24 / 24
社会人 編
お付き合いしている相手の実家に遊びに行くってハードル高すぎワロエナイ
しおりを挟む
お付き合いして、数か月後
「寧さん、母さんが寧さんに会ってみたいって。良かったら、家に遊びに来ない?」
「……は?」
お付き合いをしてしばらく経った頃。
隣に座っていた狼谷が急に切り出した、話題。
オレの部屋のソファーでダラダラと今期のアニメを見ていたのに、一気に冷や汗が背中に流れた。
「え、な、なん、で」
「さあ? オレが寧さんの話するからかなあ?」
これって、もしかして、親への挨拶とかそういう、きっちりしたものなのか?
オレは、狼谷と一緒に見ていたアニメを一旦止めた。だって、アニメの内容入ってこない。
「えっと、それは、あれかな。お付き合いする草食獣人が、珍しいとか、そういう……」
「さあ? なんでかはわからないけど……続き見ねーの?」
「内容入ってこないよ! っていうか、お前の両親って、こう、どんな、感じ? 両親は、その、う、草食獣人とか、偏見とか、ない、感じ?」
オレの言葉に、狼谷はハッとした顔をした後、獣耳まで出してションボリ頭を下げながら項垂れた。
「……両親も兄貴も、偏見とかは、無いよ。オレだけ……ごめん」
狼谷も、自分の過去の言動を気にして、反省しているようだ。いいよって、もう、許してるよって言ってるのに。
「反省できて偉いから、頭上げな。それで……いつ?」
オレがそう言うと、まだ耳をションボリさせたまま、頭を上げた。
「それが……今週末ぐらいにどうかって」
「はやっ」
今日は、週の半ば。狼谷は最近モデルの仕事をセーブして、オレの締め切り明けの休みに付き合ってくれたりするんだが、良いのかなって思ったりする一方、嬉しくもある。
だから、実質お呼ばれまで数日しかないのだ。
「急、だな?」
「母さん、思ったったら吉日タイプのひとだから、思いついただけだと思う。今週末都合悪いなら、断っておくけど」
いや、無理だろ。まず肉食獣人(推定アルファ)のご家族の好意を、草食獣人のオレが断るのが本能的に無理、厳しい。だけど、じゃあ、肉食獣人の中に喜んで行けるかというと、それも、厳しい。近くにいた肉食獣人なんて、ベータかせいぜいヤマネコぐらいだったんだ。
しかも、今週は締め切り明けで少し余裕があるが、来週や再来週になるとまた締め切りが近くなり、スケジュール調整ができなくなる可能性がある。
今が、一番タイミングが良い、と言っても過言ではない。
オレは、さんざん逡巡したが、ついに、
「……い、行くよ、お前の実家」
そう、口にするに至ったのだった。狼谷は、自分の実家だからなんの気兼ねも無いと思うが、オレがだいぶ困っているのはわかっていたらしい。
オレがそう決断すると、ギュッと抱きしめてきた。
「ありがと、寧さん。寧さんは負担に感じちゃうかもしれないんだけど、オレ、単純に嬉しいんだ。寧さんを、家族に紹介できて。大丈夫だよ。昔言っただろ、うちの家族は、きっと寧さんを気に入ってくれるよ」
顔をベロベロになめまわされながら、尻尾をそんなにブンブン振られると、悪い気はしてこないから、これも惚れた弱みってやつなんだろう。
「じゃあ、早速母さんに連絡しておくよ」
「ああ。なあ、ちなみにさ、お前の家って、ドレスコードとかあるタイプ?」
アルファの家に行くのだ。それなりに正装をしないといけないような気持になって、思わず聞いてしまった。立ち上がり、スマホを取り出した狼谷は、オレを見て笑った。
「そんなのあるわけ無いよ、ふつーの家だよ。ふつーの恰好で大丈夫。寧さんは何着てもかわ、似合うから」
……微妙に信じられない。狼谷は、大学の頃、良く見るとオレでも聞いた事のあるブランドの服を普段着として着まわしていたり、成人しても高そうな服を平気で着ているのだ。
とにかく、行くと言ったのだ。オメガに二言は無しだ。
当日は一番高い服を着ていこう。
そう、心に決めた。
当日。
オレは、内心で狼谷を罵倒していた。
なにが!
普通の!!
家だ!!!!!
十分ご立派なデザイナーが設計したような大きな一軒家が目の前に聳え立っていた。庭やけにでかそうだけど、プールでもあるのか?!ってぐらい広い。でかい。こんなの、テレビドラマでしか見た事ないぞ。
これ、マジで普通にひと住んでいいやつなんだ……。
そんな、どうでも良い事を考えながら放心していたら、狼谷がタクシー降りてすぐ玄関のチャイムを鳴らした。
あ、心の準備が!
「はぁーい」
聞こえてきたのは、思ったより柔らかな女性の声だった。狼谷の母親だろうか。
「ただいま、母さん」
「あら! りお君、早かったのね。ちょっと待っててね」
あわわしている間に、ガチャっと真っ黒でつやつやな玄関ドアが開いて、出てきたのは、
「あら!あなたが、りお君とお付き合いしてくれてる、寧君ね! りお君に聞いた通り、愛らしいわあ! どうぞどうぞ、散らかってますけど、上がっていって」
凄く朗らかな、ただ、何と言うか……ド派手な服を着た女性が出てきた。蛍光のピンクと緑とオレンジが渦を巻いた感じのシャツを着こなす、中年の女性。綺麗なお顔だし、色素の薄い髪を綺麗に巻いて、華奢そうなのに、そのシャツのインパクト一つで、オレは混乱に陥ってしまった。
「あ、宇佐木 寧です。よろしく、お願いします……しつれいします」
「遠慮しないで、寧さん。母さん、何でその服着てきてんの。寧さんビックリしてんじゃん」
高そうな玄関から入りながら、狼谷が母に文句を言う。良かった、これが普段着ではないんだ。
「何言ってるの、お母さんが持ってる中で一番良い服なのにっ。お父さんも褒めてくれたのよ」
……好みかあ。この服のセンスが、好みなんだなこのお母さん、うまくやれるかな、オレ。
「ささ、どうぞ、寧くん。お父さんも、お兄ちゃんも帰ってきてくれたの。ちょっと怖いかもしれないけれど、良かったらくつろいでね」
お母さんは凄く気を使って優しくしてくれる。服のセンスが、何だっていうんだ。いや、やっぱり無理だけど、オレは、微笑んだ。
「はい、ありがとうございます」
「うわ、寧さんの敬語久しぶりに聞いた」
狼谷の足を蹴る。見えないように。
だけど、ちょっと緊張がほぐれてきたのは事実で、狼谷にちょっとだけ苦笑した。
「まあ、本当にお付き合いしてるのね!良かったわ、りお君全然、お付き合いしてる人連れてきてくれないんだもの。さあさ、こちらへどうぞ」
そう言って、ダイニングテーブルの狼谷の横の椅子に案内された。
ダイニングテーブルには既に二人の男性が座っていた。一人は壮年の、ナイスミドルの銀髪の男性、おそらく父親と、狼谷より少し年上の、もうちょっとヤンチャそうな男性が居た。
狼谷を見ていたからわかっていたが、美形家族だった。狼谷はモデルを生業にしたが、おそらくこの家族もやろうと思えば顔で生計をたてられるのだろう。
眩しい。肉食とかどうでもよくなるぐらい、目の前がキラキラして、瞬きしてしまう。
オレが椅子に座ったのを見て、狼谷がオレに話かける。
「寧さん、オレの家族だよ」
その言葉を合図に、ナイスミドルがにこやかに口を開いた。
「寧くん、はじめまして。凛旺の父です」
「兄でーす」
「母です」
それぞれ声をかけてくれる。
「みんな、寧さん。オレのお付き合いしてるひと」
「は、はじめまして、宇佐木 寧です。えっと、か、凛旺くんと、お付き合いさせて頂いてます」
緊張したが、何とか昨日まで考えていたセリフを口にする事ができた。
「かわいい!」
かわいい部分あった?!
狼谷の母のテンション高い言葉に、えっと思って狼谷を見ると、うんうんと頷いていた。あ、まあ、こいつはこんな感じだった。と、思って見回すと、父親も狼谷とそっくりな顔で頷いていたし、兄は、にっこにこだった。
え?え?なんなんだ、この雰囲気。
結局、晩御飯までごちそうになったのだが、終始こんな雰囲気で、オレは戸惑ってしまった。……やはりウサギはオオカミからしたら愛玩動物のような感じになってしまうのだろうか?
一応、狼谷とのお付き合いは公認となったから良かったのだろうが。
「今日はありがとうございました」
帰りがけ。玄関まで狼谷の母が見送りに来てくれた。多分、三人で見送ったらオレが威圧感でビビるだろう、という配慮だと思われる。実際、正直、まだ怖いからな。
「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう。……ごめんなさいね、うるさかったでしょう」
狼谷の母が申し訳なさそうに、オレに謝るので、首を横に振った。
「いえ。僕は草食獣人なので、みなさんに歓迎してもらえただけで、嬉しかったです」
正直な気持ちを言葉にすると、狼谷の母は一瞬悲しげに眉を下げたあと、ニコッと笑った。
「あのね、りお君、本当に自分の事何も話さないのよ。でもね、あなたの事は凄く嬉しそうにお話してくれるの。だから、今日、みんな会えるのを楽しみにしていたのよ。……確かに、草食の方と私たち肉食は、ちょっと違うところもあるけれど、これからも、仲良くしてくれると嬉しいわ」
ここで、オレは大きな勘違いに気づいた。
狼谷家のオレへの反応は、愛玩というわけではなく、純粋に、末っ子への愛をそのままオレにも注いでくれようとしていただけなんだ、って。
良いひと達の事を勘違いしていたのに恥ずかしくなって、オレは頭を下げるように俯いた。
「お、僕の方こそ、すみません、なかなか慣れないんですけど、仲良くしてもらえると、嬉しいです」
「ぜひ、また遊びにきてね!みんな待ってるわ」
狼谷の母のその言葉に、顔を上げて、もう一回ぺこりと頭を下げた。
帰り道。
「ね、言った通りでしょ。寧さんなら、家族みんな気に入ってくれるって」
狼谷が、凄くご機嫌そうに話しかけてくる。
夜風が吹くが、つないだ手が暖かい。
「まあ、お前が連れてくるひとなら、誰でも歓迎してくれそうだったけどな。良い家族だな」
思った通りの事を言うと、狼谷がぎゅっと手を強く握ってきた。
「違う。寧さんだからだよっ」
こいつの、素直な好意がまぶしい。
オレも、ギュッと手を強く握り返した。
「ありがと。……お前も、いつか家くる?」
ぼそっとそう言うと、狼谷は大げさなぐらいに喜んだ。獣耳と尻尾を出してブンブン振る。
「い、いいの?!行く、ぜったい行く!」
嬉しそうな狼谷に、つい、笑みがこぼれる。
「わかった。母さんに話しておくよ」
「うん!」
狼谷の嬉しそうな顔を見ると、オレまで幸せな気持ちになってくる。
そう思えるぐらいには、こいつの事が好きだ。
……もしかしたら、一緒に居る未来を、考えても良いのかもしれないな。
肉食のアルファと、草食のオメガじゃ釣り合わないって思ってたけど。
明るい月光の下、幸せそうに笑う狼谷を見て、ふと、そう思った。
××年後marriage end
おわり
「寧さん、母さんが寧さんに会ってみたいって。良かったら、家に遊びに来ない?」
「……は?」
お付き合いをしてしばらく経った頃。
隣に座っていた狼谷が急に切り出した、話題。
オレの部屋のソファーでダラダラと今期のアニメを見ていたのに、一気に冷や汗が背中に流れた。
「え、な、なん、で」
「さあ? オレが寧さんの話するからかなあ?」
これって、もしかして、親への挨拶とかそういう、きっちりしたものなのか?
オレは、狼谷と一緒に見ていたアニメを一旦止めた。だって、アニメの内容入ってこない。
「えっと、それは、あれかな。お付き合いする草食獣人が、珍しいとか、そういう……」
「さあ? なんでかはわからないけど……続き見ねーの?」
「内容入ってこないよ! っていうか、お前の両親って、こう、どんな、感じ? 両親は、その、う、草食獣人とか、偏見とか、ない、感じ?」
オレの言葉に、狼谷はハッとした顔をした後、獣耳まで出してションボリ頭を下げながら項垂れた。
「……両親も兄貴も、偏見とかは、無いよ。オレだけ……ごめん」
狼谷も、自分の過去の言動を気にして、反省しているようだ。いいよって、もう、許してるよって言ってるのに。
「反省できて偉いから、頭上げな。それで……いつ?」
オレがそう言うと、まだ耳をションボリさせたまま、頭を上げた。
「それが……今週末ぐらいにどうかって」
「はやっ」
今日は、週の半ば。狼谷は最近モデルの仕事をセーブして、オレの締め切り明けの休みに付き合ってくれたりするんだが、良いのかなって思ったりする一方、嬉しくもある。
だから、実質お呼ばれまで数日しかないのだ。
「急、だな?」
「母さん、思ったったら吉日タイプのひとだから、思いついただけだと思う。今週末都合悪いなら、断っておくけど」
いや、無理だろ。まず肉食獣人(推定アルファ)のご家族の好意を、草食獣人のオレが断るのが本能的に無理、厳しい。だけど、じゃあ、肉食獣人の中に喜んで行けるかというと、それも、厳しい。近くにいた肉食獣人なんて、ベータかせいぜいヤマネコぐらいだったんだ。
しかも、今週は締め切り明けで少し余裕があるが、来週や再来週になるとまた締め切りが近くなり、スケジュール調整ができなくなる可能性がある。
今が、一番タイミングが良い、と言っても過言ではない。
オレは、さんざん逡巡したが、ついに、
「……い、行くよ、お前の実家」
そう、口にするに至ったのだった。狼谷は、自分の実家だからなんの気兼ねも無いと思うが、オレがだいぶ困っているのはわかっていたらしい。
オレがそう決断すると、ギュッと抱きしめてきた。
「ありがと、寧さん。寧さんは負担に感じちゃうかもしれないんだけど、オレ、単純に嬉しいんだ。寧さんを、家族に紹介できて。大丈夫だよ。昔言っただろ、うちの家族は、きっと寧さんを気に入ってくれるよ」
顔をベロベロになめまわされながら、尻尾をそんなにブンブン振られると、悪い気はしてこないから、これも惚れた弱みってやつなんだろう。
「じゃあ、早速母さんに連絡しておくよ」
「ああ。なあ、ちなみにさ、お前の家って、ドレスコードとかあるタイプ?」
アルファの家に行くのだ。それなりに正装をしないといけないような気持になって、思わず聞いてしまった。立ち上がり、スマホを取り出した狼谷は、オレを見て笑った。
「そんなのあるわけ無いよ、ふつーの家だよ。ふつーの恰好で大丈夫。寧さんは何着てもかわ、似合うから」
……微妙に信じられない。狼谷は、大学の頃、良く見るとオレでも聞いた事のあるブランドの服を普段着として着まわしていたり、成人しても高そうな服を平気で着ているのだ。
とにかく、行くと言ったのだ。オメガに二言は無しだ。
当日は一番高い服を着ていこう。
そう、心に決めた。
当日。
オレは、内心で狼谷を罵倒していた。
なにが!
普通の!!
家だ!!!!!
十分ご立派なデザイナーが設計したような大きな一軒家が目の前に聳え立っていた。庭やけにでかそうだけど、プールでもあるのか?!ってぐらい広い。でかい。こんなの、テレビドラマでしか見た事ないぞ。
これ、マジで普通にひと住んでいいやつなんだ……。
そんな、どうでも良い事を考えながら放心していたら、狼谷がタクシー降りてすぐ玄関のチャイムを鳴らした。
あ、心の準備が!
「はぁーい」
聞こえてきたのは、思ったより柔らかな女性の声だった。狼谷の母親だろうか。
「ただいま、母さん」
「あら! りお君、早かったのね。ちょっと待っててね」
あわわしている間に、ガチャっと真っ黒でつやつやな玄関ドアが開いて、出てきたのは、
「あら!あなたが、りお君とお付き合いしてくれてる、寧君ね! りお君に聞いた通り、愛らしいわあ! どうぞどうぞ、散らかってますけど、上がっていって」
凄く朗らかな、ただ、何と言うか……ド派手な服を着た女性が出てきた。蛍光のピンクと緑とオレンジが渦を巻いた感じのシャツを着こなす、中年の女性。綺麗なお顔だし、色素の薄い髪を綺麗に巻いて、華奢そうなのに、そのシャツのインパクト一つで、オレは混乱に陥ってしまった。
「あ、宇佐木 寧です。よろしく、お願いします……しつれいします」
「遠慮しないで、寧さん。母さん、何でその服着てきてんの。寧さんビックリしてんじゃん」
高そうな玄関から入りながら、狼谷が母に文句を言う。良かった、これが普段着ではないんだ。
「何言ってるの、お母さんが持ってる中で一番良い服なのにっ。お父さんも褒めてくれたのよ」
……好みかあ。この服のセンスが、好みなんだなこのお母さん、うまくやれるかな、オレ。
「ささ、どうぞ、寧くん。お父さんも、お兄ちゃんも帰ってきてくれたの。ちょっと怖いかもしれないけれど、良かったらくつろいでね」
お母さんは凄く気を使って優しくしてくれる。服のセンスが、何だっていうんだ。いや、やっぱり無理だけど、オレは、微笑んだ。
「はい、ありがとうございます」
「うわ、寧さんの敬語久しぶりに聞いた」
狼谷の足を蹴る。見えないように。
だけど、ちょっと緊張がほぐれてきたのは事実で、狼谷にちょっとだけ苦笑した。
「まあ、本当にお付き合いしてるのね!良かったわ、りお君全然、お付き合いしてる人連れてきてくれないんだもの。さあさ、こちらへどうぞ」
そう言って、ダイニングテーブルの狼谷の横の椅子に案内された。
ダイニングテーブルには既に二人の男性が座っていた。一人は壮年の、ナイスミドルの銀髪の男性、おそらく父親と、狼谷より少し年上の、もうちょっとヤンチャそうな男性が居た。
狼谷を見ていたからわかっていたが、美形家族だった。狼谷はモデルを生業にしたが、おそらくこの家族もやろうと思えば顔で生計をたてられるのだろう。
眩しい。肉食とかどうでもよくなるぐらい、目の前がキラキラして、瞬きしてしまう。
オレが椅子に座ったのを見て、狼谷がオレに話かける。
「寧さん、オレの家族だよ」
その言葉を合図に、ナイスミドルがにこやかに口を開いた。
「寧くん、はじめまして。凛旺の父です」
「兄でーす」
「母です」
それぞれ声をかけてくれる。
「みんな、寧さん。オレのお付き合いしてるひと」
「は、はじめまして、宇佐木 寧です。えっと、か、凛旺くんと、お付き合いさせて頂いてます」
緊張したが、何とか昨日まで考えていたセリフを口にする事ができた。
「かわいい!」
かわいい部分あった?!
狼谷の母のテンション高い言葉に、えっと思って狼谷を見ると、うんうんと頷いていた。あ、まあ、こいつはこんな感じだった。と、思って見回すと、父親も狼谷とそっくりな顔で頷いていたし、兄は、にっこにこだった。
え?え?なんなんだ、この雰囲気。
結局、晩御飯までごちそうになったのだが、終始こんな雰囲気で、オレは戸惑ってしまった。……やはりウサギはオオカミからしたら愛玩動物のような感じになってしまうのだろうか?
一応、狼谷とのお付き合いは公認となったから良かったのだろうが。
「今日はありがとうございました」
帰りがけ。玄関まで狼谷の母が見送りに来てくれた。多分、三人で見送ったらオレが威圧感でビビるだろう、という配慮だと思われる。実際、正直、まだ怖いからな。
「こちらこそ、今日は来てくれてありがとう。……ごめんなさいね、うるさかったでしょう」
狼谷の母が申し訳なさそうに、オレに謝るので、首を横に振った。
「いえ。僕は草食獣人なので、みなさんに歓迎してもらえただけで、嬉しかったです」
正直な気持ちを言葉にすると、狼谷の母は一瞬悲しげに眉を下げたあと、ニコッと笑った。
「あのね、りお君、本当に自分の事何も話さないのよ。でもね、あなたの事は凄く嬉しそうにお話してくれるの。だから、今日、みんな会えるのを楽しみにしていたのよ。……確かに、草食の方と私たち肉食は、ちょっと違うところもあるけれど、これからも、仲良くしてくれると嬉しいわ」
ここで、オレは大きな勘違いに気づいた。
狼谷家のオレへの反応は、愛玩というわけではなく、純粋に、末っ子への愛をそのままオレにも注いでくれようとしていただけなんだ、って。
良いひと達の事を勘違いしていたのに恥ずかしくなって、オレは頭を下げるように俯いた。
「お、僕の方こそ、すみません、なかなか慣れないんですけど、仲良くしてもらえると、嬉しいです」
「ぜひ、また遊びにきてね!みんな待ってるわ」
狼谷の母のその言葉に、顔を上げて、もう一回ぺこりと頭を下げた。
帰り道。
「ね、言った通りでしょ。寧さんなら、家族みんな気に入ってくれるって」
狼谷が、凄くご機嫌そうに話しかけてくる。
夜風が吹くが、つないだ手が暖かい。
「まあ、お前が連れてくるひとなら、誰でも歓迎してくれそうだったけどな。良い家族だな」
思った通りの事を言うと、狼谷がぎゅっと手を強く握ってきた。
「違う。寧さんだからだよっ」
こいつの、素直な好意がまぶしい。
オレも、ギュッと手を強く握り返した。
「ありがと。……お前も、いつか家くる?」
ぼそっとそう言うと、狼谷は大げさなぐらいに喜んだ。獣耳と尻尾を出してブンブン振る。
「い、いいの?!行く、ぜったい行く!」
嬉しそうな狼谷に、つい、笑みがこぼれる。
「わかった。母さんに話しておくよ」
「うん!」
狼谷の嬉しそうな顔を見ると、オレまで幸せな気持ちになってくる。
そう思えるぐらいには、こいつの事が好きだ。
……もしかしたら、一緒に居る未来を、考えても良いのかもしれないな。
肉食のアルファと、草食のオメガじゃ釣り合わないって思ってたけど。
明るい月光の下、幸せそうに笑う狼谷を見て、ふと、そう思った。
××年後marriage end
おわり
281
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる