この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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35. 『……あのね、ミミル。なんだか“世界”がこっち見てる気がする』

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ぽかぽかの朝。

今日は園に行く前に、お庭で朝日を浴びながら、ミミルと一緒にお茶を飲む。
──ぼくにとって、それはとても大切な時間。

 

「……ミミル、聞いて。なんだか、最近すごく“見られてる”気がするんだ」

ミミルはうんうんと頷いた気がした。

 

べつに、誰かに嫌な目で見られてるわけじゃない。
でも、どこからか、ふわっと──

誰かの想いが、風に乗って届いてくるような。

 

「……変だね、こんなの。園で遊んでるだけなのに」

ぼくは自分でも苦笑する。

 

だけど、それは間違いじゃなかった。

 



 

園に着くと、いつも通り園児たちがわらわらと寄ってくる。

「ルカ!おはよ!髪の毛、寝ぐせついてる~」
「ルカ、昨日ぼく夢でルカと一緒に空飛んだよ!」
「ルカ、今日もミミルかわいい!」

 

そのなかで──園の門の影から、じっとこちらを見ている**“見知らぬ男”**がいた。

 

細身の体に、長く揺れる銀髪。
目の奥が、なぜか……とても哀しそうだった。

 

「ルカ様……」

かすれた声。
その声に、ミミルがぴくっと反応した。

 

先生たちが気づいて駆け寄ろうとした瞬間、その男はふっと姿をかき消した。

 



 

「……ルカ様。あの男、見覚えは?」
「いえ……でも、なんだろう。ミミルが反応してた……」

 

その日の夜。

ぼくの部屋の窓に、一枚の“葉っぱ”が貼りついていた。

よく見ると、それはただの葉じゃない。
──精霊たちが使う、封書。

 

【“異種の王”が、まもなくルカ様に会いに来ます】

 

 

「……え?」

その瞬間、ミミルがぼうっと光を放ち、
天井に“星のような文字”が現れた。

 

──ルカ様、来る日が来ました。
精霊、獣人、魔族、龍種──
すべての種族が、あなたの存在に“気づきはじめた”のです。

 

 

「……あのね、ミミル。なんだか“世界”がこっち見てる気がする」

ぼくは小さく呟いた。

 

でも、こわくない。

だって、みんながいる。
パパも、ママも、園のみんなも──
そして、ミミルがいる。

 

それだけで、十分だから。

 



 

翌朝の魔法カレンダーの言葉はこうだった。

 

『ねぇ、世界。そんなに見つめられても……
 まだぼく、ミルク飲んでるのに。』

 

 

──世界が、ルカを中心に“動きはじめた”。

その最初の兆しだった。
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