この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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100. 「金の若芽と、世界の希望」

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朝、村中に鐘が鳴り響いた。

それは、戦争でも死でもなく――
“祝福”の合図だった。

未来種子プロジェクト。
ルカが始めた、小さな祈りの実験。

それが、とうとう実を結んだのだ。

「……見て、ルカ様! あそこ!」

誰かが叫び、全員が畑の中心へ駆けていく。

そこには――

一本の金色の若芽が、地面を割って立っていた。

ただの植物じゃない。
その芽は、風にそよぐたびに小さな光をまとい、まるで「感情」に応えるように反応していた。

隣にいたアスが、涙ぐみながら呟く。

「……この芽、笑ってる……」

ルカは何も言わず、その若芽にそっと手を伸ばした。

やわらかな感触。
あたたかい命のぬくもり。

「ボク、ずっと願ってたの」

「泣いてる人のとなりに、そっと咲く草があったらいいなって」

「この金の芽は、“誰にも見つけられなかった涙”を感じ取って、そっとそばに咲いてくれる……そんな魔法だよ」

ルカの声は、震えていた。

けれど、それは悲しみの震えではない。

歓びと、確信と――世界がやっと、自分の“やりたかったこと”に応えてくれたという証だった。

***

「──“金の芽”は、神子の涙から生まれた」

その噂は、たった一日で各地に広がった。

病に苦しむ者。
心に傷を抱えた者。
生きる意味を見失った者。

そのすべてが、ルカの“魔法”によって、癒されたと報告されていた。

「これは……もはや奇跡などではない。神子そのものだ……!」

そう言ってひれ伏したのは、隣国からの視察団だった。

ルカは困ったように笑った。

「ねぇ。ボク、“神子”じゃなくていいのに。
ただ、“みんなのそばにいるルカ”でいたいだけなのに──」

けれど、もう止められなかった。

世界が、ルカに“意味”を見出してしまったのだ。

希望。
癒し。
光。
未来。

そのすべてを――この小さな存在に託してしまった。

***

夜。

ルカは、未来種子畑の真ん中に座っていた。

「……ねぇ、ミミル。金の芽、きれいだったね」

ぬいぐるみの耳をそっと撫でる。

「でも、ちょっとだけこわいな」

「“希望”って、思われるの。
だって、ボクが間違えたら、誰かが絶望しちゃうでしょ?」

「……でもね、それでもいいの」

「ボク、もう、逃げないって決めたから」

「だって、誰かに“生まれてきてよかった”って思ってもらえるなら、ボク、何度でもこの世界に来たいよ」

ふと、風が吹く。

金の芽が、揺れる。

まるで“それでいいよ”と、答えるように。

それは、はじまりの合図だった。

神子ルカ。
それは、“誰にもなれない存在”ではなく、“みんなの中に生きる光”として、確かに世界に芽吹いたのだった。
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