テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ

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第27話 未来への道標と、光の大陸へ

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 アクルシス大陸の王宮にて、水の魔女セフィナとの出会いを終えたルークたちは、

 次なる“旅の終わり”に向けて、ゆっくりと会議を開いていた。


 水の都の水路に浮かぶ小舟の上、魔女たちは順番に果物をつまみながら、目的地を口にする。


「さて……残る魔女は、あと二人だ」


 ルークが地図を広げながらそう言うと、フィオナが静かに頷く。


 「光の魔女エルセリア様と、時の魔女クロノミナ様……ですね」


 「ねぇ、その“クロノミナ”って……大丈夫なの? 名前からしてなんかヤバそう」

 クラリスが眉をひそめる。


 「……っていうか、“ヤバい”のよ、間違いなく」


 そう断言したのはミレイアだった。

 彼女の表情は珍しく真剣そのもの。


 「記録がほとんどないの。姿を見た者もいない。誰も会ったことがない。だけど、“ヤバい”という噂だけが残ってる。……逆に怖いでしょ?」


 「ふぇぇ……未知数ってこと?」

 リィナがジークの袖を掴んで不安げに尋ねる。


 「時の魔女クロノミナに会いに行くのは、最後にしましょう」

 グレイアも珍しく慎重な調子で言う。


 ルークは静かに頷いた。


 「よし。なら次は――ルミナシア大陸、光の魔女エルセリアだ」


 ミレイアが少し口元を引き締めて言う。


 「エルセリアは、“神聖国家”とされているけど……その“神聖”が、厄介なのよね。

 絶対正義。正しさの暴走。理想の押しつけ。そういうタイプの支配があるの」


 「真面目系ポンコツの香りがするわね……」

 クラリスが呟き、セフィナがその話を受けて、静かに立ち上がる。





「ところで。大陸間移動手段は、船と馬で揺られ続けられるつもり?」


 セフィナが言うと、ジークが一気に顔をしかめた。


 「やめて……また“釣ったら魔魚”とか、“ドラゴンで大回転”とかは嫌だ……」


 「私が言いたいのは、“ゲート”の話よ」


 「……ゲート?」


 全員が揃って首を傾げる。


 セフィナは小さく息を吐いた。


 「大陸を繋ぐ古代の装置。魔女たちの前の世代、神話の時代に“魔力の交点”を結んで作られた移動装置のことよ。

 “ゲート”の上には、王宮や聖域が築かれるって伝承があるの」


 「……そんな話、初めて聞いた」

 ミレイアが腕を組みながら言い、


 「それ、ホントにあるの?」

 クラリスが怪訝な顔を向ける。


 「へー、そんな便利なものが……」

 グレイアが興味津々で聞き入る一方、


 「それじゃあ、ジークと遊びにいける?」

 リィナがピュアなテンションで笑う。


 セフィナは、彼女たちの反応を見て――大きくため息をついた。


 「……本当にあなたたち、魔女なの?」


 呆れを隠さずに、肩を落とすセフィナ。


 「……やっぱり、妻にふさわしいのは、私だけね」


 その発言に、ミレイアがぎくりとし、クラリスがわざとらしく咳払いをする。


 「国王、もしくは側近に“ゲート”の場所を聞けないかしら」





 王宮へ戻った一行。

 セフィナが要件を告げると、国王と老側近が顔を見合わせる。


 「……“ゲート”、というものについては、私も書物の中でしか……」


 「ただし……地下に、“古い紋章の扉”が存在している場所があります。

 誰も開けたことがなく、意味も分からず、封印のようにされていた場所です」


 「それかもしれない」

 セフィナがすぐに返す。


 「案内していただけるかしら?」


 「……もちろんです」


 老側近が頭を下げ、蝋燭を手に取った。


 そして一行は、王宮の奥へ、奥へ――


 重くひんやりとした石の階段を降りた先に、それはあった。


 苔むした大理石の壁に、禍々しいまでに精緻な円形の紋章付きの扉。

 中央には、水の紋章が刻まれ、その周囲を七つの文様が囲むように配置されている。


「……これが“ゲート”?」

 ルークが静かに呟く。


 「すご……なんか最終ダンジョンの入口みたい」

 ジークが呆れと畏怖の混じった声で言った。


 「でも……開かないわね」

 クラリスが手をかけようとするも、びくともしない。


 「押してもダメ、引いてもダメ……もしかして、魔力で? でも、私たちもう魔力ないし……」


 ミレイアが試してみるも反応なし。


 「これが昔の魔女の仕業だとしたら……やっぱり“鍵”が必要なんじゃない?」


 グレイアが言いながら、床を調べ始める。


 「むむむ……スースーしない……!」


 リィナは扉にほっぺを当てて何かを感じ取ろうとするも、結果は謎。


 そんな騒ぎを背に――


 セフィナは静かに、深く、長く……ため息をついた。


 「あなたたちは……本当に、魔女なのかしら?」


 一言、放ったその声に場がピタリと止まる。


 「鍵が必要? 魔力がない? 反応がない? そう、それなら“原初の継承”を思い出しなさい」


 セフィナは、胸元から銀と青のペンダントを取り出した。


 そして、扉の中央にある丸いくぼみに、迷いなくそれを“カチッ”とはめ込む。


 次の瞬間――


 ギィィィ……ン……


 扉の紋章が淡く光を帯び、ゆっくりと、まるで眠っていた巨人が目を覚ますように開いていった。


「なっ……」


 「嘘、開いた……!」


 「これが……“鍵”!?」


 他の魔女たちが、一斉に自分のペンダントを手に取り、驚いたように見つめる。


 「ずっとお守りだと思ってた……」


 「このための“鍵”だったなんて……」


 「母から受け継いだだけで、意味なんてないって……」


 それぞれが、魔女としての“系譜”の意味を、その瞬間に初めて悟った。


 セフィナは、静かに微笑む。


 「これでやっと分かったでしょう? 私が妻にふさわしい理由が」


 再び始まるバチバチ空気を察し、ルークがひとつ咳払いをして奥の部屋へと視線を向けた。





 扉の先にあったのは、かつて神話時代の魔女たちが使っていたという転移の間だった。


 床には七つの大陸の名を象徴する紋章が描かれ、中央には空に浮かぶような魔法陣が静かに光っていた。


 「これが……大陸をつなぐ“魔法陣”……!」


 ミレイアが感嘆の声を上げ、


 「この精度……現代じゃ再現不可能よ」

 セフィナが冷静に言葉を添える。


 「この“光”の紋章が、ルミナシア大陸を指してるわ」

 クラリスが指差した方向に、一行が集まる。


 「全員、この中に入って」

 セフィナが指示するように言う。


 ルーク、フィオナ、ミレイア、クラリス、グレイア、リィナ、ジーク──全員が、光の魔法陣の中に並び立った。


 セフィナは最後に、先ほどのペンダントを再び転移陣の床のくぼみに押し込む。


 魔力が、走る。


 石造りの空間全体が青白い光に包まれ、空気が揺れ、重力が一瞬失われたような感覚。


 「転移、開始」

 セフィナの冷静な声とともに――


 ルークたちの身体が、光の中へと、次なる大陸へ引き込まれていった。
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