この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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16. 『ちょっとだけ、うしろが ざわざわしてる…?』

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「おはようございます、ルカ様!」

 

──今日も、園の門をくぐったとたん、大きな声と共にユリウスが僕のバッグを受け取る。

「お、おはよう…ありがとう、ユリウスくん」

「本日の気温はやや高めです。園内の席、調整済みですのでご安心を」

「え?」

 

教室に入ると──そこはもう、“ぼくのための席”になっていた。

 

・ふわふわの座布団(ミミル色)
・机の上には朝摘みの果実ティッシュ(たぶん誰かが用意してくれた)
・足元には足が冷えないように魔導ヒーターが仕込まれている

 

「えええ……こんなにいらないのに……」

 

きょろきょろと周りを見ていると、斜めうしろの席からひとりの子が、すっと近寄ってきた。

 

「ルカくん、今日もかわいい」

「アデルくん……」

「気温、ちょうどいい? 風が強いようなら、調整しなおすけど」

 

やさしくて、静かで、でもどこか……氷みたいに、まっすぐな目。

 

(……なんか、ちょっと こわいような……?)

 

 



 

一方そのころ、教室の隅っこでは、3人の男の子が作戦会議中。

 

「アデル、強敵すぎる」
「一気に距離詰めすぎ」
「魔法の使い方が、完全に“彼氏”」

 

レオンが言えば、カインが頷き、ユリウスがそれを受けて鋭くまとめた。

 

「よし。我々もチームを組もう」
「ルカ様“護衛”同盟」
「──という名の恋愛共闘協定」

 

こうして、「ぼくのため」なのに、どこか違う意味で一致団結する3人組が生まれた。

 

 



 

午前の遊び時間。

僕がミミルと一緒にすべり台の近くにいたら、さりげなく誰かが影を作ってくれていた。

「ルカ、まぶしいの嫌いでしょ?」

「カインくん、ありがとう……」

 

お昼ごはんの時間。

僕の好きなにんじんグラッセが、どうしてか多めに盛られていた。

「おや、ルカ様だけ特別盛りですね」
「ちがっ…これは、たまたまで…!」

「ふふ、ルカくん、よかったら僕の分もどうぞ」

「えっ、ノアくんも…!」

 

そして──アデルが、スッとお皿を滑らせた。

「ルカくん、ぼくのも。好きなだけ食べて」

「アデルくんまで……」

 

(あの……ぼく、そんなに…いっぱい たべれない……よ?)

 

 



 

午後の静かな時間。

僕はミミルを抱いて、教室の隅でぼーっとしていた。

ふと見ると、皆が僕を見てる。目が合う。そらされる。照れる。

 

(なんか……うしろが ざわざわしてる……)

 

「ルカくん、眠い?」

アデルがそっと、ふわふわの魔法枕を差し出す。

「ありがとう、アデルくん……」

「おやすみなさい。いい夢を」

 

その瞬間、背後でユリウスがつぶやいた。

「……これは本格的に対策が必要だな」

 

「同意する」
「同上」

 

3人の“想い”が、静かに重なった。

そしてその夜、カレンダーに現れた言葉は──

 

『しずかで やさしいものが、
 いちばん こわいときがあるんだって。
 でも、それも ぜんぶ だいすき、って言えるぼくでいたい』

 

僕はミミルに頬をすり寄せながら、そっと目を閉じた。

明日もきっと、あったかい1日になりますように──。

 

 

──その頃。園の外。
月明かりの下を、銀の髪をした男の子が歩いていた。

彼の手には、一輪の黒い花。

その瞳は、遠くにいる“光”を見つめていた。

 

「──君を手に入れる。それが僕の生まれた理由だ」
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