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5-2:封印された記号と、開かれる扉
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その日、午後の陽射しが斜めに差し込む書庫で、私は古い文書の修復作業に集中していた。
紙は乾燥しきっており、触れるだけで崩れてしまいそうなほどもろい。羊皮紙に手作業で書かれた文字は、時の流れにかき消されかけている。
だが、ページの隙間に挟まれていた薄い付箋のような紙片が、私の指先を止めた。
「……これは?」
古びた書簡の裏に、線と点と記号が並ぶ、不規則な模様。
見覚えのない符号だった。文字ではないが、どこか意味を持っているような――そんな「囁き」が、私の耳の奥でかすかに響いた。
静謐の空間にひとつ深呼吸を置いて、私はそれをそっと開き、保存用の書見台に乗せる。
ちょうどそこへ、扉をノックする音が響いた。
「クラリス嬢。少し、よろしいですか?」
リュカの声だった。
「はい。ちょうど……これを見ていただきたいところでした」
私は手元の紙片を示した。リュカは興味深げに眉を上げ、書見台に身を寄せた。
「……これは、交易記録とは関係なさそうですね」
「はい。でも、どこかで見たような……。いえ、“読んだことがある”気がするんです」
自分でも不思議な言葉だった。けれど確かに、私はこの記号の「空気」を知っている。
古書の声は文字ではなく、構造や意図――そして、そこに込められた“感情の粒”のようなものとして届くのだ。
「……もしかして、クラリス嬢の“能力”ですか?」
リュカは問うた。私は、わずかに肩をすくめる。
「能力と呼べるほどではありません。ただ、古い書物に触れていると……時折、何かが“伝わってくる”んです」
「“書物の囁き”、ですね」
彼の声は、まるで優しく綴る筆のようだった。
「では、一緒に解読してみましょう。これは……図案的には、王家の古文書に使われる“紋章鍵文字”に似ています」
「紋章鍵文字?」
「ええ。意味を持たせた図形です。歴代王家が、外交や密書の伝達に使った、いわば“秘文”」
「……そんなものが、なぜこんなところに?」
図書館の一角で眠っていた羊皮紙。そこに、王族の秘められた記号。
偶然にしては、あまりにも……。
「調べてみましょうか、クラリス嬢」
その言葉に、私は頷いた。
この人となら――きっと、何かを見つけられる気がする。
それは、書物の奥底に眠る秘密かもしれないし。
あるいは――
私自身の中に、ずっと埋もれていた“何か”かもしれなかった。
紙は乾燥しきっており、触れるだけで崩れてしまいそうなほどもろい。羊皮紙に手作業で書かれた文字は、時の流れにかき消されかけている。
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「……これは?」
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見覚えのない符号だった。文字ではないが、どこか意味を持っているような――そんな「囁き」が、私の耳の奥でかすかに響いた。
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自分でも不思議な言葉だった。けれど確かに、私はこの記号の「空気」を知っている。
古書の声は文字ではなく、構造や意図――そして、そこに込められた“感情の粒”のようなものとして届くのだ。
「……もしかして、クラリス嬢の“能力”ですか?」
リュカは問うた。私は、わずかに肩をすくめる。
「能力と呼べるほどではありません。ただ、古い書物に触れていると……時折、何かが“伝わってくる”んです」
「“書物の囁き”、ですね」
彼の声は、まるで優しく綴る筆のようだった。
「では、一緒に解読してみましょう。これは……図案的には、王家の古文書に使われる“紋章鍵文字”に似ています」
「紋章鍵文字?」
「ええ。意味を持たせた図形です。歴代王家が、外交や密書の伝達に使った、いわば“秘文”」
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偶然にしては、あまりにも……。
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その言葉に、私は頷いた。
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それは、書物の奥底に眠る秘密かもしれないし。
あるいは――
私自身の中に、ずっと埋もれていた“何か”かもしれなかった。
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