婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり

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7-3:断罪の時、凛と立つ

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 数日後、カイル・ラント侯爵令息は再び姿を現した。

 午後の陽が傾きかけた頃、図書館の扉が開かれる音に、私は静かに顔を上げる。

「クラリス、やあ――」

 出迎える笑顔は、前回よりも取り繕いがましく、そして妙な焦りが見え隠れしていた。

 私はカウンターから歩み出て、彼を正面から見つめた。

「カイル様。ご用件は、何でしょうか?」

 その声は、驚くほど穏やかで落ち着いていた。

「まだ怒ってるのはわかる。だが、少し話を――」

「いいえ。今日は、はっきり申し上げるためにここに立っています」

 彼の言葉を遮り、私は静かに口を開いた。

「あなたとの婚約は、もう過去のことです。そして、あの時に受けた言葉は、今でも私の胸に傷として残っています」

 カイルの表情が固まる。

「でもその傷は、アシュベリーという場所と、ここで出会った人々によって癒されました。だからこそ、今の私は、もうあなたに左右されたりはしません」

 一歩、前に出る。

「あなたに感謝しているのは――あなたが私を手放してくれたことで、私は本当に大切なものに出会えたからです」

 図書館の空気が静まり返る。

 カイルはわずかに口を開けたまま、何も言えずにいた。

「ですから……どうか、これで終わりにしてください。これ以上、私の人生に踏み込まないでください」

 その言葉が放たれた瞬間、館内にいたリリアとエルネスト館長、そしてリュカが静かに顔を上げた。

 誰も声は出さなかったけれど、彼らの目は、すべて私の背中を支えてくれていた。

 カイルの顔が赤くなり、やがて悔しさに染まる。

「……君のことなど、もう知らん!」

 吐き捨てるようにそう言って、彼は踵を返し、足早に去っていった。

 その背中は、もう私を傷つけるものではなかった。

 扉が閉まったあと、誰も言葉を発さない静寂が、しばらく続いた。

 私はふぅ、と深く息を吐く。

「クラリスさん」

 リュカの声が、後ろから優しく届いた。

「……見事でした。あの言葉を、君の口から聞けて、本当に……嬉しいです」

 私は彼に振り向き、微笑んだ。

「ありがとうございます。これで、本当に前に進めます」

 今の私は、もう誰の影にも怯えない。

 しっかりと地に足をつけて、自分の意志で歩いていける。

 そう、ようやく――私は、自由になれたのだ。
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