもしたいのだろうか。エレインは美しい顔をしかめて考える。
(だが、これでもしも、わたしではなく妹が嫁ぐとなるとそれは可哀相だ)
最初に侵略を始めたのはマリエン王国側だ。明らかな侵略戦争を始めたのはあちら。そして、終えるのもあちら。国力がそもそもマリエン王国とガリアナ王国では違う。だが、戦争は戦争。多くの兵士をどちらも失っている。国を守るために前線に出ていたエレインも、多くのマリエン王国の兵士を殺していた。
そんな相手先に嫁ぐなんて、考えるだけで眩暈がする。だが、自分が多くの命を切り捨てたことは事実だ。手を染めていない妹が敵国で悲しい思いをすると思えば、自分が行く方がまだよいのではないかと思えた。自分はマリエン王国側から責められても仕方がない立場だと彼女はよくわかっている。しかし、妹女はただ、王城で息を潜めて戦のなりゆきを見守っていただけの、ただそれだけの少女に過ぎないのだ。
「わかりました。お受けしましょう。それで、終戦の条約を結んでくれるなら。どちらにしてもこの休戦を終戦にしなければ、いずれ我々は敗戦国になってしまうでしょうし」
「エレイン」
国王は頭を下げた。
「お前には幼いころからずっと苦労ばかりをかけていた。本当にすまない……!」
いいのです。父上。そう口に出そうと思ったが、喉に張り付いたように声にはならなかった。いいわけがない。本当は嫌だと言いたい。だが、言ったところでどうなるものではないと彼女はわかっていた。
(前線で、一年半。頑張った結果がこれか……)
国力の差がある国と戦って、よく2年持ったものだと思う。だからといって、簡単に受け入れられる話ではない。だが、受け入れざるを得ないことを彼女はよくわかっていた。
(何もかも失って、事実上勝利国の側室になるのか……国を捨て、すべて何もかも。肩書きや、これまで築いた人間関係なども捨てて……きっと、名ばかりで、幽閉されて暮らすに違いないな。そして、必要に応じて戦で使われるのだろう……)
あまりのことに涙すら出ない。エレインは苦笑いを浮かべた。
2年に渡った戦争は、勝敗を決めることなくひとまず休戦となった。前線に出ていたガリアナ王国第一王女エレインは、残処理は放置して王城に戻れと父王から命じられた。
エレイン・ミレイ・ガリアナ。21歳。琥珀色の瞳に、燃えるような赤毛を後ろで一つに束ねている。筋肉質ですらりとした手足に、豊満な胸。それらを甲冑で覆い隠している。若き第一王女でありながら、第一騎士団の団長を務めた歴戦の女騎士だ。
「このまま終戦に持ち込むんでしょうか」
エレインの部下である、第一騎士副団長は眉根を寄せて尋ねる。それへ、エレインは顔色ひとつ変えずに答えた。
「そうだろうな。だが、きっと我が国には不利な条約が結ばれるだろう。休戦とは言っているが、どちらかといえばこちらが不利な状態だった。それを休戦してくれたなら、逆に礼を言わなければいけない立場だ」
そもそも、最初に攻め込んだのは相手国、マリエン王国の方だ。それまでの平和条約に難癖をつけて、体裁を取り繕って戦を始めた。正直なところ、ガリアナ王国はマリエン王国に比べて豊かではない小国だ。だからこそ周辺の国とは条約を結んでいたし、マリエン王国とは国境と国境の間に中立地域も設置していた。なのに、その中立地域を、あれこれと理由をつけて攻め込んだ。
ガリアナ王国としては、マリエン王国に制裁を下せるほどの国力がない。それをわかっていて、一方的に戦が始まった。最初の半年が経過した頃、中立地域もほとんどマリエン王国のものになり、これはもうガリアナ王国の国境に食い込むのでは……と思われた。
その国境を守るために、エレインが派遣された。
エレインの働きは目覚ましかった。彼女はあっという間にガリアナ王国の戦乙女として名を馳せ、士気をあげることにも十分に貢献をした。彼女は騎士としての腕前も素晴らしかったが、戦術にも長けており、その活躍に人々は舌を巻いた。
そして、何よりも。彼女は生まれた時に「ガーディアン」の天啓を受けていた。天啓を受ける者は、1000人に1人いるかいないかと言われている。また、その天啓は様々な種類のものがあり、なかなか同じ能力を持つ者には出会えないと言われている。
ガーディアンの力。その力は、一定時間、自分に向かう外的要因をすべて跳ねのけることが出来るものだ。要するに、誰も、彼女を傷つけることが出来なくなる。また、彼女がそのガーディアンの能力を他人に使えば、短時間ではあるが、その者も敵の攻撃を受け付けなくなる――例えば剣や矢を弾いたり――ことが出来る。その能力を駆使して、彼女は前線に立った。
甲冑を上から下まで着込んだ彼女は、疲れを見せずに常に戦場にいた。一年半、駆け続けた。少しばかり旗色が悪くなって前線を守れずに後退もしたが、それでも彼らは希望を失わなかった。そこに彼女がいたからだ。だが、ガリアナ王国とマリエン王国の隣接箇所は広く、彼女一人ではそれを守り切ることは難しかった。とはいえ、それらはすべて、もう終わったことだ。
「そうですね……遅かれ早かれ、クルネムの国境の砦は破られたでしょうしね……団長、王城までお気をつけてください」
「ああ。君も。残務を頼む」
そう言って、エレインは国境近くから王城へと向かった。
何故自分を呼び戻したのか。それを考えれば心は曇る。彼女は王位には無関心だったし、とはいえ、弟に王位を譲るには早すぎる。となれば、戦争の責任をとって国王が退位をするわけではない、とわかる。
なんにせよ、前提として「休戦」なのだから、父である国王が処刑をされることなどは免れるのだろう。敗戦ではないのだ。それに縋るしかない。当然だが、戦をすることも休戦をすることも、今のガリアナ王族にとってはほぼ初めてのことでエレインはこの先どうなるのか予想もつかない。ああ、過去の歴史をもっと細やかに学んでおけばよかった、と悔やんでも遅い。
(少なくとも、帰還をすればもう甲冑を着ることもないだろう。そもそも王族としての立場を剥奪される可能性もあるか……きっと、剣ももう一生握れないのだろうな)
彼女は、5歳の頃に兄である第一王子を殺害され、それをきっかけに国を継ぐために男装をして生きていた。10歳になるまで弟が生まれず、下には一人の妹と、母親が違う2人の弟がいる。弟は未だ上は11歳、下は6歳だ。
弟が出来てからは女性としての生活に戻ったが、既に10才にして当時の彼女の剣の腕は有名で、結果的に3年後、王女でありながら騎士団に所属をするという大変な異例が起きた。それには理由がある。そうすることで彼女は「自分は国を継がない」意思を表明することが出来たし、弟がそれなりに育つまでには嫁に出ることも回避出来ると思ったからだ。
しかし、話はそれに留まらなかった。戦が始まる前には彼女は王女でありながら剣の腕前が立ち、かつ、戦術についても才があることが明らかになった。父である国王は、彼女が騎士団にいることをあまりよく思っていなかったが、人には人の生きる場所というものがある、と言う彼女の言葉により、仕方なく許可をした。それが、まさか戦で前線に出て、武勲をあげ続けることになるとは……。
「さすがに、戦が終わるとなれば、第一王女であるエレイン様をさっさと前線から戻したいんでしょうね」
共に馬を走らせる部下は、彼女にとってそれなりに気安い、年齢が近い男性2人だ。
「本当にそう思うか?」
「えっ、他に……」
「わたしは、どうにも胸騒ぎがしてならない」
部下2人は「まさか」と言いながら、その先を追及しなかった。彼らは、エレインのそういった直感を信じていたからだ。そして、エレインもまた、それ以上のことは何も口に出さなかった。
「結婚、ですか?」
「そうだ……条約を結ぶ前段階で、双方の国から王族の女性を双方の王族に嫁がせることを条件とされてな……」
王城に戻ったエレインは、すぐさま父王の部屋に足を運んだ。人払いがされて、エレインと国王の二人だけでソファに座って向かい合う。
「あちらからは?」
「マリエン王国からは、王妹殿下が嫁いでくる。13歳なので、マルティンより2歳年上だが、婚約者として受け入れようと思っている」
「13歳ですか。お可哀相に。父上、よくしてあげていただきたい」
「うむ……それで、だ」
「それと引き換えに、わたしを嫁がせろと? とはいえ、マリエン国王は戦争の途中に代替わりをして、未だにお世継ぎは……」
そこまで口にして、エレインは「まさか」と息を呑んだ。
「マリエン王国からは……その……クリスティアン国王に嫁がせたいと……」
「は?」
「その……お前を……側室にしたいと……」
苦渋の表情で国王はうめく。さすがにそれは考えていなかった、とエレインは目を見開いた。
「マリエン王国の使者が言うには……あちらの国王がお前を気に入っているようでな……そういう約束で終戦が結ばれることに……」
名指しか。エレインは、ふう、と息を吐いた。
マリエン王国の国王は、この戦争の間に病死をした。それで戦争が終わるのではと思ったが、まったく問題なく、息子の第一王子クリスティアンがすぐさま即位をした。その第一王子は確か28歳ぐらいだったと記憶している。戦時中で細かい情報はわからないが、確か即位をする前には既に結婚をしていた気がした。
「噂で、勝手に気に入ったというわけですか。ガリアナ王国の戦乙女だとか姫騎士だとかなんだとか……ガーディアンの天啓もあちらはもう知っているのでしょうし……」
「そう思う」
どちらにせよ、断ることは出来ない。それはエレインもわかっていた。
「この国から、わたしのガーディアンの力を奪って……それでも、この国に手を出さないでくれると?」
「お前をこの国から奪うことで、我々の心を折ろうとしているのかもしれん……」
「父上」
側室とは名ばかりで、どこか他の隣国に攻めるための手駒にでもしたいのだろうか。エレインは美しい顔をしかめて考える。
(だが、これでもしも、わたしではなく妹が嫁ぐとなるとそれは可哀相だ)
最初に侵略を始めたのはマリエン王国側だ。明らかな侵略戦争を始めたのはあちら。そして、終えるのもあちら。国力がそもそもマリエン王国とガリアナ王国では違う。だが、戦争は戦争。多くの兵士をどちらも失っている。国を守るために前線に出ていたエレインも、多くのマリエン王国の兵士を殺していた。
そんな相手先に嫁ぐなんて、考えるだけで眩暈がする。だが、自分が多くの命を切り捨てたことは事実だ。手を染めていない妹が敵国で悲しい思いをすると思えば、自分が行く方がまだよいのではないかと思えた。自分はマリエン王国側から責められても仕方がない立場だと彼女はよくわかっている。しかし、妹女はただ、王城で息を潜めて戦のなりゆきを見守っていただけの、ただそれだけの少女に過ぎないのだ。
「わかりました。お受けしましょう。それで、終戦の条約を結んでくれるなら。どちらにしてもこの休戦を終戦にしなければ、いずれ我々は敗戦国になってしまうでしょうし」
「エレイン」
国王は頭を下げた。
「お前には幼いころからずっと苦労ばかりをかけていた。本当にすまない……!」
いいのです。父上。そう口に出そうと思ったが、喉に張り付いたように声にはならなかった。いいわけがない。本当は嫌だと言いたい。だが、言ったところでどうなるものではないと彼女はわかっていた。
(前線で、一年半。頑張った結果がこれか……)
国力の差がある国と戦って、よく2年持ったものだと思う。だからといって、簡単に受け入れられる話ではない。だが、受け入れざるを得ないことを彼女はよくわかっていた。
(何もかも失って、事実上勝利国の側室になるのか……国を捨て、すべて何もかも。肩書きや、これまで築いた人間関係なども捨てて……きっと、名ばかりで、幽閉されて暮らすに違いないな。そして、必要に応じて戦で使われるのだろう……)
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