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社会人 編
問題の解決方法はいつだって一つだけじゃない(なお)
しおりを挟む狼谷は、鼻を啜りながらも、とつとつと言葉をつづける。オレは、あまりにも事態が飲み込めなさ過ぎて、反応ができない。
「オレが、どうにかして世間で目立ったら、もしかしたらセンパイから連絡くるかもしれないって、思って……。あの時は騙してごめん、って、何も言わず居なくなって、ごめん、って言って…ほしくて……」
まさかとは思うが……うっ、うっという音が聞こえる。まるで、涙を無理やり我慢しているような、嗚咽の音が。
「で、でもっ、何年も何年も何年も、何の連絡も無くて、連絡先変えてないのに、絶対目には入ってるはずなのにっ。もう諦めなきゃと思うけど、諦めきれなくて、そしたら、今日、あんたが……知らない男と、並んで歩いてたっ。センパイの匂い、絶対間違える筈ない、から」
ぐすっぐすっとオレのすぐ耳元で音が聞こえる。どことなしか、オレを責めているいるようで、甘えているような声音で。
「話聞こうと思って近寄ったら、オレのポスターなんかじっと見つめて……全部許して、またって思ったのに、あんたは逃げるし!!人だかりが酷くて見失って、もう、どうしていいかわからなくて、あんたの匂いを辿ってたら、ここまで、来てたんだ……。もう、何も言わず、オレの側から居なくならないでよ……寧センパイ……」
?????????
な、なんて??
なんでこの大男は、おれを抱きしめながら、泣いて、こんな告白まがいの事を、言っているんだ?
さっきから、全然理解が追いつかない。
でも、こいつ、そんな事、考えていたのか…。オレが居なくなったあと…。オレだけが悲しくて、オレだけが寂しかったわけじゃ、無いのか。
「な、なあ、狼谷……」
ぐすっぐすっと涙と鼻をすする音。
肩のあたりがめっちゃ湿っている。
返事はない
「怒って、ないのか?」
無言。
「オレが、ウサギなのを黙って、お前の側にいたこと」
無言。
「お前に、発情期の解消の手伝いさせたこと」
無言
「……お前の前から、いなくなったこと」
オレを抱きしめ離さない腕に、強くグッと力が入った。
「ぐえっ」
「あ、ごめっ」
あまりの圧力に耐えきれなくなって、つい口から音が漏れると、慌てたように力が緩んだ。
そして、久しぶりに目があった。
狼谷は、やはり泣いていた。
目元を真っ赤にして、唇を嚙み締めている後輩を見て、つい、その目元に手を伸ばした。まだ腕がまわっているから、少しだけ。
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