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第27話 未来への道標と、光の大陸へ
しおりを挟むアクルシス大陸の王宮にて、水の魔女セフィナとの出会いを終えたルークたちは、
次なる“旅の終わり”に向けて、ゆっくりと会議を開いていた。
水の都の水路に浮かぶ小舟の上、魔女たちは順番に果物をつまみながら、目的地を口にする。
「さて……残る魔女は、あと二人だ」
ルークが地図を広げながらそう言うと、フィオナが静かに頷く。
「光の魔女エルセリア様と、時の魔女クロノミナ様……ですね」
「ねぇ、その“クロノミナ”って……大丈夫なの? 名前からしてなんかヤバそう」
クラリスが眉をひそめる。
「……っていうか、“ヤバい”のよ、間違いなく」
そう断言したのはミレイアだった。
彼女の表情は珍しく真剣そのもの。
「記録がほとんどないの。姿を見た者もいない。誰も会ったことがない。だけど、“ヤバい”という噂だけが残ってる。……逆に怖いでしょ?」
「ふぇぇ……未知数ってこと?」
リィナがジークの袖を掴んで不安げに尋ねる。
「時の魔女クロノミナに会いに行くのは、最後にしましょう」
グレイアも珍しく慎重な調子で言う。
ルークは静かに頷いた。
「よし。なら次は――ルミナシア大陸、光の魔女エルセリアだ」
ミレイアが少し口元を引き締めて言う。
「エルセリアは、“神聖国家”とされているけど……その“神聖”が、厄介なのよね。
絶対正義。正しさの暴走。理想の押しつけ。そういうタイプの支配があるの」
「真面目系ポンコツの香りがするわね……」
クラリスが呟き、セフィナがその話を受けて、静かに立ち上がる。
◆
「ところで。大陸間移動手段は、船と馬で揺られ続けられるつもり?」
セフィナが言うと、ジークが一気に顔をしかめた。
「やめて……また“釣ったら魔魚”とか、“ドラゴンで大回転”とかは嫌だ……」
「私が言いたいのは、“ゲート”の話よ」
「……ゲート?」
全員が揃って首を傾げる。
セフィナは小さく息を吐いた。
「大陸を繋ぐ古代の装置。魔女たちの前の世代、神話の時代に“魔力の交点”を結んで作られた移動装置のことよ。
“ゲート”の上には、王宮や聖域が築かれるって伝承があるの」
「……そんな話、初めて聞いた」
ミレイアが腕を組みながら言い、
「それ、ホントにあるの?」
クラリスが怪訝な顔を向ける。
「へー、そんな便利なものが……」
グレイアが興味津々で聞き入る一方、
「それじゃあ、ジークと遊びにいける?」
リィナがピュアなテンションで笑う。
セフィナは、彼女たちの反応を見て――大きくため息をついた。
「……本当にあなたたち、魔女なの?」
呆れを隠さずに、肩を落とすセフィナ。
「……やっぱり、妻にふさわしいのは、私だけね」
その発言に、ミレイアがぎくりとし、クラリスがわざとらしく咳払いをする。
「国王、もしくは側近に“ゲート”の場所を聞けないかしら」
◆
王宮へ戻った一行。
セフィナが要件を告げると、国王と老側近が顔を見合わせる。
「……“ゲート”、というものについては、私も書物の中でしか……」
「ただし……地下に、“古い紋章の扉”が存在している場所があります。
誰も開けたことがなく、意味も分からず、封印のようにされていた場所です」
「それかもしれない」
セフィナがすぐに返す。
「案内していただけるかしら?」
「……もちろんです」
老側近が頭を下げ、蝋燭を手に取った。
そして一行は、王宮の奥へ、奥へ――
重くひんやりとした石の階段を降りた先に、それはあった。
苔むした大理石の壁に、禍々しいまでに精緻な円形の紋章付きの扉。
中央には、水の紋章が刻まれ、その周囲を七つの文様が囲むように配置されている。
「……これが“ゲート”?」
ルークが静かに呟く。
「すご……なんか最終ダンジョンの入口みたい」
ジークが呆れと畏怖の混じった声で言った。
「でも……開かないわね」
クラリスが手をかけようとするも、びくともしない。
「押してもダメ、引いてもダメ……もしかして、魔力で? でも、私たちもう魔力ないし……」
ミレイアが試してみるも反応なし。
「これが昔の魔女の仕業だとしたら……やっぱり“鍵”が必要なんじゃない?」
グレイアが言いながら、床を調べ始める。
「むむむ……スースーしない……!」
リィナは扉にほっぺを当てて何かを感じ取ろうとするも、結果は謎。
そんな騒ぎを背に――
セフィナは静かに、深く、長く……ため息をついた。
「あなたたちは……本当に、魔女なのかしら?」
一言、放ったその声に場がピタリと止まる。
「鍵が必要? 魔力がない? 反応がない? そう、それなら“原初の継承”を思い出しなさい」
セフィナは、胸元から銀と青のペンダントを取り出した。
そして、扉の中央にある丸いくぼみに、迷いなくそれを“カチッ”とはめ込む。
次の瞬間――
ギィィィ……ン……
扉の紋章が淡く光を帯び、ゆっくりと、まるで眠っていた巨人が目を覚ますように開いていった。
「なっ……」
「嘘、開いた……!」
「これが……“鍵”!?」
他の魔女たちが、一斉に自分のペンダントを手に取り、驚いたように見つめる。
「ずっとお守りだと思ってた……」
「このための“鍵”だったなんて……」
「母から受け継いだだけで、意味なんてないって……」
それぞれが、魔女としての“系譜”の意味を、その瞬間に初めて悟った。
セフィナは、静かに微笑む。
「これでやっと分かったでしょう? 私が妻にふさわしい理由が」
再び始まるバチバチ空気を察し、ルークがひとつ咳払いをして奥の部屋へと視線を向けた。
◆
扉の先にあったのは、かつて神話時代の魔女たちが使っていたという転移の間だった。
床には七つの大陸の名を象徴する紋章が描かれ、中央には空に浮かぶような魔法陣が静かに光っていた。
「これが……大陸をつなぐ“魔法陣”……!」
ミレイアが感嘆の声を上げ、
「この精度……現代じゃ再現不可能よ」
セフィナが冷静に言葉を添える。
「この“光”の紋章が、ルミナシア大陸を指してるわ」
クラリスが指差した方向に、一行が集まる。
「全員、この中に入って」
セフィナが指示するように言う。
ルーク、フィオナ、ミレイア、クラリス、グレイア、リィナ、ジーク──全員が、光の魔法陣の中に並び立った。
セフィナは最後に、先ほどのペンダントを再び転移陣の床のくぼみに押し込む。
魔力が、走る。
石造りの空間全体が青白い光に包まれ、空気が揺れ、重力が一瞬失われたような感覚。
「転移、開始」
セフィナの冷静な声とともに――
ルークたちの身体が、光の中へと、次なる大陸へ引き込まれていった。
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