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第158話 鎖の王
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玉座の間は広く、静まり返っていた。
黒い大理石の床に、月光が斜めに差し込み、王の影を長く伸ばしている。
その玉座に座る男──西の王は、背の高い椅子にもたれ、ゆったりと脚を組んでいた。
黄金の瞳がこちらを見下ろす。
「……ようやく来たか、神子ルカ」
声は低く、深い響きを持っていて、壁や床を震わせるようだった。
「アスを……あの契約を、どうして」
ボクの問いに、王は口角をわずかに上げた。
「理由は単純だ。お前を縛る鎖が欲しかった。それも、お前が愛する者で作った鎖をな」
胸が凍るように冷たくなる。
あのときのアスの苦しそうな目が、鮮明に蘇った。
「……卑怯だ」
「卑怯? 国家を治めるのに、正義など要らぬ。必要なのは支配だ」
王はゆっくりと立ち上がり、長い外套を引きずるように階段を降りてくる。
その足元では、床から無数の鎖が這い出し、音を立てて揺れていた。
「この鎖で、お前も国もすべて縛ってやる」
鎖が一斉にうねり、蛇のようにこちらへ伸びてくる。
ユリウスが即座に障壁を張り、カインが前に出る。
レオンは王の足元を狙い、ノアは詠唱を始めた。
けれど、王の鎖はアスのものよりもはるかに強大だった。
一撃で障壁が軋み、床がひび割れる。
「ルカ、下がって──」
「嫌だ。……これは、ボクが終わらせる」
王の瞳が細くなり、口元が歪む。
「ならば来い、神子よ。お前の意志が、この鎖を断てるか試してやろう」
鎖が渦を巻き、玉座の間全体が戦場に変わる。
その中央で、王とボクの視線がぶつかった。
黒い大理石の床に、月光が斜めに差し込み、王の影を長く伸ばしている。
その玉座に座る男──西の王は、背の高い椅子にもたれ、ゆったりと脚を組んでいた。
黄金の瞳がこちらを見下ろす。
「……ようやく来たか、神子ルカ」
声は低く、深い響きを持っていて、壁や床を震わせるようだった。
「アスを……あの契約を、どうして」
ボクの問いに、王は口角をわずかに上げた。
「理由は単純だ。お前を縛る鎖が欲しかった。それも、お前が愛する者で作った鎖をな」
胸が凍るように冷たくなる。
あのときのアスの苦しそうな目が、鮮明に蘇った。
「……卑怯だ」
「卑怯? 国家を治めるのに、正義など要らぬ。必要なのは支配だ」
王はゆっくりと立ち上がり、長い外套を引きずるように階段を降りてくる。
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「この鎖で、お前も国もすべて縛ってやる」
鎖が一斉にうねり、蛇のようにこちらへ伸びてくる。
ユリウスが即座に障壁を張り、カインが前に出る。
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けれど、王の鎖はアスのものよりもはるかに強大だった。
一撃で障壁が軋み、床がひび割れる。
「ルカ、下がって──」
「嫌だ。……これは、ボクが終わらせる」
王の瞳が細くなり、口元が歪む。
「ならば来い、神子よ。お前の意志が、この鎖を断てるか試してやろう」
鎖が渦を巻き、玉座の間全体が戦場に変わる。
その中央で、王とボクの視線がぶつかった。
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